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【レビュー】M2 Pro搭載MacBook Pro 14インチは真の「プロ向けノートブック」の正常進化だ

2023年06月04日 12時00分更新

文● 柴田文彦 編集●飯島恵里子/ASCII

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性能向上だけではない新MacBook Proの価値

 外観やキーボードの操作性、ディスプレーの表示品質が同じだとすると、いったいどこがどのように変わったのか。それを明らかにするために、まず新旧MacBook Pro 14インチモデルの主要なスペックの細かな違いを比較して確認していこう。明らかな違いがある部分は、新モデルの方の仕様を赤字で示している。

 まず旧モデルのM1 Proと新モデルのM2 Proチップの違いを確認する。標準構成ではM1 ProはCPUが8コア、GPUが14コアだったのに対し、M2 Proの標準構成は、CPUが10コア、GPUは16コアとなっている。この数字だけを見ると、CPUは25%、約14%しか増えていない。しかもCPUのコア数の内訳を見ると、M1 Proの8コアは、高性能コアが6、高効率コアが2なのに対し、M2 Proの10コアは、高性能コアの数は6で変わらず、高効率コアが4となっている。また、Neural Engineのコア数も16で同じ、メモリ帯域幅も200GB/sと変わっていない。いずれも装備しているメディアエンジンについては、中身の仕様に変化があるかどうかは公表されていない。性能向上につながるような変化があれば仕様に反映されるはずなので、実質的に変わらないものが搭載されていると考えられる。

 こうした数字や装備の有無だけを見ると、性能的には大差がないのではないかと思えてしまうかもしれない。確かにM2 Proの設計には、大幅な高性能化よりも、消費電力を抑えつつ同時に高性能化も実現するという狙いがあったものと考えられる。

 実際にこのあたりのバランスがどのようになっているかは、別記事のベンチマークテストで示すことにしよう。

 なお、M2 Proチップは、オプションで12コアCPU(高性能8+高効率4)と19コアGPUにカスタマイズできる。これらのオプションはセットで+4万2000円となっていて、個別には選べない。

 次に内蔵ディスプレーについては、スペック上も細かい数値までまったく変化が認められない。これは実際にまったく同等のものを装備していると考えられる。ただし、外部ビデオについては比較的大きな仕様、性能の向上が見られる。

 大きく違うのは、M1 Proの場合、接続方法は問わず、最大で2台の外部ディスプレーに出力可能だったのに対し、M2 ProではThunderbolt経由で最大2台、それに加えてHDMI経由で1台の合計3台の外部ディスプレーに対して同時出力が可能となっていること。また、Thunderbolt経由のビデオの最大解像度が6Kなのは同じだが、HDMI経由の最大解像度がM1 Proの4K(60Hz)からM2 Proでは8K(60Hz)へと大きく向上している。さらにこのHDMIポートの音声出力がマルチチャンネルオーディオに対応したことは、見落としがちなアップデートだ。これはすべてのユーザーに直ちに恩恵をもたらすわけではないが、デスクトップ環境で使用する際には、大きな違いとして、MacBook Proの活用範囲を拡げる可能性がある。

 ワイヤレス通信機能については、旧モデルがWi-Fi 6、Bluetooth 5.0対応だったものが、新モデルではWi-Fi 6E、Bluetooth 5.3対応へと着実に進化している。これは、通信相手にもよるので、直ちに使い勝手が向上するという性格のものではないが、更新すべきところには確実に更新が施されているという印象だ。

 さらに細かな点を指摘すると、本体の重量を表す数字の有効桁数が増えて、10g単位まで表現できるようになっている。従来は100g単位までだった。その結果、旧モデルはM1 ProでもM1 Maxでも1.6kgだったが、新モデルはM2 Pro搭載機が1.60kg、M2 Max搭載機は1.63kgと、チップによって30gの違いを反映したものとなった。チップ自体の重量が30gも違うとは考えにくいので、チップをカバーするヒートシンクなどを含めた重量の違いだろう。

 スペック的にも同じ表記だし、アップルの「概要」ページにも特に記述はないが、「フォースキャンセリングウーファー」を備えた内蔵スピーカーと、「スタジオ品質の3マイクアレイ」を備えた内蔵マイクの品質は、実際に使ってみると2021年の旧モデルよりも、さらに音質が向上しているように感じられた。

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