世界シェアで同率1位を獲得、SaaSやコンテナにも保護対象を拡大して好調な業績
日本でもシェア首位を狙うVeeam、APJと日本の幹部に聞く成長戦略
2022年08月22日 07時00分更新
Veeam Softwareがデータバックアップの世界シェアトップに“王手”をかけている。IDCによる2021年下半期のデータレプリケーションと保護市場(グローバル)の調査において、Veeamは他のベンダーと「同率1位」の成績を達成した。仮想マシン(VM)だけでなくクラウド、コンテナへと保護対象を拡大し、さらにはSaaSデータのバックアップについても好調だ。
今回はVeeamの今後の成長戦略について、VeeamでAPJ地域を統括するGM兼SVPのシヴァ・ピレイ氏、APJチャネル&クラウドパートナー担当VPのベリンダ・ジュリシック氏、ヴィーム・ソフトウェア(日本法人)執行役員社長の古舘正清氏、同 執行役員副社長 チャネルパートナー統括本部 本部長の大岩憲三氏に話を聞いた。
――Veeamの業績を見ると、APJ地域において2022年第1四半期は前年同期比25%の成長となっています。そうした好調さの背景は?
ピレイ氏:APJ地域のVeeamはグローバル平均を上回るペースで成長している。EMEA(欧州、中東、アフリカ)ではすでにトップシェアを獲得しているが、APJにおいてもトップシェアが射程圏内に入ってきた。
好調さの背景は3つある。1つ目として、APJ地域ではSMBからエンタープライズへとフォーカス市場を拡大していることがある。エンタープライズの要件は企業ごとに異なるため、カスタマーサクセスチームなどサポート部門を中心に強化を進めている。
2つ目は、クラウド/マネージドサービスプロバイダーが自社の顧客にVeeamのデータ保護サービスを提供する「Veeam Cloud & Service Provider(VCSP)」のビジネスも好調だからだ。エンドユーザーはアズ・ア・サービス、直販、アライアンス、クラウドなど、さまざまな方法でVeeamの技術を利用したいと考えており、VCSPはそこで重要な役割を持つ。
3つ目は、ワークロードの種類が変化していることだ。VeeamはAmazon Web Services(AWS)、Google Cloud、Microsoft Azureをサポートしており、さらに「Veeamユニバーサルライセンス(VUL)」という(ライセンスポータビリティの)仕組みにより、データをクラウドに移行したり、クラウドから戻したりできる柔軟さを提供する。企業にとってデータをクラウドに動かすことは大きな課題だが、われわれはそうした顧客の意思決定を支援できる。
コンテナの保護も重要だ。われわれはKasten買収によりコンテナバックアップソリューションの「Kasten K10」を提供しているが、ここにきて顧客の関心が高まっている。物理、仮想、クラウド、そして次はコンテナ――というのが自然な流れであり、Veeamはそれらを1社ですべてサポートできる。
なお、グローバルでは2021年下半期(7月~12月期)、IDCの統計でトップ(Dell Technologies)に大きく肉薄できた。売上高ベースで、トップとのシェアの差は0.3ポイント。前期比(2021年上半期比)で11.3%、前年同期比で14.8%の成長となっている。
われわれは第1四半期、獲得顧客数109%増加など、新規顧客を獲得して成長しているのに対し、他社は旧来の顧客をつなぎとめることでポジションを守ろうとしている。このような違いもあり、2021年上半期比と前年同期比の両方で市場全体の増加率を2~3倍上回る成長を遂げている。
――日本市場における戦略について教えてください。
古舘氏:日本のビジネスは、APJ平均をさらに上回るペースで成長している。
APJ地域全体の戦略とは異なり、日本では最初にエンタープライズ向けのビジネスに注力した。その結果、「Fortune 500」に入る規模の日本企業でも多く採用いただいている。ここが日本市場における成長エンジンになっている。
Veeamを選択いただいている理由は大きく2つあると分析している。
1つ目は「クラウド化」。これまではオンプレミスのバックアップだけをとればよかったが、クラウドのバックアップも必要になったので“ハイブリッド”でデータを管理しなければならない。ここで、Veeamに乗り換えるというお客様がいらっしゃる。
2つ目は「ランサムウェア対策」。BCP(事業継続計画)対策として、ランサムウェア対策が喫緊の課題となっており、ここでもVeeamが選ばれている。
もちろん日本市場でもトップシェアを目指しており、今後はSMB向けにフォーカスしていく方針だ。今年4月にはこの分野で経験豊富な大岩を迎え、さらに取り組みを強化していく体制を整えた。
――SMB領域ではどのような戦略をとるのでしょうか?
大岩氏:SMBは“面”が広いため、ダイレクトアプローチが難しい。そのためパートナービジネスモデルを強化する。ミッドマーケットでは、マネージドパートナーとするSI事業者に対する取り組みを強化していきたい。Veeamベースのソリューションの共同開発なども考えている。
――VCSP事業での取り組みについて教えてください。
ジュリシック氏:インフラ、バックアップ、DR(ディザスタリカバリ)、「Microsoft 365」の保護などを、サービスとして提供したいパートナーを中心に好調を得ている。
多様な顧客ニーズを満たすために、サービスプロバイダーはさまざまなアプローチをとる必要がある。オンプレミス、クラウドを管理するだけでなく、顧客に代わってデータをマネージするサービスへのニーズも増えている。これは、日本でも成長している分野だ。
これまではVeeam製品のリセラー(再販事業者)だったが、今後はサービス事業者として、顧客のバックアップ管理を手掛けようとするパートナーが増えている。一方で、サービスプロバイダとして、再販をしたりパブリック/プライベートクラウドの管理を手がけたりしたいパートナーも増えている。グローバルではこうしたパートナー向けプログラムを「Competency Program」として展開しており、日本では、パートナーがサービスを構築するのをどのように支援するべきかを、大岩さんと話し合いながら進めている。
これまでは単純にバックアップを提供するパートナーが多かったが、グローバルではMicrosoft 365のバックアップ分野などが急成長している。オーストラリア市場では、Microsoft 365のバックアップ・アズ・ア・サービスは75%で成長している。日本でもすでに(パートナーの)KDDIが、VeeamのMicrosoft 365のバックアップサービスを提供している。
――SaaSでは「Microsoft 365」のバックアップが可能で、さらに近日中には「Salesforce」にも対応予定です。グローバルでは好調ですが、日本におけるSaaSバックアップ事業の立ち上がりは?
古舘氏:グローバルの動きから少し遅れたが、日本でも立ち上がり始めたと感じている。グローバルの動きは、欧州におけるデータ管理規制なども追い風になって先行した。日本でも「SaaSにはバックアップが必要」だという認知啓蒙が進んできたので、これから伸びるとみている。