世の中にはタフ仕様のスマートフォンが売られていますが、どんなに強固な製品であっても使えない場所があります。それは粉塵の発生するところや化学品を扱う現場です。鉱山やガスプラント、石油コンビナートなどにスマートフォンを持ち込むと、気化した溶剤やガスなどがスマートフォンから発生する静電気に引火し、発火や爆発を引き起こす危険性を持っているのです。ちなみに筆者は新卒後に就職し最初に配属になった職場が化学プラントで、工場内で使う無線装置などはすべて防爆仕様でした。
このように特定の現場では防爆仕様の電子機器を使う必要がありますが、完全防爆のスマートフォンも実際に販売されています。ただし、一般消費者向けではありませんから家電量販店では売っていませんし、価格も数十万円と気軽に買える製品ではありません。しかし、そんな防爆スマートフォンの中にはデザインがカッコいいものもあるのです。
Bartec Pixaviが2016年頃に発売した「Impact X NC」は、金属ボディーの本体デザインが今見ても十分クールと思えるかっこよさ。コンシューマー向けの製品ではないためどのようなルートでいつごろ発売になったかはわかりません。しかも、残念ながら現在すでに生産が終了してしまい、販売も終わっています。同社の現行防爆スマートフォンはよくあるタフネススマートフォンと同じような硬質樹脂で覆われたボディーの製品になっています。
Impact X NCの主なスペックは、ディスプレーが4.3型(800x480ドット)、バッテリーは3000mAhで外部端子はmicroUSB、通信方式は3G/4Gに対応します。チップセットは不明、OSはAndroid 5.1です。そして背面を見るとわかるように、カメラは非搭載。工場などではセキュリティーを高めているからでしょう。ディスプレー表面は2mm厚のゴリラガラスで覆われ、本体は2mの落下からの衝撃にも耐えられます。防水防塵はIP68に対応。グローブをしていても操作しやすいようにホームボタン類はディスプレー下部に物理ボタンとして配置されています。
タフネススマートフォンにもないのが防爆への対応で、防爆関係の認証を正式に取得しています。なお、製品の開発には石油会社なども関与しているとのこと。CSA、IECEx、ATEXなど、普段は聞いたこともない防爆関係の各種承認・認証がこのスマートフォンの最大の特徴になっています。
ではこの手の防爆製品は実際にどのような場所で求められているのでしょうか。
・自動車の給油所またはガソリンスタンド
・石油精製所、リグ、処理プラント
・化学処理プラント
・印刷業、紙および繊維
・病院の手術室
・製薬業界
・航空機の給油と格納庫
・表面コーティング産業
・地下の採炭
・下水処理場
・ガスパイプラインと配送センター
・穀物の取り扱いと保管
・木工エリア
・製糖所
・金属表面研削、特にアルミニウムの粉塵と粒子
特殊な現場ばかりですが、印刷業や木工、金属研磨など身近な業界でも防爆仕様の製品が必要とされています。
実際にこのような現場でスマートフォンを使う機会は滅多にないでしょう。とはいえ、Impact X NCのアルミを使ったデザインはコンシューマー向け製品として今でも通用しそうです。中古品でもいいので一度手に取って使ってみたいものです。
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