性能の高さと汎用性の広がりは、スーパーコンピュータ「富岳」の大きな特徴となる。
それを証明するように、富岳を用いた「新型コロナウイルスの飛沫・エアロゾル拡散モデルシミュレーション」が、2021年ゴードン・ベル賞COVID-19研究特別賞を受賞した。
ゴードン・ベル賞は、スーパーコンピュータを用いた科学技術分野の研究のなかで、その年に最も顕著と認められた研究に対して、米国計算機学会(ACM)が授与する賞である。
「スパコンのノーベル賞」と言われたり、個人や機器ではなく、アプリケーションを対象にしていることから、スパコン界における「アカデミー賞最優秀作品賞」と表現されることもある。
富岳の「新型コロナウイルスの飛沫・エアロゾル拡散モデルシミュレーション」が獲得した「COVID-19研究特別賞」は、2020年から設けられたものであり、通常のゴードン・ベル賞に対してグレードが低く感じられるが、自らもゴードン・ベル賞の審査委員長を務めた経験がある理化学研究所 計算科学研究センターの松岡聡センター長は、「特別賞ではあるが、通常のゴードン・ベル賞に比べてグレードが低いというものではない。新型コロナウイルス対策に限定していながらも、審査基準やファナリストリストの数も変わらない。2つの賞は、同じグレードで用意されたものである」とする。
そして、「TOP500のように、ベンチマークの性能が優れているだけでなく、富岳の総合力が評価された。アプリケーションファーストという富岳の方向性が正しいことが証明され、それを国民に報告できた。スパコンにとっては最高峰の賞であり、名誉なことである」と述べた。
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