このページの本文へ

ストレスに強い脳と弱い脳のメカニズムを解明=京大

2023年04月19日 06時47分更新

文● MIT Technology Review Japan

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

京都大学の研究チームは、繰り返し心理社会的ストレスに晒された際に、適応反応を示すか不適応反応を示すかの個体差を決定する脳内メカニズムを発見した。困難や逆境に適応する能力(レジリエンス)を高める制御法の開発、ストレスが引き金となって発症するうつ病や不安障害の病態究明や新たな治療法の開発に繋がることが期待される。

京都大学の研究チームは、繰り返し心理社会的ストレスに晒された際に、適応反応を示すか不適応反応を示すかの個体差を決定する脳内メカニズムを発見した。困難や逆境に適応する能力(レジリエンス)を高める制御法の開発、ストレスが引き金となって発症するうつ病や不安障害の病態究明や新たな治療法の開発に繋がることが期待される。 研究チームは今回、ストレスに強い系統のマウスと、ストレスに弱い系統のマウスに対し、繰り返しの心理社会ストレスを5日間負荷し、これら2種類のマウスの脳内でどのような変化の違いがあるのかを調べた。その結果、ストレスに弱いマウスでは、前帯状皮質とよばれる場所での神経活動が著しく低下していることと、遺伝子の発現量を調節する「Fos」タンパク質の量が顕著に減少していることを突き止めた。一方、ストレスに強いマウスではこのような変化は認められなかった。 さらに、ストレスに弱いマウスを用いて前帯状皮質におけるFosタンパク質の量を人為的に増やす神経活動操作をしたところ、ストレスに強いマウスになった。逆に、ストレスに強いマウスの前帯状皮質におけるFosタンパク質の量を人為的に減らす遺伝子操作実験をしたところ、ストレスに弱いマウスになった。 人間の脳には、ストレスを受けてもそれに適応するシステムが備わっているため、通常の生活を送ることができる。しかし一方で、心理社会的ストレスに適応できずに精神疾患を発症する人もいる。このようにストレスを感じる度合いは個人により異なるが、その原因はよく分かっていなかった。研究論文は、国際学術誌サイエンス・アドバンセズ(Science Advances)に2023年4月5日付けで掲載された

(中條)

カテゴリートップへ

アスキー・ビジネスセレクション

ASCII.jp ビジネスヘッドライン

ピックアップ