このページの本文へ

基幹10業務から必要なものだけを組み合わせて利用可能、業種ごとの商慣習にも細かく対応

GRANDIT、中小企業向け国産統合型クラウドERP「miraimil」発表

2021年07月07日 07時00分更新

文● 大河原克行 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

 国産ERPベンダーのGRANDITは2021年7月6日、中小企業向けの国産統合型クラウドERP「GRANDIT miraimil(グランディット ミライミル)」を発表した。年商10~100億円規模の中小企業をターゲットとして、2021年10月から提供を開始する。

 同日の記者発表会に出席したGRANDIT 代表取締役社長の石倉努氏は、GRANDIT miraimilについて、「日本の多くの企業に対して経営課題解決の支援をしてきたノウハウを生かして開発したものであり、中小企業の競争力向上と企業価値を向上させ、成長を支援するサービスになる」と位置づけている。

中小企業向け統合型クラウドERP「GRANDIT miraimil(グランディット ミライミル)」のサービスロゴ。サービス名には「未来を見通すツール」「未来への飛躍をサポートする」という意味を込めたという

GRANDIT 代表取締役社長の石倉 努氏、同社 事業統括本部 副本部長の多田修子氏

必要な業務のみを効率良く組み合わせ、業種ごとの商慣習にも対応

 GRANDITは、国内のユーザー系SI企業を中核とする「GRANDITコンソーシアム」参加各社から収集した顧客の声とノウハウに基づき開発されてきた国産ERPパッケージ。2004年の初版発売以降、製造、サービス、商社、卸業界を中心として、これまでに国内1200社以上への導入実績を持つ。石倉氏は「“日本企業に最も適したERP”として進化してきたのが特徴」だと説明する。

 同コンソーシアムは、GRANDITのパッケージ著作権、パッケージ産業財産権を所有するほか、導入支援やプロダクト維持管理、保守なども行う「コンソーシアム方式」と呼ぶユニークな仕組みを採用している。

 今回発表されたGRANDIT miraimilは、このGRANDITの機能をベースに、日本の各業種が持つ固有の商習慣をパターン化。10種類の基幹業務機能(経理、債権、債務、販売、調達在庫、継続契約、経費、資産管理、人事、給与)から、必要な機能を組み合わせて利用できるクラウドサービスとして提供する。

 各業務システムは単一の共通マスタで連携し、会計、人事、生産、物流、販売のフローの一元管理が可能であるほか、「承認ワークフロー」機能も標準搭載しており、業務処理の効率化とペーパーレス化、意思決定の迅速化に貢献できる。また、最短3カ月での導入が可能であり、オンプレミス提供しているGRANDITと比べると、導入コストは平均90%削減できるという。

miraimilでは、10種の基幹業務機能から必要なものだけを組み合わせて利用することができる

 GRANDIT 事業統括本部の多田修子副本部長は、「事業内容や事業拡大に応じて利用できる、中小企業が導入しやすい統合型クラウドERP」だと説明した。社内情報の一元管理により業務効率化が図られるほか、必要な機能だけを組み合わせられるため、導入スピードやコストメリットに優れる。GRANDITがワンストップサービスの窓口となるため、“ひとり情シス”を含むIT担当者が、システム運用保守業務から解放されることにもつながると語る。

 対象業種を絞ることで、業種ごとの商慣習に対応すると同時に価格競争力につなげている点も強みだという。今回はまず、「商社・卸売業」と「サービス業」に特化した2種類のサービスを提供する。

まずは「商社・卸売業向け」「サービス業向け」の2業種向けサービスから提供を開始する。その後も順次他業種への対応を進める

 商社・卸売業向けERPでは、国内取引、海外取引(輸出入)など多様な取引形態を前提として、多通貨取引に対応。また、倉庫を経由しない出合取引や売買同時取引、在庫取引など、各種の商流にも対応しているのが特徴だ。金額が異なる同一商品在庫を、ロットごとに個別管理し、採算を詳細に把握できる。また、契約ごとの収益をリアルタイムに処理、把握でき、管理レポート機能により、商社や卸売業務で日々発生する定型業務の負荷も軽減できる。

