最新パーツ性能チェック 第401回
第13世代Core“K無し”Core i5~i3の実力を検証
Core i5にEコア革命!Core i5-13500/13400&Core i3-13100レビュー
2023年01月24日 10時00分更新
消費電力と熱は?
では、消費電力や熱といった側面を検証する。まずはシステム全体の消費電力をラトックシステム「RS-WFWATTCH1」でチェックしよう。システム起動10分後の安定値を“アイドル時”、Handbrakeエンコード(設定については前述のベンチと共通)時の“高負荷時(最大)”と、処理中盤以降に出現する“高負荷時(安定)”の値をそれぞれ計測した。
また、このテストでは発熱やクロックの推移を見るため、Handbrakeでのエンコードは同じエンコードを3回繰り返している。
Core i9-13900/Core i7-13700の場合、最大値と安定値の差が大きかった(処理中にPower Limit Exceededフラグが立つ)が、Core i5-13600Kより下のCPUでは「MTP無制限であっても」最大値と安定値の差は小さい。ただ、MTPを各CPUの定格値に制限すると165Wあたりで頭打ちになるようだ。
次も消費電力だが、今度はEPS12Vコネクターに流れ込む電力(以降CPU Power)をElmorLabs「PMD」を利用して追跡してみた。グラフはCore i5系とi3系で分割している。
まずCore i5系だが、CPU Powerが最も高いのはCore i5-13600K、その後にCore i5-13500、13400、12400(いずれもMTP無制限)と続く。Core i5-13400のほうが12400よりCPU Powerが高いが、せいぜい10W程度しか増えていない点に注目したい。
一方MTPを制限すると、Core i5-13500〜12400までどのCPUも85W近辺に収束する。処理開始直後のほんの短時間はMTP無制限と同程度の電力消費を記録するが、すぐに85W程度まで低下する。
Core i3-13100と12100に関してはMTP無制限と制限時の差が小さいため、グラフが非常に見辛くなってしまったが、Core i3-13100が83W前後(時折90W超)、MTPを制限すると76W前後にまで下がる。Core i3-12100はMTP設定の差はほとんどCPU Powerに表れていないといった感じだ。
続いてはこのエンコード処理中のCPUクロック(全コアの平均値)やCPUパッケージ温度を追跡してみよう。クロックと温度の追跡は「HWiNFO Pro」を使用している。
Core i5の場合、MTPを無制限にするとクロックはほとんど変動しなくなる。もっと正確に言うと変動はするが変動幅が非常に小さく、さらに平均をとっているため変わっていないように見える、といったところだ。ここでCore i5-12400のクロックはCore i5-13400や13400よりも微妙に高くなっているが、これは第13世代のCore i5にはPコアより低いクロックで動作するEコアが搭載されているためだ(全コアのクロックの平均をとる場合、コア数が少なく、かつPコアしかないCore i5-12400のほうが高い値が出やすい)。
Pコアだけのクロックを見るとCore i5-13500が4.5GHz、Core i5-13400が4.1GHz、Core i5-12400が4GHzと、CPUのモデルが上になるほどクロックも上昇する。MTPを定格に絞ると上位モデルほどクロックが下がっているように見えるのはこのためだ。Core i3に関してはほぼ見たまま。Core i3-13100と12100の差は200MHzしかない。
CPU温度に関してはCore i5-13600Kが79℃前後と突出して高い一方、Core i5-13500は67℃前後、Core i5-13400は49℃前後と下のモデルに行くほど劇的に温度が下がる。ただ、Core i5-13500/13400の温度が20℃近く違うのは興味深い。360mmラジエーターのハイエンド簡易水冷だからこの温度に納まっているが、より安価な簡易水冷や空冷クーラーで運用するのであれば、Core i5-13400のほうがより扱いやすい(=空冷向き)CPUといえる。
最後に、CPUのワットパフォーマンスもチェックしておこう。前述のHandbrakeエンコード検証で得られた「エンコードのフレームレート」を、ここで観測されたCPU Powerの平均値で割り、それを100倍した「CPU Power 100Wあたりのエンコード効率」を求めた。
Core i9-13900/Core i7-13700検証では、MTPを無制限にするとエンコード効率が劇的に低下し、むしろMTPを制限したほうが効率が上がるという結果になっていた。
今回の検証でもCore i5-13500〜12400はMTPを絞ったほうが若干ワットパフォーマンスが向上したが、下位モデルになるほど無制限設定時とのギャップが小さくなる。Core i3ではほとんど変わらないレベルにまで縮まった。
※お詫びと訂正:記事初出時、CPU Power 100Wあたりのエンコード効率において、誤ったグラフを参照しておりました。訂正してお詫び申し上げます。(2023年1月27日)
まとめ:Eコア増設によりCore i5は順当進化
以上でK無し第13世代Coreの下位モデル検証は終了となる。今回K無しのCore i5にもEコアが搭載されたことで、マルチスレッド性能が向上した点は高く評価できるものだ。懸念される消費電力については第12世代Coreと比較すると確かに増加はしたが、Core i9-13900Kや13900KSのような荒ぶりは観測できなかった。
MTPを無制限、かつフルロードに近い状況であっても消費電力はマイルドである。特にCore i5-13500はAlder Lake-Sベースという点において(筆者のようなテック系オタクには)残念ではあるが、Eコア8基が生み出すマルチスレッド性能は魅力的。現在の売れ筋CPUになるのも頷ける話だ。
ただ、残念でならないのは最下位のCore i3-13100の存在だ。H0ステッピングを採用している段階でEコアの搭載は期待できない(=Eコアを製造時より排除している)が、Core i3-12100との違いがクロックしかない。廉価版モデルにAlder Lake-Sを使うという決定をした瞬間からこの結果は決まっていたようなものだが、もしCore i5-13600以下もRaptor Lake-Sベースで作っていたら、今回のベンチマーク結果ももっと違ったものになっていただろう。
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