このページの本文へ

東芝が超伝導量子コンのキーデバイスを発案、試作・実証へ

2022年09月20日 14時19分更新

文● MIT Technology Review Japan

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

東芝は、超伝導量子コンピューターの高速化と精度向上の鍵を握るデバイスである可変結合器の新構造である「ダブルトランズモン カプラ」を発案した。可変結合器は、超伝導量子コンピューターで標準的に用いられる「トランズモン量子ビット」をつなぐために用いられるデバイスで、量子ビット間の結合を「オン」/「オフ」することで演算の実行と停止を切り替える。

東芝は、超伝導量子コンピューターの高速化と精度向上の鍵を握るデバイスである可変結合器の新構造である「ダブルトランズモン カプラ」を発案した。可変結合器は、超伝導量子コンピューターで標準的に用いられる「トランズモン量子ビット」をつなぐために用いられるデバイスで、量子ビット間の結合を「オン」/「オフ」することで演算の実行と停止を切り替える。 東芝が考案したダブルトランズモン カプラの特徴は、周波数が大きく異なるトランズモン量子ビット間の結合を完全に「オン」および「オフ」にできることにある。完全に「オン」にすることで強い結合による高速な量子計算が実行できると同時に、完全に「オフ」にすることで残留結合によるエラーを低減できる。そのため、量子計算の計算速度と精度の向上を両立させられるという。同技術を用いてシミュレーションをした結果、量子計算の基本操作である2量子ビットゲートを24ナノ秒という短い処理時間で、99.99%の精度で実行できた。 トランズモン量子ビットは、周波数が近い2つの量子ビット間では結合を「オフ」にできるが、一方の量子ビットに照射した操作用電磁波が他方に伝わることによるエラーが発生しやすくなる。周波数が大きく異なる2つの量子ビットではこうしたエラーを抑制できるが、結合を完全に「オフ」できないため、残留結合によるエラーが発生しやすくなる。 東芝は、ダブルトランズモンカプラの試作と実証実験を今年度中に開始する予定だとしている。研究の成果は、米国物理学会の学術論文誌、フィジカル・レビュー・アプライド(Physical Review Applied)に2022年9月15日付けで掲載された

(中條)

カテゴリートップへ

アスキー・ビジネスセレクション

ASCII.jp ビジネスヘッドライン

ピックアップ