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末岡洋子の海外モバイルビジネス最新情勢 第287回

アップルが米国でiPhoneのセルフ修理サービスを発表 「修理する権利」を求める動きが活発に

2021年12月03日 12時00分更新

文● 末岡洋子 編集● ASCII

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 アップルは11月、米国で「Self Service Repair」なるものをアナウンスした。iPhoneを自分で修理できるプログラムだという。聞こえはいいが、果たしてどのような内容なのか、アップルはなぜこのようなプログラムを開始するのだろうか。

サステナビリティへの意識か、米国では「修理する権利」への声が高まっており、アップルもユーザー自身による修理プログラムを開始すると発表。日本では法律の問題などから難しいかもしれない

iPhoneセルフ修理プログラムは2022年からスタート

 iPhoneに限らず、バッテリーの持ちが悪くなった、画面が割れたなどの理由で、スマホを買い替えたことがある人は多いだろう。筆者自身もiPhone Xを道路に落として画面が割れてしまい、AppleCareに入っていないことを後悔したものだ。

 アップルがスタートする「Self Service Repair」は、対象となるアップル製品を使う人が自分で修理できるプログラムだ。まずはiPhone 12/13が対象。部品は画面、バッテリー、カメラなどよく使われるものだという。2022年に米国から開始し、その後は他の国にも拡大する。対象製品と部品も拡大予定で、アップルのリリースによると、M1を搭載するMacも加わる予定だという。部品とツールは200以上を揃えるとのことだ。

 希望者は専用のウェブサイト(「Apple Self Service Repair Online Store」)でシリアル番号などを入力して部品を注文して受け取り、マニュアル(「Repair Manual」)に沿って修理する流れになりそうだ。古い部品をリサイクルに返却すると購入金額が還元されるような仕組みもあるようだ。

 アップルは「電子機器の修理について知識と経験個人のテクニシャン向け」と記している。

米国で大きな動きとなっている「修理できる権利」の要求

 アップルはこれまで、自社製品の修理をタイトにコントロールしてきた。Apple Store、Apple正規サービスプロバイダ(AASPs)、そして2019年にはIndependent Repair Provider(IRP)を米国でスタートしている。

 このようなプログラムを今発表した理由は2つ考えられる。

 1つは、米国で高まりつつある「消費者が修理できる権利」だ。消費者団体によるロビー活動が繰り広げられた結果、バイデン大統領は7月に大統領令を出し、連邦取引委員会(FTC)が競合禁止契約を禁止または制限したり、不要な業務資格の類を禁止することなどを奨励すると発表した。

 修理できる権利はアップル、そしてマイクロソフトなども反対の姿勢を示している。ロビー団体は2020年7月、アップルのIRPについて「修理オプションを増やしたところで、修理できる権利の代替にはならない」と批判している。

 アップルのティム・クックCEOはSelf Service Repairの発表のあと、ロサンゼルスのショッピングモールでのApple StoreのオープニングでKTLAのインタビューに応じて、「修理を自分でやりたくて、それができるようにトレーニングされた人がいることに気がついた」と説明している(https://ktla.com/morning-news/technology/apple-ceo-tim-cook-2021-interview-the-grove-los-angeles-richontech/)。

 自分で修理したい人たちを、DIY専門雑誌「Popular Mechanics」を引用して(https://www.popularmechanics.com/)、「ポピュラーメカニクス集団」とし、「このような人たちを敬愛している」とコメントしている。ちょっとオーバーな表現である気がしなくもない。

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