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約1兆パターンの可能性から最適な作業工程を導く

土木工事の計画はサイバー空間で立てる、EARTHBRAINが「Smart Construction Simulation」を発表

2022年09月06日 11時30分更新

文● ASCII

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Smart Constraction Simulationのサービス紹介動画

 EARTHBRAINは9月1日、建設業界向けのDXソリューション“Smart Constructon”の機能追加について発表。記者説明会を開催した。「デジタルツインを活用した世界最先端の建設DX」をうたう。

現実世界をサイバー空間の中に再現し、シミュレートした結果を現実世界にまた戻すデジタルツインの発想で考えられたソリューションだ。

 Smart Constructionは、建設機器のコマツが2015年にスタートした建設現場のデジタル化技術。紙の図面や人の手に頼っていた測量/施工を、デジタル化した手段に置き換え、安全で効率的な作業にすることを目的にしている。この事業は昨年9月1日にコマツ、NTTコミュニケーションズ、ソニーセミコンダクタソリューションズ、野村総合研究所の合弁で発足したEARTHBRAINに引き継がれた。「徹底的な開発の加速」「DX化を深めた現場への応用」「海外展開」の3つを軸に、機能の高度化や事業の拡大に取り組んでいる。

3Dモデルの中で作業をシミュレート、最適な工程を作り修正する

 現実世界をサイバー空間上で再現する“デジタルツイン”の概念を取り入れ、施工オペレーションを最適化できるのがSmart Constructionの特徴。主に土木工事をターゲットにしている。

Smart Construction Simulation

 9月1日に発表した「Smart Construction Simulation」では、土配計画、施工手順、建機やトラックの稼働最適化、予実差分からの改善(運土)の4項目でプロジェクトの最適化提案が可能となった。特に施工手順の改善では、どこを掘り、どこを埋めていくべきかを考え、変化する地形とともに最適な手順を作る特許技術となっており、インパクトの強いものだという。

各施工工程におけるSmart Construction Simulationサービス利用イメージ

 同社代表取締役の小野寺昭則氏は「DXのステージを一つ進めた」とする。Smart Constructionはこれまで現場のデジタル化やデジタルツインによって現場の可視化を推し進め、可視化したものを最適化して現場で同期させ、実際の現場でも機械、労務、材料を最も無駄のなく動かして作業できる環境を整えてきた。これまでも完成の地形と現況の地形を比較して、土量の最適化や機械稼働率の最適化をすることができたが、Smart Construction Simulationではこの取り組みをさらに進め、運び方やその手順なども計算することが可能となった。計画を最適化し、現状に合わせて組みなおす領域にまで踏み込んだ機能を提供する。

現実の工事現場をデジタル空間の中に作り、最適な工程をシミュレートする。ドローンなどを活用し、的確な現況把握ができる点も特徴の一つ。

 Smart Construction Simulationでは、デジタルツイン上にある3Dモデルから現場の制約条件を割り出し、コスト、工期などを算出。1兆通りの候補から最適な施工計画を提案できる。

 土配計画では、現場を10mメッシュで分解して、適切な運搬先を仕事量が最適になるように組む。200万m2を超えるような広いエリアでも約15分でメディア分割が可能。施工手順では施工順序や並列施工の簡単な検討と修正が可能で、仮設道路の最短ルートを提案し、工程表を作成できる。こちらも200万m2を超えても約15分で結果が出る。稼働最適化では重機やトラックの最適台数を決められるほか、稼働率を見た工期予測が可能。すれ違い待ち、一方通行、路面変化、積み込み待ちなども考慮する。安全面も考慮したルート変更もでき、工期の遅れなどが出た場合は車両の稼働率を増やして調節するといった判断もしやすくなっている。予実差分からの改善については、運搬管理ソリューションの「Smart Construction Fleet」で、運搬実績、積載、積載運搬、空荷、積み込み待ちなどの実情を見て、予想との乖離を知り、計画の改善ができる。

平均して30%の生産性向上、日本全体で約5兆円のインパクトも

 EARTHBRAINは、Smart Contruction Simulationの先行導入事例として、上武建設の高速道路建設工事、鈴与建設の山間部の公共道路建設工事、廣瀬の公共河川工事、安藤工業の民間造成工事などを発表。平均して約30%の生産性向上が得られたとしている。

4社の先行事例の紹介

 ビデオ出演した上武建設の上武社長は、Smart Construction Simulationを今年から10現場以上で使用し始めたと説明。タイトな工期の中、積算段階から使い運土計画などに活用しているとした。導入の利点としては、二次元の図面ではなく3Dのシミュレーションで表現されるため理解がしやすく、1ヵ月後、2ヵ月後の姿も見られるため、担当者の間の話がスムーズにまとまり、今後の対応の調整なども立てやすくなったとする。上武建設では、Smart Contruction Dashboardを以前から導入しており、現場の施工管理、土量管理に活用してきたが、これにSimulationを併用しているという。


事例紹介動画


事例紹介動画


事例紹介動画

 EARTHBRAINによると、Smart Contruction Simulationはプロセスごとの生産性向上に限らず、ダブルハンドリングや手戻りといった課題を解決できる点が特徴であり、シミュレーションを通じて、工事を始める前段階で、計画とどのぐらいのずれが出る可能性があるかを予測し、ギャップを減らしていくことができるとする。

右が小野寺代表取締役社長

 小野寺代表取締役は「日本の建設投資における土木投資は約24兆円ほどで、これを65%程度のコストに下げ、30%の生産性アップにつなげることができれば最低でも5兆円規模の顧客価値が想像できる」とする。

 また、建設業界には2025年に130万人ともいわれる「労働者不足」のほか、「働き方改革」による時間外労働時間の上限規制、高齢化が進む中、少ない若手で変化に対応していかなければならないといった課題があり、こういった改善にもSmart Constructonが価値を提供するとした。

 Smart Construction Simulationの利用料は1ユーザー当たり月額18万円。9月1日~23年3月31日まではキャンペーン期間として、ソフト利用料を無料にするという。

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