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高度なコンピューティング技術とソフトウェア技術を「誰もが容易に利用できるサービス群」として提供

「富岳」のHPC技術をクラウド利用可能に、富士通「Fujitsu CaaS」発表

2022年04月07日 07時00分更新

文● 大河原克行 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

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 富士通は2022年4月6日、スーパーコンピュータ「富岳」やデジタルアニーラなどの高度なコンピューティング技術と、AIなどのソフトウェア技術で構成するサービス群を体系化した「Fujitsu Computing as a Service(CaaS)」を発表した。第一弾サービスとして「Fujitsu クラウドサービス HPC」の一般提供を開始している。

「Fujitsu Computing as a Service」の全体像

富士通 執行役員 SEVP CTOのヴィヴェック・マハジャン氏、富士通 執行役員 EVPの高橋美波氏

高度な最新技術を、導入/運用負荷なしで利用可能に

 Fujitsu Computing as a Serviceは、同社の事業ブランド「Fujitsu Uvance(ユーバンス)」を体現するクラウドサービスラインアップと位置づけられるもの。各種コンピューティング技術と、その上で動作するソフトウェアやサービス連携基盤、コンサルティングやチューニングサービスを組み合わせ、シームレスに連携するクラウドサービスとして提供する。

 これにより、導入や運用の負荷軽減と同時に高度な最新技術の利用が可能となり、金融や製造、流通、物流、地震や津波予測などの防災、創薬や遺伝子治療といった医療分野など、幅広い分野における課題解決に貢献できるとしている。

 富士通 執行役員 SEVP CTOのヴィヴェック・マハジャン氏は、「CaaSは、2021年から検討を進めてきたサービス。課題解決に向けて、ベストなコンピューティングパワーを使いたいといったニーズに対応できる」と説明する。

 「AWSやAzureを通じて、古典コンピューティングと量子コンピューティングをトータルソリューシュンとして提供できるのが特徴だ。富士通は、コンピューティングにおけるリーダーシップを目指す。他社製も含めたメインフレームやUNIXサーバーのワークロードも、このCaaSで取り込みたい。同時に、一般企業が課題解決のためにHPCなどを自由に利用できる“コンピューティングの民主化”を図りたい」(マハジャン氏)

富士通のCaaSが目指すサービスビジョン

 同サービスの第1弾として、スーパーコンピュータ「FUJITSU Supercomputer PRIMEHPC FX1000」をクラウド型で提供する「Fujitsu クラウドサービス HPC」を4月6日から、一般企業や団体向けに販売開始する。

 さらに10月からは、「デジタルアニーラ」やAIのクラウドサービスもCaaSサービス群として、国内市場を対象に順次販売開始。それぞれのサービスをシームレスに連携させた、付加価値の高いサービスを提供していくという。

 来年度(2023年度)以降も、ソフトウェアサービスの拡充、グローバル展開のほか、膨大なデータのデジタル化とセキュアな通信網(5G/Beyond 5G)を通じたデータ基盤への集約を推進していく。将来的には、量子コンピュータも含む最先端テクノロジーを活用し、リアルタイムに処理できるようにするとしている。

今後のロードマップ

 富士通 執行役員EVPの高橋美波氏は、「個別のサービスを意識することなく、高度な最新技術を利用できるのがCaaSの特徴」だと述べた。

 「金融、製造、流通、物流、創薬、遺伝子治療など、さまざまな領域で活用してもらえるだろう。また、これらの成果をもとに業種ごとにリファレンスを作り、ソフトウェアライブラリ化し、容易に横展開ができるようにしたい。いまは、各業種において最大の効果が発揮できるようにチューニングを行っている段階である。ソリューション化することで汎用性を高めたい。社会課題解決の実践ノウハウを、CaaSにソフトウェアとして追加し、拡張し、価値を提供していくことにより、CaaSの民主化を図ることができる」(高橋氏)

 なお高橋氏は「2022年度の販売目標は設定しない。まずは多様な業種の企業に活用してもらうことを目指す」と述べた。CaaS市場は2025年度に全世界で1兆円規模になると見込まれており、富士通として一定のシェア獲得を図る。加えて、将来的にはパートナー連携などの幅広い販売体制も構築したいと語った。

富岳の技術も利用できる「Fujitsu クラウドサービス HPC」

 第1弾として提供されるFujitsu クラウドサービス HPCは、PRIMEHPC FX1000のコンピューティングリソースをクラウドサービスとして提供するもの。それに加えて、HPC導入において課題となるソフトウェアやライブラリの標準搭載、性能チューニングやアプリ分析といった作業が選択できる運用サポートの提供など、利用者が研究や解析に専念できるよう支援する。

 HPC環境を構成するコンピュートノード、ログインノード、ジョブスケジューラ、ストレージ、アプリケーションソフトウェアをあらかじめセットアップして提供されるため、ユーザー自身で環境構築作業を行う必要がなく、解析に必要なデータを用意するだけで、必要な時に必要な分だけ利用できる。また、富岳が搭載するCPU「A64FX」やジョブスケジューラ、ファイルシステム、コンパイラ、アプリケーションソフトウェア、APIが利用できるため、富岳で得られた研究成果も適用しやすい。将来的に富岳を活用した大規模解析/研究を見据えている場合にも、同じ操作性で富岳が利用できるメリットがある。

「FujitsuクラウドサービスHPC」の概要と特徴

 高橋氏は、HPCを自社環境に設置する場合は、多額の初期費用と長いリードタイムが必要になるうえ、リソースの見積もりも困難だと指摘。FujitsuクラウドサービスHPCの利用によって、必要なタイミングで必要なだけコンピューティングパワーを使うことができ、「シミュレーション実行環境の整備やプログラムのチューニングを行うための技術者確保/育成が困難という課題も解決できる」(高橋氏)と説明した。

 HPCノードの利用については、利用規模に応じて月額5万円/50万円/100万円という3つの形態を用意している(いずれも税抜価格)。このほかにストレージ、ルーター、データ通信費用が必要となり、これらを含めた必要最低限の構成で「月額10万円から」としている。

創薬、物流、金融など幅広い業種での活用に期待

 CaaSの活用を想定した具体的な事例として、まずは創薬分野の取り組みが紹介された。富士通がペプチドリームと共同研究を行っている中分子創薬の計算では、デジタルアニーラとHPCのハイブリッドコンピューティングを活用して、組み合わせ最適化を高速に解くことで、創薬にかかる時間を短縮。創薬の候補化合物となるペプチドの安定構造探索を、12時間以内に高精度で実現できるという。

 また物流分野においては、デジタルアニーラを活用した輸送ポイントの最適化と、HPCを利用した高度な分析による配送ルートの最適化などにより、輸送コストの削減やドライバー不足への対応、CO2排出量の削減などが可能になるという。

 「CaaSは、さまざまな分野での課題解決に貢献できると考えている。製造業向けの設計最適化のほか、都市計画における環境変動や人口動態を活用した大規模シミュレーション、マクロ経済の動きを捉えた調達の最適化といったサプライチェーン全体の高度化やリスク回避、フードロス削減などが可能になる」(高橋氏)

 発表会では、富岳を導入している理化学研究所 計算科学研究センター センター長の松岡聡氏がビデオメッセージで登場。「富士通のCaaSでは、富岳と互換性が高いプラットフォームが提供される。これは、富岳のテクノロジーが普及していく上では重要なステップとなる。富士通などとの連携により、富岳の産業利用が広がり、インターオペラビリティがリッチになっていくことも期待している」(松岡氏)。

理化学研究所 計算科学研究センター センター長の松岡聡氏

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