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会員企業のデータ・テック、兼松、NTTデータが語る共創とモビリティデータ活用

虎の子のドラレコデータをビジネスに結びつけたMD communet

2023年03月27日 09時00分更新

文● 大谷イビサ 編集●ASCII 写真●曽根田元

提供: NTTデータ

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課題やデータはあったが欠けていたメソッド NTTデータの支援とは?

 「みせナビ」の実現においては、データ・テックの虎の子とも言えるセイフティレコーダから取得されるデータの種類やその精度が意味をなしてくる。「過去に入店したかどうか、どの方向で、どれくらいの速度で入ったのか、GPS、ジャイロ、加速度のデータを0.1秒単位で取っています。加えて、バックの時に点滅するバック信号もとっているので、後ろ向きで駐車したのかもわかります」と田野社長は語る。

実証実験で用いられたセイフティレコーダ(左)

 今回NTTデータが提供したのは、テクニカルなサポートだ。実証実験中はウィークリーでミーティングを重ね、走行データから駐車ルールを判定してくれるプログラム開発とプロジェクトマネジメントを担当した。「SIerとしてシステム開発のノウハウはあるので、複数の会社をまとめるような立場で支援させてもらいました」と中島氏。SIerだからこそのテクニカルな支援は、まさにNTTデータの面目躍如と言えるものだ。

 プログラムは車載器に搭載し、GPSの位置情報に従って、リアルタイムにアナウンスを流してくれる。なにより、店舗ごとのルールをドライバーがわざわざ入力せずとも、自動的に判定してくれるというのが画期的だ。「お客さまから走行データの利用許可さえいただければ、すぐに利用できます」と佐藤氏は語る。

 今回のプロジェクトで苦労したのは、「みせナビ」を実現するために、どのデータを利用するかの選択だった。佐藤氏は、「搬入口を特定したり、駐車の向きを推定するためには、どのデータ項目を使えばよいか。こうしたAI以前の判断は、人間のセンスみたいなものが要求されるので、NTTデータさんと相談しながら決めていきました」と振り返る。実証実験では、ユーザーとなる物流企業と意見交換の場を設けて、真に価値のあるものは何かを模索したという。

重要なのはデータを活用したという意思、解決したい課題

 世に業界団体やコンソーシアム、コミュニティは数あれど、参加することだけが目的化してしまい、実際は成果に結びつかない団体も多い。その点、標準化を目的とするコンソーシアムでもないし、情報交換を目的とするコミュニティでもないMD communetでは、自らデータを持ち寄って、活用やサービス化に向かって前向きに議論できる場だという。

 現在、MD communetに参加している企業・団体は80社。決して多いわけではないが、当面は顔の見える100社程度を目標にする予定。「参加数は多いけど、アクティブに活動している会社が少ない団体だったり、『とりあえず入っておけばいいや』という人たちだらけの集まりにはしたくなかった」と中島氏は語る。

「『とりあえず入っておけば』の集まりにしたくなかった」(中島氏)

 そして、実証実験の末、兼松&データ・テックのようにきちんと成果に結びつけた企業もある。重要なのは、データ活用していきたいという意思、解決したい課題だという。「目的意識を持っている方が集まっていたからMD communetの参画がうまくいったと考えています。私たちがやりたいことに対して、きちんと受け止めてくれる土壌があったんです」と田野社長は語る 。

 佐藤氏は、「データカタログ、マッチング、技術支援など、MD communetを活用する目的を明確にしておくとよいです」とアドバイス。自社で必要なものは何かを検討し、データの売り買いをメインにするのであればデータカタログ、自社のデータと他社のデータを組み合わせるならマッチング、テクノロジー面での支援が欲しい場合はテクニカルサポートといった具合に、ニーズにマッチした選択をすればよい。兼松としても、加入時はそれほど目的意識が強くなかったが、MD communet内でディスカッションを進めるうちに、方向性が明確になったという。

モビリティデータの活用はまだ端緒 もっと気軽に使える基盤に

 今回の「みせナビ」はデータ・テックの自前データで実現できたが、次の構想には他社のデータが必須となる。「みせナビ」はコンビニやスーパーなどに備え付けられた駐車場を前提としているが、たとえばタイミング悪く搬送先に他のトラックがすでに停まっていたり、そもそも駐車場がない搬送先もあり、その場合は近隣の公共駐車場に駐車しなければならない。「公共の駐車場まで利用を拡大しようと考えたら、他社の交通環境情報も多層的に組み合わせる必要があります」と佐藤氏は語る。

 ここに効いてくるのがMD communetのマッチング機能だ。「他のデータが必要なときにMD communetに問い合わせることで、適切なアドバイスをいただける。これはわれわれにとってもありがたいです」と佐藤氏は語る。「みせナビ」を始めとしたプロジェクトのサービス化、巨大化してくるデータ基盤の運用や拡張など、今後もテクニカルなサポートは必要になるという。

 10年前のビッグデータブームの頃に比べれば、企業が利用できるデータは量、種類ともに増えた。しかし、モビリティデータの分野ではまだまだオープン化は進んでいない。「今や車はコンピューターであり、センサーデータの塊。こうした詳細な車両情報をヨーロッパでは国が集めていますが、日本はなぜかそれができておらず、オープンに使えません。国が動いてくれないと、どんどん世界に取り残されてしまいます」と田野社長は危機感を募らせる。

 こうした国や官公庁とのつなぎ役としても、NTTデータへの期待は高い。中島氏も「1社で声を上げてもなかなか説得力を持てないので、MD communetのようにモビリティデータを活用している企業が集まっているコミュニティの役割だと思っています」と語る。

 データ活用を活性化する議論やノウハウはまだまだだし、オープンデータの信頼性を誰が担保するのか、データのメンテナンスや運用に必要なコスト負担はどうするのか、など課題は山積である。こうした課題に対して、MD communetはコミュニティとしての価値を追求しつつ、今後も進化を続ける。「モビリティデータの活用って、本当にまだまだ。今後はもっとデータを気軽に使っていける基盤に成長させていきたいです」と中島氏は語る。

■関連サイト

(提供:NTTデータ)

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