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第7回 大河原克行の「2020年代の次世代コンピューティング最前線」

富士通の転換期。2030年メインフレーム終息を見据え、動きを見せるデジタルアニーラや量子シミュレータ活用

文●大河原克行

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 スーパーコンピュータ「富岳」などの開発実績を持つ富士通は、量子コンピューティング分野にも積極的な投資を行っている。

 なかでも、富士通が得意としているのは、量子インスパアード技術であるデジタルアニーラである。CMOS回路を使ったイジングマシン方式によって開発したデジタルアニーラにより、組み合わせ最適化問題に特化した用途で実用化。2018年の市場導入を開始して以降、クラウドサービスを通じた契約数は国内で131件、海外では55件に達しており、「製造、金融、配送計画など、多くの分野でビジネス適用されている」という。

 組み合わせ最適化問題とは、複数の項目を組み合わせた結果をもとに、そのなかから、最適な組み合わせを導き出すものだ。簡単な組み合わせ問題であればいいが、この組み合わせが膨大になると、従来のコンピュータでは、総当たりで解くため、膨大な時間がかかり、結果が出せないという課題があった。デジタルアニーラはそれを解決することができる。

 事例としてよく用いられるのが、「巡回セールスマン問題」である。「セールスマンが複数の場所を訪問する際に移動距離を最短にするルートはどれか」という問題の結果を計算するものであり、5カ所ならば120通りの組み合わせで済むが、32都市になると、263×10の33乗という膨大な数になってしまう。さらに、この作業を複数のセールスマンが分担するとなると、計算は指数関数的に複雑になる。デジタルアニーラでは、総当たりで解くのではなく、高速に全体を見て、あたりをつけてから絞り込み、最も安定した最適解を導きだすことができる。

 デジタルアニーラの名称は、金属加工で用いられる「アニーリング(焼きなまし)」に由来する。「焼きなまし」とは、金属を加熱してから徐々に落ち着かせることで安定した状態にすることだ。組み合わせ最適化問題におけるアニーリングとは、パラメータを変化させて、最終的に最も安定した状態になったものを最適解として提示する手法を指したものとなる。

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