各国・地域でコロナ関連の検疫緩和が進む中、台湾も2022年10月中旬から制限が大幅に緩和された。2022年12月時点では事前の検査などは不要となり、台湾入り後は7日間の自己経過観察となった。なお最新の情報については各自で関係公的機関の情報を確認してほしい。
筆者もこの緩和を受け2022年12月に台北を訪問した。今回の目当ては5G対応のプリペイドSIMで現地の5G回線を試すことだ。コロナ前、2019年に台北を訪問した時はまだ外国からの渡航者向けの5GプリペイドSIMは販売されていなかった。現在は3社が販売しており、高速データ通信を無制限で利用できる。
台北桃園空港で3社の5GプリペイドSIMを購入
今回利用したのは台北の桃園国際空港だ。筆者は香港からキャセイパシフィック航空を使ったのでターミナル1に到着した。飛行機を降りイミグレーションへ向かう前のエリアには、キャリアのカウンターが2つ並んでいる。ちょっと目立ちにくいので、気が付かずそのままイミグレーションを通過してしまわないように注意が必要だ。そのうち手前のT STAR(台湾之星)で5GのプリペイドSIMが販売されていたので、まずは購入した。イミグレーションを抜けた後では同社の5G SIMは空港で販売していないことを事前に聞いていたので、ここでの購入となった。
T STARの渡航客向け5GプリペイドSIMプランは3つある。なお、無料通話とSMSも一定量がインクルードされている(写真参照)。購入時にはよほど5GのSIMを買う客が少ないのか「5Gのエリアは限られている」ことを強く確認された。同社は後発キャリアであることもあり、先行大手キャリアより5Gエリアは狭いようだ。また、5GプリペイドSIMはテザリング容量に制限があるが、これはほかのキャリアの5Gプリペイドも同様だ。ちなみに、4GプリペイドSIMはテザリング制限はない。購入はクレジットカード対応、パスポートによるユーザー登録が必要な点も、ほかのキャリアは同じだ。
- 3日データ定額(テザリング3GB):400台湾ドル(約1800円)
- 5日データ定額(テザリング5GB):500台湾ドル(約2200円)
- 7日データ定額(テザリング7GB):700台湾ドル(約3100円)
今回は滞在期間に合わせて5日間のSIMを購入。購入直後はデータ通信はできず、スタッフがプリペイドSIMを登録するのに5分ほどかかる。その場でSIMをスマートフォンに入れるとアンテナマークの横には「3G」のマーク。その後、機内モードのオン/オフを何度か繰り返していると、5分程度で「5G」に切り替わった。
さてイミグレーションを抜けて荷物をピックアップし、到着ロビーに出て左側に進めば大手3キャリアのカウンターがある。このうち、渡航客向け5GプリペイドSIMを販売しているのはChunghuwa Telecom(中華電信)、Far EasTone(遠傳電信)の2社だ。台湾大哥大(Taiwan Mobile)は5Gプリペイドそのものは販売しているようだが、空港での旅行者向けの短期プランの販売はしていない。
まずはChunghuwa Telecom(以下、中華電信)のカウンターへ。こちらの旅行者向けプランはT STARよりそれぞれ100台湾ドル高い。テザリング制限と無料通話付与はT STARと同等だ。こちらも5日間を購入した。
- 3日データ定額(テザリング3GB):500台湾ドル(約2200円)
- 5日データ定額(テザリング5GB):600台湾ドル(約2700円)
- 7日データ定額(テザリング7GB):800台湾ドル(約3500円)
中華電信は購入後にスマートフォンにSIMを入れると、その場ですぐに5Gのデータ通信が開始された。その後の台北市内での速度やエリアも広く、個人的には一番オススメと感じたキャリアだ。なお、中華電信はeSIMも販売しているため、iPhoneなどeSIM対応スマートフォンを持っているなら物理的なSIMの入れ替えも不要だ。
続いて隣にある遠傳電信(Far EasTone)カウンターへ。こちらも中華電信と同じ料金プランだが「5Gプリペイドは売り切れ」という。そのため空港内を移動する無料シャトル電車に乗ってターミナル2へ移動し、そちらのFar EasToneカウンターを訪れた。ここでは5GプリペイドSIMの在庫があり無事購入できた。このように片方のターミナルで在庫がない場合は、もう1つのターミナルへ移動してみるのもいいかもしれない。
Far EasToneの5GプリペイドSIMプランは中華電信と全く同等だ。ただし物理SIMのみでeSIMは無い。また購入後はT STAR同様に5Gが使えるまで数分待つ必要があった。カウンターで購入した5日間定額の5G SIMを入れ、アンテナピクトが立ち「4G」の表示ができることを確認、機内モードのON/OFFを繰り返し1-2分程度で「5G」へと切り替わった。
- 3日データ定額(テザリング3GB):500台湾ドル(約2200円)
- 5日データ定額(テザリング5GB):600台湾ドル(約2700円)
- 7日データ定額(テザリング7GB):800台湾ドル(約3500円)
さっそくその場(ターミナル2到着ロビー)で3社のスピードテストをした。3社とも5Gの接続バンドはn78。下りの最高速度は中華電信が568Mbps、Far EasToneが482Mbps、T STARが182Mbps。この3社の関係はそのほかの場所でもほぼ同等で、やはり中華電信の5Gが最も良い。
【注意!】日本キャリアの5Gスマホでは台湾の5Gを掴まない
今回筆者が滞在したホテルはWi-Fiの速度が遅く、下り50Mbps程度しか出なかった。そのためノートPCで高速な通信速度が必要な時はスマートフォンの5Gをテザリングで使用した。テザリング制限があるため使い放題とはいかず、ノートPCを常時つなぐような使い方の時は4GプリペイドSIMを買ったほうがいいだろう。
また今回は以下の端末を持ち込んで5GプリペイドSIMを試したが、日本のキャリア販売品(SIMロック解除済)の5Gスマートフォンでは、台湾の5GプリペイドSIMで5G回線をつかむことができなかった。
- サムスン電子「Galaxy S21 Ultra 5G」(香港版)
- サムスン電子「Galaxy Z Fold4」(EU版)
- LGエレクトロニクス「VELVET L-52A」(ドコモ版)
- オッポ「OPPO Reno7 A」(日本SIMフリー販売品)
これは現在展開されている5Gが4Gのコアネットワークを共用するNSA(Non Stand-Alone)方式であり、簡単に言えば5Gと4Gを組み合わせて利用する。日本キャリアの5Gスマートフォンは、その組み合わせ(EN-DCという)が台湾のNSA方式の5Gとマッチしないため、5Gを掴むことができないようだ。
また、同じ日本販売品でもOPPOのReno7 Aは5Gを掴むことができた。現時点では台湾で5Gを体験するならば、キャリア販売品以外の5Gスマートフォンを選んだほうがいいのかもしれない。おそらく、アジアやヨーロッパ販売のSIMフリーモデルなら問題なく5Gを掴むことができそうだ。