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阪大など、パーキンソン病発症の根本原因の1つを解明

2023年04月28日 09時53分更新

文● MIT Technology Review Japan

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大阪大学、リピドームラボ、近畿大学の研究グループは、パーキンソン病を引き起こす根本となる原因を解明した。パーキンソン病患者の脳内ではαシヌクレイン(αSyn)というタンパク質が凝集して蓄積することが分かっている。αSynが凝集、蓄積する原因は全患者のうちおよそ1割の患者では分かっていたが、残りの約9割の患者では不明だった。

大阪大学、リピドームラボ、近畿大学の研究グループは、パーキンソン病を引き起こす根本となる原因を解明した。パーキンソン病患者の脳内ではαシヌクレイン(αSyn)というタンパク質が凝集して蓄積することが分かっている。αSynが凝集、蓄積する原因は全患者のうちおよそ1割の患者では分かっていたが、残りの約9割の患者では不明だった。 研究グループは、これまで患者の脳を研究してきた結果から、αSyn凝集体の中心に何らかの脂質があることを解明している。そこで、脂質がαSynの性質を変えて凝集させてしまうという仮説を立てた。αSynと結合する脂質をメンブレンストリップ法で探索したところ、ホスファチジルイノシトール3リン酸(PIP3)が強く結合することを突き止めた。 PIP3とαSynを混ぜたところ、αSynが異常な構造を持つ凝集体を作ることも分かった。体内にαSynが蓄積する病気はパーキンソン病のほかにもあるが、PIP3とαSynを混ぜて作った凝集体の形や性質が、パーキンソン病患者の脳内に蓄積するαSyn凝集体によく似ていたという。 さらに、培養細胞や神経細胞にPIP3を蓄積させたところ、リソソームやシナプス終端など、実際のパーキンソン病でαSynが凝集を始める場所に、PIP3と凝集して蓄積するαSynを確認した。患者の脳組織のPIP3の量を質量分析や免疫染色で測定すると、パーキンソン病患者が過剰にPIP3を蓄積させていることも分かった。免疫染色の結果からは、αSyn凝集体とPIP3が一緒になって凝集していることを確認できたという。以上の結果から、PIP3が過剰に蓄積するとパーキンソン病患者の体内でαSynの凝集体(レビー小体)ができてしまうことが分かった。 研究成果は3月20日、アクタ・ニューロパソロジカ(Acta Neuropathologica)誌にオンライン掲載された。今後、PIP3の過剰な蓄積を抑えたり、αSynとの結合を阻害するなど、従来と異なる治療法の開発が期待できるという。

(笹田)

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