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引退で心疾患リスクが2.2%ポイント減、10万人を追跡調査=京大

2023年06月02日 06時42分更新

文● MIT Technology Review Japan

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京都大学の研究チームは、日本を含む35カ国の50~70歳の10万6927人を約6.7年追跡し、引退と心疾患リスクの関連を調査。因果推論の手法を用いてバイアスを取り除いた結果、引退した人は、働き続けている人よりも心疾患リスクが2.2%ポイント低いことを明らかにした。

京都大学の研究チームは、日本を含む35カ国の50~70歳の10万6927人を約6.7年追跡し、引退と心疾患リスクの関連を調査。因果推論の手法を用いてバイアスを取り除いた結果、引退した人は、働き続けている人よりも心疾患リスクが2.2%ポイント低いことを明らかにした。 多くの既存研究は、高齢者の就労継続が健康に良いことを示唆しているが、これらの結果は、健康な人ほど就労継続しやすいというバイアスが十分に考慮されていない可能性がある。そこで研究チームは、こうしたバイアスを取り除くために「操作変数法」と呼ばれる因果推論の手法を採用。さらに、個人の性別や遺伝子、各国の医療制度や労働市場の違い、社会・経済状況の時系列トレンドなど、観察できない様々な要因の影響も考慮して、35カ国の50~70歳の10万6927人を約6.7年追跡したデータを分析した。 その結果、引退した人は、働き続けている人よりも心疾患リスクが2.2%ポイント低いことが初めて明らかになった。また、引退した人は、身体不活動(中高強度の運動の頻度が週1回未満)のリスクが3.0%ポイント低いことも示された。さらに、教育年数が高い人の間で引退した人の方が脳卒中や肥満、身体不活動のリスクが低いことや、デスクワーカーの間では引退した人の方が心疾患や肥満、身体不活動のリスクが低いが、肉体労働者の間では引退した人の方が肥満リスクが高い傾向にあることもわかった。 研究論文は、国際疫学協会の「国際疫学ジャーナル(International Journal of Epidemiology)」に2023年5月8日付けでオンライン掲載された

(中條)

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