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バルク光起電力効果を実証、ナノ発電実現へ新たな道=東大など

2023年06月09日 06時49分更新

文● MIT Technology Review Japan

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東京大学や京都大学の研究者で構成する共同研究チームは、2次元層状物質である硫化錫(SnS)において中心対称性(中心から正反対の等しい距離に同一の原子が存在すること)を持たない硫化錫を成長させ、「バルク光起電力効果」による発電を実証した。

東京大学や京都大学の研究者で構成する共同研究チームは、2次元層状物質である硫化錫(SnS)において中心対称性(中心から正反対の等しい距離に同一の原子が存在すること)を持たない硫化錫を成長させ、「バルク光起電力効果」による発電を実証した。 バルク光起電力効果は、中心対称性を持たない物質において、光を照射した際に生じる自発的な光起電力効果を指し、半導体のpn接合を利用した従来型太陽電池の理論限界を超える可能性が期待されている。だが、ほとんどの材料において理論的に予測される発電量が低いことが課題であった。 研究チームは、シリコン太陽電池に匹敵する発電量が理論的に予測されている硫化錫に着目。面内分極(2次元層状材料の平板面に平衡方向に電気双極子が整列すること)のそろった中心対称性を持たない強誘電相を物理蒸着法により成長させることで、バルク光起電力効果による発電を初めて実証した。さらに、分極ドメイン構造(分極の向きがそろった領域)の解析から、分極ドメイン境界は180°回転の双晶関係(元の結晶と鏡面対称の関係)を有していることを明らかにした。分極の方向をそろえることでさらなる発電特性の向上が期待できるという。 今回の成果は、高効率な太陽電池や光検出器への応用だけでなく、結晶の厚さがナノサイズでも発電が可能なことから、IoT(モノのインターネット)センサー用のナノ発電素子への適用も期待される。研究論文はアドバンズト・マテリアルズ(Advanced Materials)に2023年5月6日付けでオンライン掲載された

(中條)

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