 サービス業向けERPでは、物販とサービス販売を、同一オペレーションで統合管理できるほか、期間契約業務で発生する定期的な計上を自動化でき、売上請求業務の負荷を軽減できる。また、仕入・売上台帳を一元化し、案件ごとに、仕入れと売上げを紐づけて管理することで、計上ミスを防ぐことができるのが特徴だ。

 またmiraimilでは、専門知識がなくても直感的に分析が可能なBI機能を標準実装している。これにより、miraimilに蓄積されたデータを集計して、定型レポートやモデルが可能だ。

 さらにオプションとして、帳票電子化/Web請求書のクラウドサービス「eco Deliver Express」も提供する。これをmiraimilと連携させることで、取引先へ送付する請求書や納品書、支払通知書などを電子化し、社内のペーパーレス化を実現。テレワーク/在宅勤務の導入促進にもつながるとしている。

BI機能を標準搭載するほか、帳票電子化サービス「eco Deliver Express」との連携オプションも用意している

 なお、miraimilのサービス基盤には「Microsoft Azure」を採用している。Azure東日本リージョンの占有環境において、GRANDITの専任スタッフによる運用保守、監視サポートを提供する(西日本リージョンにDRサイトを構築、オプションとして利用可能)。導入企業は、システム運用および保守が不要となり、IT担当者の業務負荷を軽減する。また、企業のコンプライアンス要件や業界固有の標準準拠も可能としている。

 発表会にゲスト出席した日本マイクロソフト 業務執行役員 Azureビジネス本部 本部長の上原正太郎氏は、「miraimilの進化による会計、人事、生産、物流、販売のフローのDXをサポートでき、中小企業をデータ駆動型組織にすることができる」と評価。「Azure Active Directory」によりセキュアな利用環境を実現するほか、「Microsoft Teams」からのアクセスといった新たな利用形態の実現などでも協力していきたいと述べた。

 「日本マイクロソフトでは、5年後に中堅中小企業向けクラウドビジネスを10倍にする計画を打ち出している。そうした取り組みのひとつとして、GRANDITを支援していく」(上原氏)

大企業と中小企業の“DX格差”を埋めるためにも必要な取り組み

 GRANDITではmiraimilの利用料例として、経理、債券、販売、調達・在庫の各業務に適用し、利用者数10名までの場合で月額45万円(税抜)としている。これには別途、導入支援費用が必要になる。

 GRANDITでは、導入や運用、保守に精通した専任エンジニアによる問い合わせ対応、システム監視やレポート、障害発生時の対応、バージョンアップ作業、法改正対応や機能強化時のプログラムの入れ替え作業などのサポートも提供する。また、最大3カ月間の無料トライアルを用意している。

 年内には10社への導入を計画。2024年までに200社への導入を目指し、その時点で黒字化を見込むほか、2026年までに500社への導入を目指す。

発売5年目の2026年に500社の導入を目指す

 今後、他業種向けへの拡張や、他サービスとの連携強化、機能やサービスの拡充を通じて、中小企業の業務効率化を支援していくという。

 GRANDITの石倉氏は、経済産業省のDXレポートで示されたいわゆる“2025年の崖”に触れ、「国際競争力を維持するためにもレガシーシステムの刷新が必要」と説明。また、大企業では5割以上がDXを推進している一方で、中小企業では15.2%にとどまり、そこに「格差が生じている」と指摘した。その一因として、中小企業におけるIT人材の不足があるため、miraimilはそうした課題解決にも貢献できるとアピールした。

■関連サイト

カテゴリートップへ

アスキー・ビジネスセレクション

ASCII.jp ビジネスヘッドライン

ピックアップ