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米国での最新発表を日本市場向けに説明、「Copilot in Viva」や日本MS社内でのViva活用事例も紹介

日本MS、従業員エンゲージメント向上支援の「Microsoft Viva Glint」など披露

2023年05月23日 07時00分更新

文● 大河原克行 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

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 日本マイクロソフト(日本MS)は2023年5月18日、オンラインイベント「マイクロソフトが提案する最新の働き方 ~ Microsoft Viva Summit Recap Event」を開催した。

 このイベントは、米マイクロソフトが4月に開催した「Microsoft Viva Summit」の発表内容を日本市場向けに披露するもので、従業員エクスペリエンスプラットフォームである「Microsoft Viva」の最新技術が従業員の働き方にどんな影響を及ぼすのかを説明。さらに新発表の「Microsoft Viva Glint」や「Copilot in Microssoft Viva」の紹介、日本マイクロソフトにおけるMicrosoft Vivaの活用事例も公開した。

 加えて、マイクロソフトが働き方のトレンドを調査した「2023 Work Trend Index」や「従業員エンゲージメント」調査の結果についても解説を行った。

従業員エクスペリエンスプラットフォーム「Microsoft Viva」の基本コンセプト

日本マイクロソフト モダンワークビジネス本部 プロダクトマーケティングマネージャーの加藤友哉氏、同本部 シニアコミュニケーションマネージャーの嶋内愛氏

従業員エンゲージメントの向上を促す「Viva Glint」を発表

 2021年に発表されたMicrosoft Vivaは、次世代のAIとデータに基づくインサイトを通じて、従業員のエンゲージメントとパフォーマンスの継続的な向上を支援する従業員エクスペリエンスプラットフォーム。10種類のモジュールが提供されており、目標とOKR管理の「目的」、職場/従業員フィードバック分析の「インサイト」、従業員のコミュニケーション改善の「つながり」、学習/ナレッジ管理の「成長」を支援する。

 Forrester TEIが公表した検証レポートによると、Microsoft Vivaは、従業員による情報検索時間の短縮、人材オンボーディング期間の短縮、離職する従業員の減少といった大きな効果をもたらす。これにより、投資回収期間である6カ月間以内の総ROIは327%に達するという。

Microsoft Vivaのモジュールと、Forrester TEIによる検証レポートの結果

 今年7月から新たに提供予定の「Microsoft Viva Glint」は、組織全体を対象にアンケートを行うことで、従業員エンゲージメントの現状を即座に可視化し、エンゲージメントの向上や仕事の質向上を実現する推奨アクションを提案することで、ビジネスの成長を促すモジュールだ。

「Microsoft Viva Glint」は従業員の声を収集し、エンゲージメント向上につなげる新たなモジュール

 マイクロソフトの調査によると、「十分な頻度で従業員から意見を収集できていない」と考えるマネージャーは80%、また「組織から意見を求められていない」と考える従業員も43%に達しているという。さらに、従業員からのフィードバックを収集したとしても、75%の意志決定者は「収集したフィードバックが十分に生かせるものではない」と感じているという。Viva Glintはこうした課題の解消を目指す。

 日本マイクロソフト モダンワークビジネス本部の加藤友哉氏は、Viva Glintは「仕事の流れのなかで、従業員の意見やアイデア、フィードバックを収集して、組織の改善アクションにつなげることを支援する」ものだと説明した。「社内のフィードバック文化を効果的に形成できる」(加藤氏)。

Viva Glintの概要

 さらに、Viva GlintとViva Insightsを併用することで、従業員体験をより正確に把握できるようになるという。うまくいっているポイント、改善可能なポイントが抽出でき、従業員エンゲージメントスコアや販売実績といったデータと組み合わせることで、「成果につながる仕事のパターン」を把握できる。

 「Viva GlintとViva Insightsを統合し、従業員エンゲージメントデータと『Microsoft Graph』による行動/コラボレーション関連のデータを組み合わせて表示させることで、組織の状況、全体像をより詳しく理解できる。たとえば、ウェルビーイングスコアの向上に何が影響するのかといった相関性なども、高い精度で分析しやすくなる」(加藤氏)

Viva GlintとViva Insightsを併用、連携させることで、従業員エンゲージメントの全体像が把握できると説明

 今後は「Microsoft 365」との統合により、従業員へのリーチ拡大やアンケート回答率の向上、即時性の向上が可能になるという。現在すでに世界1200社以上で採用されているが、新たにVivaファミリーに加わることで、Microsoft 365採用企業における利用が促進されるとした。

AI支援の「Copilot in Microsoft Viva」は3つの効果をもたらす

 マイクロソフトでは「すべての製品にAIを搭載する」という方針に基づき、AIがユーザーを支援する“Copilot”シリーズを展開している。その一環として、今回はCopilot in Microsoft Vivaが新たに発表された。2023年中の提供開始を予定している。

 Copilot in Microsoft Vivaとはどんなものか。加藤氏は、Copilotによる支援を通じて「組織の優先事項と目標の明確化」「従業員のコミュニケーションと組織のナレッジ/スキルのレベルアップ」「データの活用による従業員エンゲージメント/パフォーマンスの継続的な改善」の3つの効果をもたらすと説明する。

