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脳活動の操作でサルのうつ病発症に成功=東北大などが初

2022年08月16日 16時58分更新

文● MIT Technology Review Japan

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東北大学、東京大学、昭和大学の共同研究チームは、サルを使った動物実験で、脳の活動を局所的に操作することで、人工的にうつ病を発症させることに世界で初めて成功。うつ病との関連が疑われていた内側前頭皮質について、その機能不全がうつ病につながること、また、正常な状態では、気分や情動の調節に重要な役割を果たしていることを明らかにした。

東北大学、東京大学、昭和大学の共同研究チームは、サルを使った動物実験で、脳の活動を局所的に操作することで、人工的にうつ病を発症させることに世界で初めて成功。うつ病との関連が疑われていた内側前頭皮質について、その機能不全がうつ病につながること、また、正常な状態では、気分や情動の調節に重要な役割を果たしていることを明らかにした。 研究チームは、ニホンザルを用いて、内側前頭皮質(MFC)腹側部を対象として低頻度の反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)を与えて神経活動を抑制し、一時的な機能障害を引き起こした状態で行動や生理指標の変化を調べた。すると、サルの活動性が著しく低下したり、意欲が減退したりすることがわかった。こうした症状は、MFCの他の領域(背側部、後方部)への低頻度rTMSでは認められなかった。さらに、即効性の抗うつ作用があることで注目されているケタミンを静脈内に投与したところ、MFC腹側部への低頻度rTMSによって生じた主要な症状が、顕著に改善することも確認した。 うつ病の脳内メカニズムの理解や治療薬の開発のためには、病態を的確に再現した動物モデルの作出が極めて重要である。今回、ヒトと同じ霊長類で、脳の構造・機能や認知・情動機能に共通性が高いサルを用いた病態モデルが開発されたことで、うつ病の発症機序や病態の理解、予防や治療法の開発が進む可能性がある。 研究成果は、エクスペリメンタル・ニューロロジー(Experimental Neurology)誌オンライン版に7月7日付けで掲載された

(中條)

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