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小型/パワフルなエッジデバイス「ThinkEdge SE30/SE50」を発表

レノボ、新ブランド「ThinkEdge」でエッジ/IoT領域の本格事業展開開始

2021年07月08日 07時00分更新

文● 大河原克行 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

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 レノボ・ジャパンは2021年7月6日、エッジおよびIoTに特化した新たな製品ブランドとして「ThinkEdge」を立ち上げた。同ブランドの第1号製品として、エッジコンピューティング専用端末「ThinkEdge SE30」、および「ThinkEdge SE50」を発表している。

 レノボ・ジャパン 副社長の安田稔氏は、「レノボではコンピューティングパワーをあらゆる領域で活用してもらうための施策を展開しており、そのなかで重点市場のひとつとしているのが『IoT』である。新ブランドは、IoT市場が広がるなかで、レノボがビジネスとして取り組む姿勢を示したもの。ナンバーワンシェアであるスケールメリットを生かしていきたい」とした。

レノボ・ジャパンが新たに発表した小型エッジIoTデバイス「ThinkEdge SE30」と、ハイパフォーマンスエッジデバイス「ThinkEdge SE50」

レノボ・ジャパン 執行役員 副社長の安田稔氏、同社 製品担当の賈 新氏

本格事業展開のために新ブランド「ThinkEdge」を立ち上げ

 レノボでは、エッジIT環境に最適化した「ThinkCentre M90n-1 Nano IoT」および「ThinkSystem SE350」を2019年に発表し、小型軽量化と堅牢性、高性能を実現したデパイスとして、製造現場などを中心とするエッジIT市場を開拓してきた経緯がある。今回の新ブランドThinkEdge立ち上げは、この分野に対して、より本腰を入れて事業を展開する姿勢を示すものとなる。

 「エッジITの活用はあらゆる産業やユースケースに広がる。ThinkEdgeシリーズは、エッジITビジネスの拡大とニーズの多様化に対応したものとなる。グローバルで調達可能なエッジITデバイスが欲しい、汎用PCの価格に近いコストパフォーマンスの高いデバイスが欲しい、高い処理性能のデバイスが欲しいといった要望に応える」(安田氏)

エッジでのコンピューティング能力が必要とされるユースケースは拡大している

 今回発表したThinkEdge SE30/SE50について、レノボ・ジャパン 製品担当の賈 新氏は「エッジIT領域での利用に特化した専用設計を行った」デバイスだと説明した。両製品では、過酷な環境下での利用にも耐える幅広い可動温度、DINレールやVESA規格にも準拠する利用場所を選ばない設置の柔軟性、クラウドとの連携を前提としたネットワーク接続性などを実現している。

 「(ThinkEdge SE30/SE50は)コンパクト化しても、性能は妥協していない。ハードウェアだけでなく、パートナーとのソリューション連携による提案も強みになる」(賈氏)

「ThinkEdge SE30」の本体(前面、背面)

 ThinkEdge SE30は、約0.81LサイズのコンパクトなエッジIoT専用端末。本体寸法は約179×51.5×88mmで、重量は最大構成時で1.02kg。価格は15万8400円(税込)から。

 IoTや組み込み機器向けとされる第11世代インテル Core i5-1145GRE、または同 i3-1115GREプロセッサーを搭載。OSには「Windows 10 IoT Enterprise LTSC」のほか、「Ubuntu Server」や「Ubuntu Core」の選択も可能。

 ファンレス構造の本体により、ほこりを吸い込む恐れがなく、静音性も実現している。さらに、ヒートシンクを底面にも採用したことで、マイナス20℃~60℃の幅広い稼働温度に対応しており、冷凍食品を扱う倉庫や金属加工を行う工場といった厳しい環境でも利用できる。また、MILスペック(MIL-STD810H)に準拠した堅牢性を実現。24時間365日の連続稼働を前提とする設計となっている。

 さらに、5Gの高速通信をはじめ、4GやWi-Fi、Bluetooth、RJ-45などの多様なネットワークに接続することができる。クラウドIoTプラットフォームの「Microsoft Azure IoT」および「AWS IoT Greengrass」認証も取得している。

「ThinkEdge SE30」の本体(前面、背面)

 ThinkEdge SE50は、約2Lのファンレス筐体に、第8世代インテル Corei7-8665UEまたは同Core i5-8365UEプロセッサーを搭載。メモリは最大32GB、ストレージは1TB SSDと1TB HDDの組み合わせで最大2TBまで拡張できるほか、第3世代インテル Movidius VPUの搭載が可能であり、エッジデバイスでありながら画像分析や深層学習などに必要なパフォーマンスを提供できる。

