このページの本文へ

モーダル小嶋のTOKYO男子めし 第68回

グランドメニュー入りおめでとう:

松屋「ごろごろ煮込みチキンカレー」レギュラー化 ごろチキがある日常を生きろ

2022年05月02日 17時00分更新

文● モーダル小嶋 編集●ASCII

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

「ごろごろ煮込みチキンカレー」
松屋
630円
5月2日発売 ※グランドメニュー化
https://www.matsuyafoods.co.jp/matsuya/news_lp/220502.html

ごろごろ煮込みチキンカレーがあるとき〜、ないとき〜

 1986年生まれの筆者は、生まれてすぐにバブルが崩壊し、さまざまな事件が発生する混乱の中で、「終わりなき日常」と言われるなどした混沌の世紀末を生き延びたと思えば、今度は「失われた30年」などと言われ、「生まれてからの時間、ほとんど失われてるじゃん」と苦笑いする世代に属します。

 そんな筆者も「あなたの・好きな・コンピューター・一緒に・いいことしましょう(ASCII)」のアスキー編集部で、アスキーグルメというコンピューター要素がほとんどない部門をメインに活動するようになりました。このように、生きていると不思議なめぐり合わせがありますので、この春から社会人になって不安なみなさんも、それなりに鷹揚に構えているとよいのではないでしょうか。

 刺激的な情報にあふれた現代社会では、グルメもその例外ではなく、ネット上には「白米が秒で消える!」とか「他のところでは食べられなくなる!」とか「正直〇〇の店より美味い!」などという言葉が無数に踊っています。

 それなりにグルメ情報に目を通している筆者ですが、主食が秒で消えるほどのスピードで食事をしたことはありませんし、どんな好きなものでも違うお店で食べたいと思うことはありますし、「〇〇の店より美味い」は時と場合によって失礼なのではないか、なぜ自分のレシピを称揚するために他を下げるのか……などと考えてしまいます。

 煽り文句にマジレスしてどうする、と思われるかもしれません。しかし、日常の中からどうしても切り離せない「食」に関しては、ちょっとぐらいマジメになったとしてもいいでしょう。筆者の場合、そのジャンルで仕事をしていることもありますし……。

 さて、松屋は5月2日からグランドメニューを刷新します。新たに「ごろごろ煮込みチキンカレー」「たっぷりシャリアピンソースのチキンソテー」「ネギ塩チキングリル」をグランドメニューとして販売します。

 中でも、以前から人気の高いメニューだったごろごろ煮込みチキンカレーが、ついにグランドメニュー入り、“レギュラー化”したことは、ネットでも大きな話題になっています。さらに、かつての販売時より並盛のカレーソースを増量したとのこと。

 一方、2019年12月から、「オリジナルカレー」から変更した「創業ビーフカレー」が販売されていたものの、そちらは終売となり、5月2日からは、オリジナルカレーが再度グランドメニュー入りとなります。

 さらに、たっぷりシャリアピンソースのチキンソテー、ネギ塩チキングリル定食もグランドメニューとなりました。定食・ライスセット・朝定食のライスについては、小盛、並盛、大盛、特盛の選べる4サイズをワンプライスで提供。実質ライス大盛、特盛へのサイズ変更が無料となっています。

グランドメニュー化した商品
・「ごろごろ煮込みチキンカレー」             :630円(大盛 730円)
・「たっぷりシャリアピンソースのチキンソテー定食     :730円(W 1130円)
・「たっぷりシャリアピンソースのチキンソテーライスセット」:670円(W 1070円)
・「ネギ塩チキングリル定食」               :730円(W 1130円)
・「ネギ塩チキングリルライスセット」           :670円(W 1070円)
・「オリジナルカレー」                  :480円(大盛 540円)
 ※持ち帰り可能
 ※持ち帰りみそ汁は別途60円

ごろチキの魅力とは「コスパ」である

並盛のカレーソースが増量されたとはいうけれど、以前の量と比較しようがないのでなかなかわかりにくいかもしれない

 ごろごろ煮込みチキンカレーのレギュラー化については、筆者としても、「ついに……」「やっと……」と、深く感じ入るものがあります。

券売機にさえ「おかえり!!」と表示されるごろごろ煮込みチキンカレー

 前身である「ごろごろチキンカレー」がデビューしたのは2016年。松屋のカレーに、鉄板で焼いたチキンを入れたというだけのメニューでしたが、それがよかった。スパイシーで濃いめのカレーに、淡白な味わいのチキンは、組み合わせとして最高だったのです。

 そのごろごろチキンカレーが、唐突に「煮込み」要素をプラスされて再登場したときは驚きました。当時の松屋のリリースには「数種類のスパイスが配合されたすっきりとした味わいの松屋オリジナルカレーに、鉄板でジューシーに焼き上げた鶏もも肉をプラスした」とありまして、「結局、なにをどうやって煮込んだのか?」という答えがなく、うろたえたものです。

