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九大とトヨタ、石油含有の硫黄化合物を紫外線照射で分解

2022年09月02日 06時35分更新

文● MIT Technology Review Japan

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九州大学とトヨタ自動車の研究グループは、石油が含有する硫黄化合物の中でも分離が難しい物質を、紫外線を照射するだけで分解することに成功した。硫黄化合物を含有したままの状態で石油を燃焼させると、硫黄酸化物を放出して大気を汚染する上、自動車の性能劣化、燃費低下を招く。

九州大学とトヨタ自動車の研究グループは、石油が含有する硫黄化合物の中でも分離が難しい物質を、紫外線を照射するだけで分解することに成功した。硫黄化合物を含有したままの状態で石油を燃焼させると、硫黄酸化物を放出して大気を汚染する上、自動車の性能劣化、燃費低下を招く。 製油所では水素化脱硫という手法で硫黄化合物を除去しているが、高温高気圧の環境を作らなければならないため大量のエネルギーを消費する。また、水素化脱硫は世界のすべての製油所で実施できる手法ではなく、脱硫が不十分なまま流通する石油も多い。 研究チームは、石油が含有する硫黄化合物の中でも脱硫が難しいベンゾチオフェン類やジベンゾチオフェン類をおよそ100ppmの濃度で炭化水素に溶かした溶液を石英セルに入れ、小型のランプで紫外線を照射した。ランプの出力は8ワットで、紫外線の波長は254ナノメートル。紫外線照射を開始して16時間以内に硫黄化合物が100%分解したという。分解によって発生した沈殿物をろ過して単離し、蛍光X線分析、質量分析、液体クロマトグラフィーによる分析などを実行したところ、ほぼ100%単体の硫黄であることを確認した。 研究成果は8月5日、ジャーナル・オブ・クリーナー・プロダクション(Journal of Cleaner Production)誌にオンライン掲載された。今回発見した脱硫手法は、水素化脱硫とは異なりガソリンスタンドや自家用車の車内など小規模な設備でも実行できるため、現時点で脱硫が十分にできていない地域でも容易に実行できるとしている。

(笹田)

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