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九大、超伝導量子コンのエラーの原因となる新種のノイズを観測

2022年09月29日 06時22分更新

文● MIT Technology Review Japan

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九州大学の研究チームは、超伝導ジョセフソン接合に微量の水素不純物を添加した試料を用いて電流-電圧特性を詳細に調査した。その結果、ジョセフソン接合中の準粒子の干渉効果によって超伝導ジョセフソン素子を流れる電流にノイズ構造が発生することを初めて明らかにした。

九州大学の研究チームは、超伝導ジョセフソン接合に微量の水素不純物を添加した試料を用いて電流-電圧特性を詳細に調査した。その結果、ジョセフソン接合中の準粒子の干渉効果によって超伝導ジョセフソン素子を流れる電流にノイズ構造が発生することを初めて明らかにした。 研究チームは、水素を微量添加したバナジウム金属試料から超伝導ジョセフソン接合を作製。その試料の電流-電圧特性を測定し、超伝導ギャップ(フェルミ面付近の電子の状態密度が抑制されることで生じるエネルギーギャップ)より大きな電圧領域でもジョセフソン電流にスパイク状のノイズが複数出現することを明らかにした。 さらに水素不純物濃度変化、温度変化、ジョセフソン接合のサイズ変化、水素位置の変化などを調べることで、このスパイク状ノイズが超伝導中の準粒子の干渉により発生していると結論付けた。この結果は、素子内に不純物や欠陥が存在することでも準粒子の干渉が誘起され、超伝導電流に対するノイズ源になることを示しているという。 現在の量子コンピューター素子は超伝導ジョセフソン接合を有するものが主流となっている。今回の研究成果は、素子内の量子状態を破壊するノイズ起源の解明につながることが期待される。研究成果は米国化学会発行の学術誌、ACSナノ(ACS Nano)のオンライン版に2022年8月26日付で公開された

(中條)

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