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東北大などがクォーク間の斥力を測定、「核力」の理解へ一歩

2022年09月14日 14時46分更新

文● MIT Technology Review Japan

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東北大学や京都大学などの共同研究チームは、大強度陽子加速器施設J-PARCのハドロン実験施設において、正電荷を持つシグマ粒子(Σ+)と陽子を衝突させることにより、Σ+と陽子の散乱の様子を高精度で測定することに成功。今まで未知であったクォーク間の斥力の強さを決定した。

東北大学や京都大学などの共同研究チームは、大強度陽子加速器施設J-PARCのハドロン実験施設において、正電荷を持つシグマ粒子(Σ+)と陽子を衝突させることにより、Σ+と陽子の散乱の様子を高精度で測定することに成功。今まで未知であったクォーク間の斥力の強さを決定した。 研究チームは、J-PARCハドロン実験施設で供給される大強度のパイ中間子のビームを液体水素標的に照射して、従来の約100倍のΣ+を生成。生成されたΣ+が液体水素標的内の陽子と散乱して叩き出された陽子や、散乱後にΣ+が崩壊して放出した陽子を検出することで散乱現象を特定して、Σ+と陽子の散乱の微分断面積を高精度で測定した。その結果、散乱する2つの粒子が3割程度重なり合うような場合に、核力はまだ引力であるのに対して、Σ+と陽子間の力はすでに核力の2倍程度も強い斥力(反発力)になっていることが分かった。 原子核を構成する源の力である核力は、陽子と中性子が比較的離れたときには引力であるが、陽子と中性子が重なり合うような近い距離では大きな斥力へと変化する。この引力と斥力のバランスのおかげで原子核は自身の引力で潰れることなく安定に存在することができるが、斥力を生み出すメカニズムの理解は長年の課題となっている。今回、クォーク間のパウリ斥力(パウリ原理に基づく斥力)の強さを決定したことで、核力の短距離での斥力の理解が一層進むことが期待される。 研究成果は、京都大学基礎物理学研究所と日本物理学会が共同で刊行している英文の学術論文誌「Progress of Theoretical and Experimental Physics」に、2022年9月4日付けでオンライン公開された

(中條)

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