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持久運動能力を向上させる腸内細菌、青学陸上部員に多く

2023年02月03日 06時07分更新

文● MIT Technology Review Japan

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慶應義塾大学、アサヒクオリティーアンドイノベーションズ、青山学院大学の研究グループは、ヒトの持久運動能力を向上させる腸内細菌を発見した。

慶應義塾大学、アサヒクオリティーアンドイノベーションズ、青山学院大学の研究グループは、ヒトの持久運動能力を向上させる腸内細菌を発見した。 研究グループは、青山学院大学陸上競技部に所属する48人の男性学生と、同年代の一般男性10人の腸内細菌叢を比較した。その結果、陸上競技部の学生の腸内にはBacteroides uniformis(バクテロイデス・ユニフォルミス)が多く生息していることが分かった。さらに、陸上競技部の学生のうち3000メートルの走行タイムを提供した25人を対象に、バクテロイデス・ユニフォルミスの菌数と3000メートルの走行タイムの関連を調べたところ、バクテロイデス・ユニフォルミスの菌数が多いほど3000メートルの走行タイムが良いとの相関関係が見出されたという。 バクテロイデス・ユニフォルミスが利用できる環状オリゴ糖であるα-シクロデキストリンの摂取が運動能力に与える影響も調べた。運動習慣がある20〜40歳代の日本人男性10人にα-シクロデキストリンを含有するサプリメントを摂取してもらったところ、摂取開始から8週間後にバクテロイデス・ユニフォルミスの菌数が摂取開始前に比べて有意に増加していた。α-シクロデキストリンを摂取した10人は、エクササイズ・バイクで10キロメートル漕ぐのにかかる時間が摂取前に比べておよそ10%短縮しており、プラセボ対照群の11人と比較して有意に速い結果だという。さらに、α-シクロデキストリンの摂取者では運動後の疲労感も低下していた。このことから、バクテロイデス・ユニフォルミスが好むα-シクロデキストリンの摂取は、ヒトの持久運動能力や運動後の疲労感を改善させることが分かった。 研究成果は1月25日、サイエンス・アドバンシズ(Science Advances)誌に掲載された。バクテロイデス・ユニフォルミスが持久運動能力を向上させる仕組みとしては、この腸内細菌が腸内で産生する酢酸とプロピオン酸が、運動中の肝臓でグリコーゲン分解と糖新生を促進し、運動に必要なグルコースを全身に供給するという仕組みが考えられるという。

(笹田)

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