「Copilot in Microsoft Viva」がもたらす効果

 具体的には、前述したMicrosoft VivaのモジュールそれぞれにCopilotの支援機能が組み込まれるかたちとなる。

 たとえば「Copilot in Viva Goals」では、自然言語処理AIにより、プランニングや戦略の文書からOKR作成のレコメンドを生成したり、AIとの会話を通じて既存のOKRを改善したり、OKRの進捗をAIが要約したりといった機能を提供する。

 また「Copilot in Viva Engage」では、職場内での会話のきっかけを生み出す投稿のヒントを提供したり、メッセージの“トーン”を調整したり、投稿を充実させる画像をAIが提案したりする。投稿による効果、職場内で醸成されている感情を数値化することで、社内コミュニケーションのさらなる高度化の役割も果たす。

 「Copilot in Viva Glint」は、従業員のアンケート回答コメントを、AIによって瞬時に要約、分析する。これにより、従業員のコメントに隠された重要な課題、潜在的な解決策 を提示してくれる。コメントの確認は、自然言語で問いかけるかたちで可能だ。

 「Copilot in Viva Topics」は、情報探索や知識の共有にAIを活用。複雑なトピックの要約や翻訳の支援などを行うことが可能だ。

「Copilot in Viva Engage」「Copilot in Viva Topics」の概要

日本MSでは2022年末からVivaを導入、社内コミュニケーション向上を実現

 日本マイクロソフト社内におけるViva Engageの活用事例も紹介された。同社 コーポレートコミュニケーション本部の嶋内愛氏は、「従業員エンゲージメントは目に見えた効果がわかりにくく、人によって捉え方も異なる。Viva Engageは人と人のつながりを補助し、可視化することができると考え、2022年末から導入を開始した」と説明する。

 導入に際しては、従業員にとって追加負担にならない「自然な流れ」で活用が進むよう工夫しているほか、リーダーから定期的に投稿を行うことで全体の利用機会増加を図った。また、社内IT部門と連携して、定期的な勉強会の開催、問い合わせコミュニティの開設などといった取り組みも行っている。

 現在では社内の利用浸透道は90%以上になっており、社内調査では「会社やリーダーをより身近に感じる機会になった」との回答が80%、Viva Engageを通じた「リーダーからの定期的な発信を今後も希望する」との回答が97%に達した。従業員からは「「他部門のリーダーの活動を垣間見れて、キャリアの参考になった」「リーダーの投稿へコメントをしたら『いいね!』があり、モチベーションがあがった」「メールより読みやすく、気軽に反応しやすい」といった声が上がっているという。「業務へのプラス影響よりも、活力やメンタリティへの効果、気軽さなどが評価されている。機動性が高いコミュニケーションが実現できている」(嶋内氏)。

 その一方で課題も残るという。たとえば「仕事のなかで自然に利用される」というまでには至っていないため自走できる状態にすること、部門内でのコミュニケーション活用を広げ効果的なユースケースを増やすこと、などだ。リーダーに依頼している定期投稿の負担削減や、業務貢献度の可視化も課題だと嶋内氏は説明した。

 「Microsoft Vivaは、社内コミュニケーターが持つ課題を解決してくれる製品である。Viva AmplifyやViva Pulseといった可視化のための製品も用意されており、社内コミュニケーターの業務を支援してくれることを期待している」(嶋内氏)

“エンゲージメント×生産性”がビジネスパフォーマンスの新方程式

 マイクロソフトが2023年4月に発表した調査レポート「2023 Work Trend Index」から、生成AIや従業員エンゲージメントに関係する調査結果も紹介した。

 同調査によると、「AIが自分の仕事を奪ってしまうこと」を心配しているとの回答が49%に達した一方で、70%の人は「自分の仕事量を減らすために、できるだけ多くの仕事をAIに任せたい」とも回答している。また、LinkedInにおける米国内の求人情報のうち「GPT」に言及したものが、2023年3月には前年同期比79%増となっており、ビジネスシーンにおいて生成AIの活用に注目が集まっていることがわかったという。

 さらに、従業員がMicrosoft 365で費やした時間の57%がTeamsやメールによるコミュニケーション、ExcelやWord、PowerPointなどによるコンテンツ作成が43%であったことから、創造的な業務に費やせる時間が限定的であることを指摘。AIの活用で、日々の業務の生産性を高めていくことが課題になっているとしている。

 そして、次世代AIが新たな働き方を後押しすることにも期待が集まっている。

 「生産性向上は大きな鍵だが、生産性だけを追求すると創造的な活動がそがれたり、チームワークが制限されたりして、持続的な成功にはつながらない。持続的なビジネスパフォーマンスを発揮するには、エンゲージメントと生産性のバランスが必要だ。“エンゲージメント×生産性”が、パフォーマンスにおける新たな方程式になる」(加藤氏)

持続的なビジネスパフォーマンスにはエンゲージメント、生産性の両輪が重要だと説明

 実際に、マイクロソフトが226社/300万人以上を対象に実施した「従業員エンゲージメント」調査によると、従業員エンゲージメントが最も高かった組織は、低かった組織と比べて財務面で2倍の実績を記録したという。「従業員エンゲージメントが高かった組織は、市場環境が悪くても、より高い回復力と安定性を発揮できる」(加藤氏)。さらに、エンゲージメントの高い従業員はそうでない従業員に比べて職場への定着率が12倍も高いこと、従業員のエンゲージメントが高い企業の顧客満足度は10%高いこと、エンゲージメントの低い従業員や会社に反感を持つ従業員によって、世界中で78億ドル分の生産性が失われていることを指摘した。

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