末岡洋子の海外モバイルビジネス最新情勢 第291回
当初予想より弱含みのスマホ市場もアップルの好調目立つ 2021年Q4はiPhone 13でシェアトップ奪回
2022年02月12日 12時00分更新
調査会社から2021年のスマートフォン市場の成績表ともいえるデータが出ている。コロナ禍2年目で回復が期待された2022年だが、フタを開けてみると予想を下回った。そんな中で好調なのがアップルだ。
アップルが2021年Q4のスマートフォンシェアトップに
部材不足とコロナ禍の影響で、スマートフォンメーカーにとって緊急モードが続いている。2021年のスマホ市場は、前半こそ主要先進国を中心にワクチン接種が進んだことなどから好調なスタートだったが、結果としては予想に達しなかった。
調査会社のCanalysは2021年6月に、2021年は前年比12%増で成長するという予想を出したが、今年1月末に発表した世界スマートフォン市場レポートによると前年比の成長率は7%増に止まった。それでも、コロナ禍以前のレベルには戻っているという。その際に課題となっているのが部材不足だ。需要が供給を上回った状態にも関わらず、特にエントリーレベルの4Gチップセットなどが不足しているとする。
Q4のシェアは、アップルが新型iPhoneを発表することなどで強くなるが、これについては2021年も同じ。アップルは23%のシェアを占めてトップとなった。iPhone 13の需要が強かったのが勝因だ。特に中国でiPhone 13は好調で、ファーウェイの勢いが衰えていることも加わった。中国では6年ぶりに首位についたとCounterpointでは報告している。
欧州でも2021年1月を最後にサムスンにシェア1位を奪われていたが、12月に奪回している。欧州もファーウェイが強かった市場なので、それが多少なりとも影響しているようだ。
世界ベースでは、サムスン、ファーウェイ、OPPO、Vivoと続く。2021年通年ではサムスンが1位。Counterpointのデータでは、サムスンのシェアは32%と2位のアップルとは6ポイントの差をつけている。
アップルは2021年の半導体消費においてもトップ
それにしても半導体が需要に追いつかない状況が続いている。Gartnerが発表した2021年の半導体消費調査では、アップルは11.7%のシェアを占めてトップの半導体消費メーカーとなっている。ある半導体企業に勤務する知人は「社内で営業担当が自分の顧客のために取り合っている」と苦笑していたが、アップルは早期確保に成功しているのだろう。独自設計のノウハウを蓄積していた「読み」も見事だ。アップル、そして2位のサムスンは、2011年以降、2社で上位2社を占めているGartnerは記している。
アップルの2021年第4四半期業績は非常に好調だった。iPhoneは同期に716億ドル(約8兆3000億円)を売り上げた。これは前年同期から9%の伸びだ。
スマホの話からそれるが、アップルの決算ではiPadの売上が大きく落ち込んだこと、一方でサービスの売上が前年同期比24%増(195億ドル)だった点も注目だ。春にはiPhone SEの新型のウワサもあるし、米国ではiPhoneを決済端末として使う「Tap to Pay」をアップルが発表するなど、勢いが止まらないといったところだろうか。

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