 とはいえ、実態のわからない“煮込み”という魔術的な過程を経て進化した(と思いたい)、ごろごろ煮込みチキンカレーはすごかった。ほんとうにすごかった。編集部に毎日通っていた頃は(コロナ禍のせいで、それも昔の話になっているのが、なんとも隔世の感があります)、大げさではなく、週に4回は松屋に行って食べていたほど。

 筆者のごろごろ煮込みチキンカレーへの偏愛は、過去記事を読んでいただくとして(「松屋『ごろごろ煮込みチキンカレー』との長いお別れ」)、ついに2022年、ようやく、レギュラー化し、「日常」になったのです。

松屋の定番となった「ごろごろ」サイズのチキン

 そもそも、ごろごろ煮込みチキンカレーの魅力とはなんでしょうか? とてもシンプルに言えば、「コスパ」だと思います。

 コスパとはもちろんコストパフォーマンスなのですけれども、単純に630円だからどう……というのではなくて、「店舗の多い松屋で、入ったらすぐに、それなりの量の鶏肉が入ったクオリティーのあるカレーが出てくる」というのがポイントなのでありまして。

これより「おいしい」と感じるカレーがないわけではないが……

 松屋のカレー(オリジナルカレー)は、一言でいえばスパイシー。めちゃくちゃ辛いわけではないですが、辛味がシンプルに舌に来る感じ。にんにくの刺激もあり、タマネギなどを入れてはいるものの、甘味で味を抑え込んでいるような、隠しきれないワイルドさがありました。個性があるとも言えるのですが、「ちょっと、とげとげしいかな」と思わなくもなかった。

 そこにチキンを大量に入れることで、刺激強め、辛めのカレーが、あっさりした味わいの鶏肉とよくなじみ、荒っぽさが絶妙に中和されていたのです。

 まあ、「オリジナルカレーに鶏肉を入れただけじゃん」と言われると反論はむずかしいのですが、偶然にしてはできすぎている、という表現はこのカレーのためにあるのでは……と思うほど、しっくりくる組み合わせでした。

 昭和生まれの筆者らしく野球で例えると、球速は出るがコントロールに難のある投手が、ゾーン内で動かすカットボールを身に付けたことで、荒れ気味のストレートも有効に機能するようになりつつ、四球でランナーを出してもカットボールで併殺を狙えるようにもなり、元の性格が変わらないままレベルアップした、みたいな感じでしょうか。ぜんぜんわからないですよね。ごめんなさい。

 正直に言えば、これよりレベルの高いカレーもあると思います。ただ、「チェーン店で630円でこのカレー」と考えると、話がだいぶ変わってくる。

すぐに出てくるというのもポイントが高い

 たとえば、とてもおいしいカレーがあるとして、食べに行くのに家から車で30分ぐらいかかるとか、価格が1500円ぐらいするとかになってくると、「日常的に」食べられるかどうかは、むずかしい話。しかし、松屋で、しかも630円ですぐに食べられるとなると、これは日常的に食べられるものである……と言ってよいと思います。

 つまり、630円という価格面のコストだけではなく、移動や提供時にかかる時間のコストであるとか、選択に悩む際のコストであるとか、そういうことを考慮した上での総合的な「コスパ」がすぐれている、と訴えたいわけです。

 ごろごろ煮込みチキンカレーが日常にあるということは、単純に、毎日のように食べる……というだけではない。毎日、任意のタイミングで、それが食べられる環境にある、ということでもあるのです。そして、それがしっかりしたクオリティーのあるカレーなのですから、文句のつけようがない。

創業ビーフカレーにさようなら

 一方で、創業ビーフカレーが終売となったのは、ちょっとショックでもあります。2019年に登場した創業ビーフカレーは、発売と同時にオリジナルカレー(390円)が終売したこともあり、しかも創業ビーフカレー(490円)のほうが100円高かったので、当時の価格で「カレーの実質値上げ(390円→490円)では」と言われたものです。

創業ビーフカレー。捨てがたい魅力があった

 しかし、カレーとしての性質はまったく似て非なるものであり、スパイシーで刺激が強く濃い目の味わいになっていたオリジナルカレーと、欧風カレーの風情でコクを堪能させる創業ビーフカレーは、大きく異なるものでした。

 まあ、別物であるからこそ、つまり単なる値上げではないからこそ、話はややこしかったのですが……。3年前、そのことについても筆者は書いていました(「松屋『創業ビーフカレー』100円高くなったが“実質値上げ”ではない」)。松屋のカレーばっかり食べてるな、こいつ。

こちらはオリジナルカレー。今となっては「ごろごろ煮込みチキンカレーからチキンを抜いたやつ」と思われているかもしれない

 そういったわけで、ごろごろ煮込みチキンカレー(オリジナルカレー)がレギュラー化されたのは喜ばしいのですが、創業ビーフカレーが消えるのは、それはそれで寂しいものがあります。

