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ホウ素と硫黄を使った高活性アルカリ水電解触媒=筑波大など

2023年07月19日 06時45分更新

文● MIT Technology Review Japan

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筑波大学、高知工科大学、東京農工大学、物質・材料研究機構、ドイツ・アーヘン工科大学の研究グループは、ホウ素と硫黄を使用した高活性アルカリ水電解触媒を開発した。水電解にはルテニウムやイリジウムなどの希少で高価な貴金属を使用しているが、水電解によって得られる水素の利用と普及を進めるには、安価な元素を利用した新しい触媒が必要とされる。

筑波大学、高知工科大学、東京農工大学、物質・材料研究機構、ドイツ・アーヘン工科大学の研究グループは、ホウ素と硫黄を使用した高活性アルカリ水電解触媒を開発した。水電解にはルテニウムやイリジウムなどの希少で高価な貴金属を使用しているが、水電解によって得られる水素の利用と普及を進めるには、安価な元素を利用した新しい触媒が必要とされる。 研究グループはこれまでに、安価に入手できて触媒として高活性が期待できる物質の候補として、1:1の比率でホウ素と硫黄を使用する2次元層状物質である菱面体硫化ホウ素(r-BS)を合成している。今回の研究ではr-BSをグラフェンナノプレート(GNP)と複合化させたr-BS+Gを合成し、触媒としての性能を確認した。具体的にはr-BS+Gをナフィオンバインダーと混ぜ、ガラス状炭素電極に塗布して乾燥させることで電極触媒を作成し、その性能をリニアスイープボルタンメトリー(LSV)で評価した。 1mol/Lに調整した水酸化カリウム塩溶液中で触媒活性を測定したところ、r-BS+Gはr-BS単体、GNP単体、そして市販の触媒の中で最高の活性を示す二酸化ルテニウムと比較しても低い電位で電流密度が増加し始めていることが明らかになった。また、回転リングディスク電極を使用して検証した結果、電流密度の起源が酸素発生反応であることを確認した。つまり、上記の物質の中でもr-BS+Gが最も触媒活性が高い結果になった。 さらにLSVを500回繰り返しても電流密度の電位依存性に変化がないことから、r-BS+Gが繰り返し利用可能であることを確認。X線回折、ラマン散乱、X線光電子分光、走査電子顕微鏡で観察したところ、電極触媒の酸化などが起こっていないことが分かった。 研究成果は7月8日、ケミカル・エンジニアリング・ジャーナル(Chemical Engineering Journal)誌にオンライン掲載された。研究グループは今後さらに触媒活性部位と反応の仕組みを実験的に明らかにし、さらに高い活性を有した電極触媒材料の設計に反映させていくとしている。

(笹田)

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