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1nm半導体量子細線の作製に成功、超微細加工に新手法=京大ら

2023年05月09日 06時47分更新

文● MIT Technology Review Japan

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京都大学や東京大学、ドイツ・フランクフルト大学などの共同研究チームは、グラファイト基板上に塩化ルテニウム(半導体)のナノ量子細線を作製する手法を発見した。量子細線とは電子や正孔の動きが1次元に束縛された構造のことである。ナノテクノロジーにおける超微細加工に新たな視点を提供するもので、1ナノメートル(100万分の1ミリメートル)サイズの半導体や金属の量子細線の作製を可能にすることが期待される。

京都大学や東京大学、ドイツ・フランクフルト大学などの共同研究チームは、グラファイト基板上に塩化ルテニウム(半導体)のナノ量子細線を作製する手法を発見した。量子細線とは電子や正孔の動きが1次元に束縛された構造のことである。ナノテクノロジーにおける超微細加工に新たな視点を提供するもので、1ナノメートル(100万分の1ミリメートル)サイズの半導体や金属の量子細線の作製を可能にすることが期待される。 研究グループは今回、「パルスレーザー堆積法」により高品質の塩化ルテニウム(RuCl3)薄膜をグラファイト基板表面に蒸着。得られた試料を超高真空下で走査型トンネル顕微鏡に輸送し、表面を原子分解能で観察した。すると、幅が原子数個分のβ-RuCl3量子細線が周期的にならんだ構造が基板表面に形成されており、その長さが1マイクロメートル(1000分の1ミリメートル)以上に及ぶことがわかった。 さらに、蒸着時間や基板の温度を変えることで、これらの量子細線の幅と間隔を微調整でき、縞模様だけではなく、X字やY字のジャンクション、リング、渦巻き模様も形成されることを見い出した。このような量子細線のパターンは、これまでにはない新しい機構に基づくもので、熱帯魚の縞模様やキリンのまだら模様が生じるのと同じ原理で自発的に形成されている可能性が高く、量子回路、光感応デバイス、原子コイルなどの応用先が考えられるという。 今回の成果は、科学雑誌サイエンス・アドバンシス(Science Advances)誌に2023年5月3日付けで掲載された

(中條)

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