このページの本文へ

なぜKubernetes/コンテナは重要なテクノロジーなのか 第3回

起業家こそ必要なKubernetesのポテンシャル ― ハードワークよりもスマートワークを

2021年11月09日 11時00分更新

文● アンソニー・スピテリ/Veeam Software シニアグローバルテクノロジスト、古舘正清/ヴィーム・ソフトウェア 執行役員社長(寄稿)

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

 堅実なビジネスは安定した基盤の上で生まれるものです。だからこそ企業はできる限り早い段階で、適切なインフラストラクチャを導入しなければなりません。スタートアップ企業のトップや起業家のやるべきことは膨大で、全ての業務をマスターすることは非現実的だからこそ、テクノロジーの力を使うことが重要です。これにより、知識のギャップを埋めながら、自社の重要なデータを守り、ビジネスの可能性を最大化するのです。

 クラウドネイティブのテクノロジー導入が進む中、Kubernetesは最も急速な成長を遂げているインフラストラクチャプラットフォームの1つです。今回はKubernetesの持つポテンシャルについて、第1回で紹介した米Veeam Softwareで製品戦略チームを率い、ネットワークとシステム管理の修士号を持つグローバル・シニア・テクノロジストのアンソニー・スピテリ(Anthony Spiteri)とともに紐解いていきましょう。

 Kubernetesは中小企業に、豊富な知識を持つアプリ開発会社と歩調を合わせるのに十分な俊敏性を備えた、拡張性も費用対効果も高い安全なシステムを提供します。しかし起業家は、その真のメリットをようやく認識し始めてきた段階にあります。

Kubernetesを活用したスケーラブルなアプリを開発

 スタートアップ企業の多くは、急速な成長を目指します。そのためには多くのユーザーの要求に応えるテクノロジー活用に必要な、迅速な拡張を実現するスケーラビリティが必須となります。日本のみならずオーストラリアの経済市場も不安定な中、企業はこうした変動に応じて事業を拡大もしくは縮小するための拡張性があるインフラストラクチャを採用することが不可欠になります。

 ユーザー数の大幅な増加が見込まれるスタートアップ企業では、多くの場合Kubernetes活用が適しているといいます。もともとGoogleのエンジニアによって開発されたKubernetesは、大規模な分散システムに対応できるよう設計されており、拡張性の高いプラットフォーム構築の実績が豊富です。ビジネスニーズに応じてアプリを自動的に拡大ないし縮小してくれるので、従業員は他の生産的な業務に注力できます。例えば、システム内の細かな要素のパフォーマンスを個別に調整してボトルネックを解消し、パフォーマンスを適切に組み合わせて運用の成果を出すことができます。

 その事例の一つが、2億5,000万人以上の月間アクティブユーザー数を誇り、1日あたり100億件以上のレコメンドを提供しているPinterest社のKubernetes導入です。Pinterestの取扱いデータは伸び続けることが予想され、拡張性とパフォーマンスの課題に直面しました。そこでKubernetesを導入することで、以前は数時間から数日間かかっていたアイデア開発のアイディエーション段階から制作までの期間を、わずか数分間に短縮できました。

事業コストの抑制

 Kubernetesソフトウェアは、時間と費用を節約し、生産性を向上させ効率化を実現する、手頃なソリューションです。そしてKubernetesとそのエコシステムは進化しています。これに伴い、一定の業務や処理を自動化することはコストを削減する上で欠かせないものとなっています。特に、データの安全性確保とリソース活用という観点で、Kubernetesは不可欠です。

 スピテリのシステム管理およびITマネジメントの経験値によると、Kubernetesはコードによって、エンドツーエンドの脆弱性管理や、暗号によるセキュリティポリシーの実装など、セキュリティ対策の自動化を実現します。エンドツーエンドの脆弱性管理では、アドミッションコントロールとスキャニングをリアルタイムで実行することで、セキュリティチームが手動で介入する手間を無くし、他のコスト要素の管理に専念できるようにします。暗号によるセキュリティポリシーの実装では、インフラストラクチャ構築時にセキュリティが自動化されるため、従業員はアプリ開発に集中できるようになります。コードによるセキュリティポリシーを適用して、本番環境でのアプリの「許可された動作」を定義できるため、セキュリティ管理コストを削減できるのです。

 Kubernetesのアプリケーションでは、Kastenが提供するリアルタイムのダッシュボードなどにより、個々のコンテナの詳細情報や、コンテナに対するリソース要求、使用状況を自動的に確認できるようになります。これにより、リソース消費の多いコンテナを特定し、ビジネス全体のコスト削減のための調整を行うことができます。開発チームは、企業の財務的負担を最小限に抑えながら、驚異的な運用能力を得ることができるようになるのです。

転用可能なスキルを実践に活かすために

 比較的新しい技術のKubernetesは、若手の開発者に受け入れられる可能性が高いと言えます。大学や教育機関がKubernetesをカリキュラムに導入し始めたことで、若い開発者たちはこれからの業界をけん引するためのスキルセットを身につけて社会に出てきています。

 オープンソースのKubernetesは、今日の大学が重点的に力を注ぐ、自立的かつ個性的な思考の強化にも役立ちます。The Linux Foundationとハーバード大学による最近の研究(英語)によると、プログラマーがオープンソースで活動するのはお金儲けのためではなく、問題を解決してクリエイティビティを発揮することに喜びを見出しているからと発表されています。クラウドコミュニティにおいてKubernetesは、際立ったエンドユーザー、開発貢献者、メンテナンス担当者の大規模なコミュニティに支えられる最も人気の高いコンテナ管理プラットフォームです。Kubernetesは、Google Cloud、Microsoft Azure、AWSなど、多くのクラウドコンピューティングプラットフォームやクラウドプロバイダーにサポートされています。こうした環境から、Z世代がKubernetesを使ってグローバルに展開するアプリケーションを簡単に作成できるようになっています。

 今日、Kubernetesは、サービスが単一化されたモノリシックなツールにはない多機能性を実現するため、OpenshiftやNomadなどの他のコンテナ管理プラットフォームと一線を画しています。競合テクノロジーに比べ、Kubernetesはネイティブにサポートされている機能やアプリケーションを幅広く備えています。様々なワークロード、言語、フレームワークに対応し、特にグローバルなDX時代に登場した起業家やスタートアップ企業にとって最適な柔軟性を備えています。Kubernetesは、効率性、柔軟性、コストパフォーマンスに優れた業務管理のためのNo.1ソリューションとして、世界中から期待が寄せられています。

(寄稿:Veeam Software)

■関連サイト

カテゴリートップへ

この連載の記事
  • 角川アスキー総合研究所
  • アスキーカード