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植物のしおれを防ぐ天然物を発見、分子改造で機能向上=名大など

2023年05月17日 09時24分更新

文● MIT Technology Review Japan

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名古屋大学と関西学院大学の共同研究チームは、植物の気孔開口を抑え、しおれを防ぐ天然物を新たに発見。この物質をもとに、活性を大幅に向上した分子を開発することに成功した。

名古屋大学と関西学院大学の共同研究チームは、植物の気孔開口を抑え、しおれを防ぐ天然物を新たに発見。この物質をもとに、活性を大幅に向上した分子を開発することに成功した。 研究チームは今回、天然由来の化合物が含まれる既存化合物ライブラリを用いた化合物スクリーニングを実施し、アブラナ目植物が産生する天然物のベンジルイソチオシアネート(BITC)が高い気孔開口抑制活性を示すことを発見。この化合物は、気孔の開口のエンジンとなる細胞膜プロトンポンプの働きを抑制することで、気孔が開かないようにすることを明らかにした。 さらに、BITCの分子構造を様々に改変することで、天然物の最大66倍も強力な気孔の開口抑制活性を示し、副作用の少ない「スーパーITC」分子の開発に成功。キクの切花や土植えのハクサイに散布し、乾燥による葉のしおれが抑制されることを実証した。 研究チームはこれまで、構造、分子量、膜透過性が異なる化合物を集めた化合物ライブラリーを網羅的に探索することで、気孔開口に影響を与える化合物を複数発見してきた。しかしながら、これらの化合物は葉面散布での効果が低いため、気孔開口抑制およびしおれ抑制効果が限定的だった。 今回の成果は、切花や生け花の鮮度保持剤や農作物の乾燥耐性付与剤としての利用が期待される。研究論文は、ネイチャー・コミュニケーションズ(Nature Communications)に2023年5月15日付けでオンライン公開された

(中條)

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