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クフ王ピラミッド内部の未知の空間、宇宙線イメージングで発見

2023年03月10日 06時40分更新

文● MIT Technology Review Japan

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名古屋大学やカイロ大学らの国際共同研究チームは、世界最大規模のクフ王のピラミッドの「シェブロン」と呼ばれる石組み構造(切妻構造)の背後にある未知の空間の位置と形状を、多地点宇宙線イメージングの技術により、数センチメートルという高い精度で特定することに成功。シェブロンの表面から80センチメートル背後に、幅2メートル、高さ2メートル、奥行9メートル程度の大きさの空間が存在していることを明らかにした。

名古屋大学やカイロ大学らの国際共同研究チームは、世界最大規模のクフ王のピラミッドの「シェブロン」と呼ばれる石組み構造(切妻構造)の背後にある未知の空間の位置と形状を、多地点宇宙線イメージングの技術により、数センチメートルという高い精度で特定することに成功。シェブロンの表面から80センチメートル背後に、幅2メートル、高さ2メートル、奥行9メートル程度の大きさの空間が存在していることを明らかにした。 名古屋大学は2015年から、「原子核乾板」と呼ぶ写真フィルム型の素粒子検出器を用いて、宇宙線イメージングによるピラミッド内部の構造探査を進めている。宇宙線イメージングとは、宇宙線中に含まれる素粒子の一種であるミューオンが持つ、厚い物質でも通り抜ける性質を利用することで、厚い物体の内部を非破壊で可視化する技術。 研究チームは今回、原子核乾板のコンパクトさを生かして、ピラミッドの地下の間へと向かう下降通路に6検出器(4箇所)、後世に設けられた水平通路(「アルマムーンの通路」と呼ぶ)に4検出器(3箇所)を設置し、多地点からの同時観測による宇宙線イメージングを実施した。宇宙線イメージの解析のために、カイロ大学が構築したピラミッド内外の詳細な3Dモデルに基づいて、検出器の位置を5センチメートル以下の精度で特定したモデルを作成。未知の空間が存在しない場合に各検出器から期待される宇宙線イメージのシミュレーション結果と、各検出器から得られた実際のデータを比較した。 今回の成果は、宇宙線イメージングの信頼性と精度の向上を示すと同時に、2017年に研究チームが発見したクフ王ピラミッドの中心部に位置する巨大空間との関係性や、空間の役割に関する考古学的考察などの融合研究を発展させ、クフ王ピラミッドの謎の解明につながることが期待される。研究論文は、ネイチャー・コミュニケーションズ(Nature Communications)に2023年3月2日付けで掲載された

(中條)

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