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単一電子の高効率な移送に成功、量子コン応用に期待=東工大など

2022年09月13日 06時53分更新

文● MIT Technology Review Japan

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東京工業大学や産業技術総合研究所などの共同研究チームは、表面弾性波の孤立パルスの発生技術を開発し、その技術を用いて単一電子の高効率な移送を実現した。汎用量子コンピューターの実現には、離れた量子ビット(キュービット)間で情報を移送する手段の確立が必要不可欠であり、今回の手法は量子ビットの集積化実現につながる成果となる。

東京工業大学や産業技術総合研究所などの共同研究チームは、表面弾性波の孤立パルスの発生技術を開発し、その技術を用いて単一電子の高効率な移送を実現した。汎用量子コンピューターの実現には、離れた量子ビット(キュービット)間で情報を移送する手段の確立が必要不可欠であり、今回の手法は量子ビットの集積化実現につながる成果となる。 表面弾性波は物質の表面を伝播する波の一種であり、表面弾性波に付随する電場の波を用いると、サーフィンの要領で、単一の電子を周囲の電子から孤立させて移送することが可能になる。研究チームは、0.5ギガヘルツから3ギガヘルツの帯域の表面弾性波を発生できる独自の「櫛(くし)形電極」を作製。同帯域の表面弾性波を同位相で重ね合わせることで不必要な波を打ち消し、高強度な表面弾性波の孤立パルスを発生させることに成功した。さらに、発生させた孤立パルスを用いて単一電子の移送実験をしたところ、99%を超える確率でうまく移送できたという。 表面弾性波を用いた単一電子の移送技術は、離れた電子スピン量子ビット間での量子情報の移送手段の有力候補とされている。従来の研究では、電子を移送するのに、ある一定の時間幅の表面弾性波バースト(有限の立ち上がり、立ち下がり時間を持つ多数の波のまとまり)を用いており、電子の移送に関わらない余分な表面弾性波による周囲の電子への悪影響が問題視されていた。今回の孤立パルスを用いた移送技術は、まわりの量子ビットへの擾乱を抑えた高効率な量子情報の移送手段となる可能性がある。。 今回の研究は、科学雑誌フィジカル・レビューX(Physical Review X)に2022年9月7日付けで掲載された

(中條)

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