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京大、低コストで実行できるDNAクローニング技術

2023年05月23日 13時47分更新

文● MIT Technology Review Japan

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京都大学の研究チームは、「相同組換え」によるDNAクローニングを低コストで実行可能にする技術を開発した。DNAクローニングは遺伝子を扱うほとんどの研究室が使用している基幹技術で、最近では「相同組換え反応」を利用してDNAをクローニングする市販の試験キットが研究で使われている。ただ、キットが高額なことから、研究チームは低コストな反応液の開発に取り組んだ。

京都大学の研究チームは、「相同組換え」によるDNAクローニングを低コストで実行可能にする技術を開発した。DNAクローニングは遺伝子を扱うほとんどの研究室が使用している基幹技術で、最近では「相同組換え反応」を利用してDNAをクローニングする市販の試験キットが研究で使われている。ただ、キットが高額なことから、研究チームは低コストな反応液の開発に取り組んだ。 研究チームは、大腸菌を培養して特定の界面活性剤で処理し、そこから得られた抽出液(SLiCE)を使えば、相同組換え反応の活性が得られるとする論文に注目。大腸菌の相同組換え経路の遺伝子を調べ、SLiCEの有効成分の候補リストを作成した。最終的には合計7種類の遺伝子に絞り、これらの遺伝子をそれぞれ破壊した7種類の大腸菌を入手。この株を培養してSLiCEを作成し、その「相同組換え」活性を比較したところ、「エキソヌクレアーゼIII(ExoIII)」酵素の遺伝子を欠いた大腸菌から作成したSLiCEには相同組換え活性がないことが分かったという。 市販されているExoIIIを購入し、希釈した酵素溶液をSLiCEの代わりに使って相同組換えの実験をしたところ、ごく少量の酵素で十分な活性を得られることを確認できた。このことからExoIIIは、SLiCE反応に必要十分な要素であると分かった。ただしExoIIIは3'末端が突出した一本鎖DNAを消化できないことから、さらに酵素を探索したところ、エキソヌクレアーゼT(ExoT)という酵素を混合することで、ExoIIIの欠点を解消できることが分かった。 研究成果は5月3日、ジーンズ・トゥ・セルズ(Genes to Cells)誌にオンライン掲載された。

(笹田)

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