 あと、気になるのが、オリジナルカレーが2019年に終売したときは390円だったのですが、今回の再登場で「480円」になっていることです。

 創業ビーフカレーの登場時は「実質値上げか、否か」という話だったのに、今回は、ただ単に値上げでは……? いや、創業ビーフカレーから変更になったから、値上げでもないのか……? かつて販売されていたオリジナルカレーから、量の変わっていたり、食材がリニューアルされていたりすることもあり得るので、一概には言えませんが……。

 就職、結婚、引っ越し……我々の生活と同じように、松屋の中の日常が変わって、得るものもあれば、失うものもあるということでしょうか。無いものを嘆いてもしょうがないので、今はごろごろ煮込みチキンカレーがある日常を尊ぶべきなのかもしれません。

真摯にごろごろ煮込みチキンカレーと向き合いたい

ごろごろ煮込みチキンカレーは新鮮な限定メニューではなく、「松屋で食べる、いつもの味」になった

 前述したように今のネットやメディアには過剰な言葉が氾濫しており、松屋のごろごろ煮込みチキンカレーとてその例外ではなく、言い過ぎではと思うほどの称賛の声も散見されるばかりか、松屋の公式さえも「祝! 毎日ごろチキが食べられる日々!!!」などと書いております。「!」が3つ付いているのですから。

 でも、「毎日、それがある日々」というのは、もっと地味で、ささやかで、だからこそありがたいのではないでしょうか?

 たとえば、誰かを愛して一緒に暮らすとして、「自分のパートナーはなんてすばらしいんだ」と外部に言うことは、尊い行為でしょう。ただ、毎日のように、そして必要以上に叫んでまわるとなると、どうでしょうか。「ほんとうにそう思っているのか?」「そう感じていないからこそ、外に喧伝しているのではないか?」などといぶかしむ人もいるかもしれません。

 日々の中で、相手を大切にし、感謝を伝え、互いにコミュニケーションを取り、そんな日常がある現在(いま)を大事に思うこと。そういったことが、重要ではないかしら。

松屋のみそ汁はリニューアルしてやや甘さが出たため、味が濃いおかずとケンカしにくい味になったと思います。そういうところに気付けるかどうかが、幸せな日常を維持するために必要なのです。たぶん……

 たとえば、好きな料理やメニューを評価するときに、「365日、3食これでもいい」と主張する人がいると、「嘘ではないかしら」と思ってしまいます。初手でいきなり王手をかけたと言い張るような文章の流れで恐縮ですが、どうしても多少は疑ってしまうのです。

 筆者には、ごろごろ煮込みチキンカレーのほかにも、おいしいと思うもの、食べたいもの、いろいろあります。だけれども、時にはメニューが決まらないこともあるし、手早く外食で済ませてから用事に向かうこともある。そういうときに、松屋に行き、ついついごろごろ煮込みチキンカレーを選んでしまう。それが、自分にとっての日常です。

 「365日、3食これでもいい」と記事に書いておきながら、翌日の朝には素知らぬ顔で、さっそく別のものを食べている……なんて不誠実な真似はしません。真摯にごろごろ煮込みチキンカレーと向き合いたい。仕事でもありますから、食に対しては、やっぱりちょっとマジレス気味になってしまうのです。

ごろごろ煮込みチキンカレーが食べられる日常に感謝し、それを守りたいと思う

 「レギュラー化は超嬉しい!! 松屋は神!!」みたいなテンションで、ごろごろ煮込みチキンカレーについての文章を書くのは、やはり、嘘をつくことになりかねない。神様がいるとするなら、そして、神様がごろごろ煮込みチキンカレーの創造に関わっているとするなら、我々は松屋に感謝するとともに、松屋に行けてごろごろ煮込みチキンカレーが食べられる「日常が在ること」そのものに対して、神様に感謝することが大切なように思われるのです。

 なにはともあれ、松屋に行けば、いつでもごろごろ煮込みチキンカレーが食べられるようになりました。この松屋の判断には、素直に感謝するべきでしょう。この気持ちを今あえて言葉にするなら……「ありがとう」……かな? また、足しげく通いたいと思います。


モーダル小嶋

 

1986年生まれ。担当分野は「なるべく広く」のオールドルーキー。編集部では若手ともベテランともいえない微妙な位置。一人めし連載「モーダル小嶋のTOKYO男子めし」もよろしくお願い申し上げます。

■関連サイト


■「アスキーグルメ」やってます

 アスキーでは楽しいグルメ情報を配信しています。新発売のグルメネタ、オトクなキャンペーン、食いしんぼ記者の食レポなどなど。コチラのページにグルメ記事がまとまっています。ぜひ見てくださいね!

 ご意見、要望、ネタ提供などはアスキーグルメ公式Twitterまで
アスキーグルメ (@ascii_gourmet)

カテゴリートップへ

この連載の記事
もぐもぐ動画配信中!
アスキーグルメ 最新連載・特集一覧