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気候変動対策の実施により貧困が増加する可能性=京大など

2023年07月25日 14時04分更新

文● MIT Technology Review Japan

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京都大学、立命館大学、国立環境研究所の共同研究チームは、パリ協定に基づく将来の気候変動緩和シナリオを分析し、それらが貧困にどのように影響するかを調査。その結果、気候緩和策をとらないベースラインケースと比べて気候変動緩和策を実施したケースでは、貧困人口を増加させる可能性があることが明らかになった。

京都大学、立命館大学、国立環境研究所の共同研究チームは、パリ協定に基づく将来の気候変動緩和シナリオを分析し、それらが貧困にどのように影響するかを調査。その結果、気候緩和策をとらないベースラインケースと比べて気候変動緩和策を実施したケースでは、貧困人口を増加させる可能性があることが明らかになった。 研究チームは今回、国立環境研究所と京大などが開発している大規模シミュレーションモデル「アジア太平洋統合評価モデル(AIM(Asia-Pacific Integrated Model)」を使用。シミュレーションの結果、産業革命後の気温上昇を2℃以内に抑えるために気候変動対策を強化する「2℃シナリオ」では、2030年と2050年に、気候変動対策をしない場合と比較して、貧困人口がそれぞれ6500万人と1800万人増加することがわかった。さらに強い対策を実施する「1.5℃シナリオ」でも同様の傾向が見られた。 同チームによると、貧困層が増加する背後には、「所得効果」と「価格効果」の二つが関与している。所得効果は、気候変動対策によるマクロ経済的な損失が所得を減少させる効果を指し、脱炭素化のために高効率の機器の導入や化石燃料以外のエネルギー源の生産のための投資が追加的に必要なことで生じる。価格効果は、炭素税導入などによる食料価格上昇が家計に影響を及ぼす効果を指し、温室効果ガス排出に直接関係するエネルギーや食料を中心に価格が上昇することで生じる。これらの影響は地域により異なるが、特にアジアとアフリカで大きな影響が見られたという。 研究論文は2023年7月7日に、国際研究雑誌サステナビリィ・サイエンス(Sustainability Science)に掲載された

(中條)

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