なぜWebEDIのRPA化は難しいのか

文●ユーザックシステム 編集●アスキー編集部

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本記事はユーザックシステムが提供する「DX GO 日本企業にデジトラを!」に掲載された「なぜWebEDIのRPA化は難しいのか」を再編集したものです。

 RPA(Robotic Process Automation)とは、人が行なうパソコン操作を自動化してくれるソフトウェアのことですが、どのような業務に適しているのか、自社でも導入できるのか、疑問に感じている人も多いのではないでしょうか。業務といっても、個人的な集計業務から受発注や売上に関わる基幹システムまで幅が広く、RPA化の難易度も異なります。そして、ブラウザーを操作する業務、特にWebEDIの操作は難易度が高いといわれています。なぜWebEDIの自動化が難しいのでしょうか。RPA自動化の仕組や、うまくいくWebEDI自動化の方法を解説いたします。

1. RPAはどのようにパソコン操作を自動化するのか

 「パソコンを操作する」とは、キーボードやマウスなどを利用し、人が見てわかりやすく表示された入力フィールドやOKボタンなど、操作対象に対して何らかの指示(入力やクリック)することです。このようなパソコン操作を人と同じように自動化するのがRPAです。自動化する上で重要になるのが操作対象を確実に認識する技術です。人は目で瞬時に認識できますがRPAには目がありません。どのように対象を認識するかというと、主に次の4つの方法で認識します。

1. 画面の座標位置による認識(座標認識)
2. 対象項目を画像で認識(画像認識)
3. キーボード操作を記憶して認識(キーボード認識)
4. 画面の構造を解析して対象項目のタグ情報を認識(タグ認識)

 一般的にRPAが誰でも使えると言われています。それは、比較的開発が簡単な②の画像による認識方法を利用するためです。操作したい対象を範囲選択して画像として登録し、クリックする、データを入力するといった設定が直感的にできるからです。しかしRPAのエラーの多くはこの画像認識はこの方法を利用する場合に多く発生します。ブラウザ操作をともなうWebEDIは特に画像認識が難しいので注意が必要となります。

2. なぜWebEDIはRPA化が難しいのか

 取引先との受発注データをオンラインでやり取りするEDIは、通信手順やファイルレイアウトなどあらかじめ決められた仕様に基づき、お互いにシステムを構築する必要があります。コンピューター同士をつなぎ、スケジュール設定などで人が介在せずに一連の処理が自動化できるというメリットがある反面、EDIの対象企業が増えるごとにシステムの開発コストやメンテナンスが発生するというデメリットもあります。

 一方WebEDIはインターネット環境があれば、取引先に負担をかけずに始められます。ブラウザー操作は人が行なう必要がありますが、RPAで自動化することで効率化が可能となります。しかし、ブラウザー操作の自動化を画像認識でおこなう場合、下記の状況ではうまく認識できずにエラーになることがあります。

<画像認識を利用したRPAのエラーの原因>

・開発時と実行時の画面の解像度が異なる場合
・画面をスクロールしないと対象画像が表示されない場合
・対象画像の色やテキストが変化している場合
・似た画像が同一画面に複数存在する場合

 ウィンドウが縮小され、対象画像が隠れてしまう場合 など

 これらは、あらかじめ登録された画像が見つからないか、間違った画像を認識してしまうという現象です。画像認識による開発は簡単であるというのがメリットですが、上記のような認識にミスが発生しやすいというデメリットもよく理解しておきましょう。

 また、取引先の都合で新たなメニューや項目の追加など画面仕様が突然変更されることがあります。人はその都度、画面変化に対応して操作できますが、RPAはその変化に対応しにくいのです。

3. WebEDIを確実に自動化するには

 それでは、どうすればWebEDIを確実に自動化できるのでしょうか。これはWebEDIなどブラウザー操作に限りませんが、操作対象の認識方法を画像認識ではなくタグ認識で行なうこと。これが一番確実です。タグ認識は、画面の構成要素を解析し、各要素のタグ情報を識別して操作対象を特定する方法です。

 画面にあるすべての項目には内部的に項目の番号(ID)や項目名(name)といった属性情報(タグ情報)をもっています。画面レイアウトが変化してもタグ情報が変わらなければ認識できますし、スクロールしないと表示されない項目も認識できます。もちろん、画面の解像度による影響も受けないため、確実な操作がおこなえます。見た目の画像ではなく、タグ情報で項目を識別する方がより確実であることはおわかりいただけたでしょうか。

 ではどうやってタグ情報を確認できるのか。開発経験のない人にはタグ情報といってもピンとこない人も多いでしょう。ブラウザの場合はソースを表示すれば、htmlで書かれたコードが確認できます。しかし、それを見たところでどこに何があるかわからず、手に負えないという人も多いでしょう。RPAによる自動化を確実にしたい場合は、ある程度スキルのある人が開発する必要があると言わざるを得ません。

 一般の人がタグ認識で開発したい場合は、タグ情報を手軽に確認できるツールを選ぶと良いでしょう。Autoジョブ名人にはダグ解析ビューアが搭載されており、指定した項目のタグ情報をわかりやすく表示してくれます。こういったタグ情報を簡単に確認できるRPAツールであれば、タグ認識による開発が比較的容易になります。

 ここまで操作対象の認識の難しさとその対応方法について説明してきましたが、WebEDIの自動化に大切な点は他にもあります。スケジューラーとデータ変換です。

 WebEDIからのデータダウンロードは毎日決まった時間に処理する必要があります。その後の在庫引き当てや出荷指示など、一連のプロセスが待ち構えています。ダウンロードの漏れやミスがあると、出荷できない事態となり大問題にも発展します。そこでRPAはスケジュールを組んで確実に実行することが求められます

 しかし、多くのRPAにはスケジューラー機能はありません。運用管理サービスなど高機能なオプション契約をすれば別ですが、Windowsに標準で提供されているタスクスケジューラーを用いるのが一般的ではないでしょうか。そこで注意しなければならないのが処理の重複です。タスクスケジューラーは処理時間が重なるとエラーになります。Autoジョブ名人のようにスケジュール実行機能を搭載したツールもありますので、自社の運用にあったスケジュール実行方法を選定しましょう。

 そして最後のポイントがデータ受信後のデータ変換です。WebEDIは処理するデータ件数が多いため、EXCELによるデータ変換はお勧めしません。時間がかかるだけでなく、変換ミスも起きやすいため、確実にデータ変換できるプログラムや変換ツールを使いましょう。なにがなんでもRPAで処理するという考えは、見直したほうが良いかもしれません。

4. まとめ

 WebEDIの操作をRPAで確実に自動化するポイントはつぎの3点です。

・画像認識ではなくタグ認識で開発する
・確実に処理できるスケジュール機能を選定する
・データ変換はEXCELに頼らず、プログラムや変換ツールを利用する

 RPAツールの選択や導入体制の検討時、初期の開発のしやすさだけで判断せず、安定した自動化の開発ができるかどうか、大量データの繰り返し処理やエラー時のシナリオ設計など、稼働後の運用面も含めた検討をしていくと良いでしょう。

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