 これにより、カメラの映像を通して稼働中の生産ラインで製品を検品したり、オフィス内の社員の顔を認識して不審者がいた場合にはアラートを出すなど、より高度な分析やデータ処理が求められるユースケースに最適だという。

 本体寸法は、約179×72×182.9mmで、最大構成時の重量は約3.21kg。価格は22万4400円(税込)から。MIL-STD810Hへの準拠や、IP50の防塵性能を持ち、稼働温度は0~50℃。優れた耐久性と信頼性が特徴だ。

  また、オプショナルポートにはRJ-45のほか、車載ネットワークやFA、産業機器などで活用されているシリアル通信プロトコルCANや、LEDライトやPLCとの接続に適したDIOも選択できる。

 安田氏は、5Gの広がりなどによって「Everything is Always Connectedの時代」が到来し、膨大な量のIoTデータが生成されることで、「機械学習やAIによる推論処理など、エッジIT領域でのパフォーマンスを求めるニーズが増加すると予測している」と語った。

「“クラウドとエッジITの分業”はさらに加速する。エッジITに求められる、レイテンシーセンシティブ、膨大なデータ処理、IoTとエッジITとの接続のみ、といったワークロードにも対応できる」(安田氏)

パートナー3社がゲスト出席、エッジIT加速への期待を語る

 新製品発表会にはパートナー企業3社もゲスト出席した。

(左から)日本マイクロソフト IoT & MR営業本部技術営業部 IoTテクニカルスペシャリストの平井健裕氏、アステリア グローバル Gravio事業部 事業部長の垂見智真氏、岡谷エレクトロニクス テクノロジー本部ビジネス推進部 部長の住田克也氏

 日本マイクロソフト IoT & MR営業本部技術営業部 IoTテクニカルスペシャリストの平井健裕氏は、クラウドとエッジの役割分担について触れ、「今後はエッジ環境にAIが組み込まれていくことが増える」と語った。「ただしこれまでは、性能やコストの面から、汎用PCや組み込み型デバイスではエッジITが実現しにくかった。エッジITに最適化したハードウェアが登場したことで、こうした課題が解決し、導入の動きが加速することになる」(平井氏)。

 なお日本マイクロソフトでは、エッジITのニーズ拡大に合わせて「Edge for Linux on Windows」や「Azure IoT Central」など、エッジIT分野に最適化したソリューションを提供している。さらに、Azure Certified Device Programにおいて、すでに今回の新製品を認定していることも明らかにした。

マイクロソフトのエッジソリューション「Edge for Linux on Windows」「Azure IoT Central」

 アステリア グローバル Gravio事業部 事業部長の垂見智真氏は、カメラやセンサーなどから収集した現場データをつなぎ、活用することができる同社のAI/IoT統合プラットフォーム「Gravio」を紹介した。「ユーザーが求めているのは、エッジITを簡単に実現し、すぐに実ビジネスに活用できること。Gravioでは、ミドルウェアだけでなく、センサーやエッジデバイス、画像認識AIも、ひとつのプラットフォームとして、ワンストップで提供できるのが特徴だ。レノボのThinkEdgeシリーズは、高い性能を持つエッジデバイスであることから、IoTとAIをひとつの環境で動作させることもできる。また、Gravioを活用することで、ノーコードにより、誰もが作れて使える環境を提供できる」(垂見氏)。

 Gravioの導入事例として、アシックスでは、製造現場において、各種センサーを活用して品質管理や効率化を実現することに加えて、脱炭素を実現する狙いでIoTを活用。レノボ・ジャパンのオフィス内でも、各種センサーを活用してCO2濃度を測定し、“三密防止”などに活用している例も示した。

 また、ThinkEdgeシリーズを活用した「IoTスターターキット」を用意している岡谷エレクトロニクス テクノロジー本部ビジネス推進部部長の住田克也氏は、「製造現場ではワークステーションクラスの性能を求めるケースもあるが、サイズが大きく現場に設置できない、価格が高いといった課題があった。ThinkEdgeシリーズは、“帯に短したすきに長し”という、これまでの製造現場の悩みを解決してくれるものになる。誰もが簡単に、手軽に、エッジIT環境を導入できるようになる」と述べた。

 IoTスターターキットは、ThinkEdgeシリーズのほか、アステリアのGravio、日本マイクロソフトのMicrosoft Azureの評価ライセンス、ネットワークカメラ、サンプルアプリケケーションなどを組み合わせたもの。「これらを統合し、プリセットして提供することで、エンドユーザーは迅速にIoTシステムの評価、運用が可能になる。エッジIT環境を部品のようにして導入できる」(住田氏)としている。

岡谷エレクトロニクスがリリース予定の「SE30/SE50 IoTスターターキット」の概要

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