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ダイキン工業と相愛がSORACOM Discovery 2021で遠隔監視IoTのメリットを披露

事例で知るIoTによる遠隔監視のメリット 法令遵守やサービス向上、コストダウンまで 

指田昌夫 編集●大谷イビサ

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 6月22~24日に開催されたソラコムの年次イベント「SORACOM Discovery 2021」のIoTを活用した遠隔監視の導入事例として、ダイキン工業と相愛の担当者が「現地に赴く業務をIoTで自動化、働き方を変える」というタイトルで講演を行なった。働き方改革だけではなく、法令遵守、サービス向上、コストダウンまでさまざまなメリットが得られるという。

深夜か土日に限られたビルの空調点検をIoTによってリアルタイム化

 ダイキン工業は、「Kireiウォッチ」というIoTを用いた空調機の設備点検サービスを2019年10月に開始した。同社サービス本部企画部の新海匠氏が、サービス開発の経緯と得られた効果を説明した。

ダイキン工業 サービス本部企画部 新海 匠氏

 本サービスは、ビル内の業務用空調機の「ドレンパン(結露水受皿)」の画像を、週に1回IoTカメラで撮影し、専用のwebアプリで閲覧、レポートを作成することができるものだ。顧客であるビルの管理会社は、空調機の点検工数の削減が可能になり、定点観測することで、水漏れリスクの低減や保全計画の策定に寄与するという。Kireiウォッチには、2021年6月現在、1000台強の空調機が接続されている。

 ビルの管理者は「建築物における衛生的環境の確保に関する法律(通称:ビル管法)」によって、適切な設備管理が求められている。空調機器に対しては、ビル内の空気が病原体で汚染されることを防止する措置を講じなければいけない。具体的には、加湿装置の汚れ状況の点検、空調機内の排水受けの点検をいずれも1カ月に一度行なうことが義務づけられている。

 だがビル管理の現場は、人手不足や人件費の高騰など、十分なマンパワーを割けない状況にある。また、点検は天井裏の作業になるため作業が危険であることなど問題が多い。さらに、ビル点検はテナント側にとっても、調整や立ち会いなどの負担が大きい。「こうした点検にまつわる問題を何とかできないかという要望が、顧客から同社に多く寄せられるようになり、本サービスを開発するきっかけとなった」と新海氏は語る。

 システム構成は、空調機の内部にソラコムのSIMカードを搭載したIoTカメラを設置して、ドレンパンの汚れ状況を撮影する。画像データはLTE通信を使い、SORACOM Air経由でダイキンのクラウドサーバー(AWS)へ転送。顧客企業はKireiウォッチのWebアプリからクラウド上の画像にアクセスし、空調機の状態を確認することができる。ドレンパンの汚れ具合を数値やグラフで可視化することもでき、それを使ってレポートを作成することもできる。

ソラコムのSIMカードを搭載したIoTカメラを設置して、ドレンパンの汚れ状況を撮影

 Kireiウォッチの導入によって、定期的な点検が自動で行なえるため、法令遵守につながり、清掃などの計画も立てやすくなる。当然ながら人手不足問題の解決策にもなる。

「オフィスや店舗など、ビルが稼働しているときは空調機を止めることができないため、空調機の点検は土日や夜間の場合がほとんどだった。また役員室などの点検では、作業員が現場に行く場合に調整が難航することもあるが、Kireiウォッチでは遠隔で点検できるため、顧客側のそうした負担もなくなる」(新海氏)

 実は本サービスは運用開始後、一時期通信パケットが急増するトラブルに見舞われたが、その際にソラコムのevent handlerを急きょ導入し、通信量の監視を行なうことで対応したという。

 サービス開始からおよそ2年運用してきた中で、データが蓄積されている。今後は収集した画像に対して機械学習を用いることで、汚れ度合いの数値化、定量化を進めていきたいと新海氏は語る。加えて、空調機の対応機種を拡大し、レポートの自動作成などさらなる省力化も進めていく予定だ。さらに、システムとしての改善点は、トラブル発生時にどんなパケットで通信していたのかを知るために、ソラコムのパケットキャプチャ機能である「Peek for SIM」を使うことを検討もしているという。

 新海氏は、これからIoTを自社サービスに組み込もうと考えている企業の開発者に対して、「ソラコムなら、コンソールからすぐにSIMを買うことができる。またユースケースもQiitaなどに多数アップされているので、Raspberry Piなどの安価なハードと組み合わせて、まずは遊んでみるというのがおすすめ」と語った。

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