日本を代表するスーパーコンピュータ「富岳」に対して、「八ヶ岳」と呼ばれるスーパーコンピュータがあることは、あまり知られていない。
それも当然だ。これは正式名称ではなく、スパコン界の関係者が使っている名称だからだ。そして、八ヶ岳が特定の山を指した名称ではないのと同じく、スパコンの八ヶ岳も特定のスパコンを指したものではない。
日本のスパコンには、フラッグシップマシンとして富岳が存在しているが、その下の「第二階層」として、複数のスーパーコンピュータが存在している。第二階層を構成するのは、東京大学や京都大学、東京工業大学、東北大学、九州大学といった9つの国立大学のほか、海洋研究開発機構(JAMSTEC)と数理研究所(ISM)の2つの国立研究開発法人が所有しているスパコンである。これが「八ヶ岳」である。
2008年までは、それぞれのセンターが、それぞれにスーパーコンピュータを調達し、独立したプログラムで動かしていたが、スーパーコンピュータ「京」の誕生をきっかけに、京と第2階層のスーパーコンピュータ群によって、日本全体を結んだHPCI(ハイパフォーマンス・コンピューティング・インフラ)を形成し、高速ネットワークで結んだ共用が開始されてきた。
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