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東北大など、マヨラナニュートリノを世界最高感度の検出器で探索

2023年02月03日 06時22分更新

文● MIT Technology Review Japan

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東北大学ニュートリノ科学研究センターなどの国際共同研究チームは、ニュートリノがマヨラナ粒子である場合に起こる稀な崩壊「ニュートリノを伴わない二重ベータ崩壊」を探索。崩壊の半減期に対して世界で最も厳しい制限を与え、マヨラナニュートリノの質量が36~156ミリ電子ボルトより小さいことを示した。

東北大学ニュートリノ科学研究センターなどの国際共同研究チームは、ニュートリノがマヨラナ粒子である場合に起こる稀な崩壊「ニュートリノを伴わない二重ベータ崩壊」を探索。崩壊の半減期に対して世界で最も厳しい制限を与え、マヨラナニュートリノの質量が36~156ミリ電子ボルトより小さいことを示した。 我々の宇宙は、始まった直後は粒子と反粒子が同じ数だけ生成されたとされているが、現在は反粒子はほとんど観測されず、粒子だけでできている。これは「物質優勢宇宙の謎」と呼ばれる。粒子・反粒子の区別がないマヨラナニュートリノ(現在、未発見)は、この謎を解明する手がかりとされており、その存在を確認することは物理学における重要なテーマになっている。 研究チームは今回、反ニュートリノ検出器「カムランド」を用いた「カムランド禅実験」において、ニュートリノを伴わない二重ベータ崩壊を探索した。カムランドは、1キロトンの液体シンチレータ(粒子のエネルギーで光る液体)を使った検出器で、岐阜県飛騨市神岡鉱山の地下1000メートルにある。カムランド禅実験では、二重ベータ崩壊核の同位体「キセノン 136」入り液体シンチレータを保持する直径3.0メートルまたは3.8メートルのミニバルーンを、カムランドの中に用意した。 2019年から2021年の夏頃まで約2年分のデータを、二重ベータ崩壊とそれ以外のノイズ信号を機械学習で見分ける手法などを用いて分析した結果、ニュートリノを伴わない二重ベータ崩壊の崩壊数は、最高感度のデータ中に8事象未満と判明。このことから、マヨラナニュートリノが存在することで見える信号の崩壊半減期を、従来の2倍以上の精度にあたる、90%の信頼度で2.3×1026年以上と予測した。さらに、マヨラナニュートリノの質量が、36~156ミリ電子ボルトより小さいことを示した。 今回の研究成果は、米国物理学会のフィジカルレビュー・レターズ(Physical Review Letters)に、2023年1月30日付けで掲載された

(中條)

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