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NonEntropy Japanと寺田倉庫がNFT前提の実証実験を実施

増え続けるデータのリスク、IPFSとFilecoinは救えるか?

2021年07月06日 18時30分更新

文● 大谷イビサ 編集●ASCII

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 2021年7月6日、IPFSの分散型ストレージを手がけるNonEntropy Japanは説明会を実施した。代表取締役 西村拓生氏はデータ爆発やセキュリティ、データ保全などさまざまなリスクを低減するためのIPFSとFilecoinについて説明。また、寺田倉庫との提携によるデジタルデータのアーカイブの実証実験やNFT化されたデータ保存についても解説した。

NonEntropy Japan 代表取締役 西村拓生氏

改ざん、漏えい、地政学的なリスクにさらされるデータの現状

 2020年12月に設立されたNonEntropy JapanはIPFS(Inter Planetary File System)をベースにした分散ストレージの開発・提供を手がけるベンチャー。外資系大手クラウドストレージへの依存やプラットフォームプレイヤーの中央集権化リスクを低減し、国内にデジタルエコノミーを支えるプラットフォーム事業を創出させることを目的としている。

 現在、世界はデータ爆発のまっただ中で、スマホ、SNS、IoTなどの要因で一人当たり250万バイトのデータが生み出され、2010年と比べるとデータ量は2015年まで150倍になると言われている。デジタルデータは今後も増え続けるため、まずはストレージ枯渇が危惧されている。

 これら増え続けるデータはセキュリティとガバナンスの問題にも直面している。機密情報を人質に身代金を要求されたセキュリティ事例を見るまでもなく、データ改ざん・漏えいリスクは日々高まっており、事故も頻繁に起こっている。現状、世界のIaaS市場の77%を上位5社のストレージプロバイダーが支配しており、トランプ氏のTwitter停止のようなプラットフォーマーによる情報検閲や統制も懸念されている。さらにLINEの個人情報が、委託先の中国企業から閲覧可能になっていた問題では、重要な個人情報が国境をまたいで管理されることの安全保障上の問題も指摘されている。

増え続けるデータのリスク

 こうしたデータ改ざん・漏えいリスク、データ保全リスク、地政学リスクに対応するのが、同社がコアテクノロジーとするIPFSとFilecoinになる。

Web 3.0の基盤となるIPFSと巨大なFilecoinネットワーク

 次世代の「Web 3.0」を支えると言われるIPFSでは、中央集権型でHTTPベースのインターネットと異なり、同じコンテンツが複数のサーバーに分散保存されており、アクセスの負荷分散が実現し、耐障害性も高められるという。また、どこかのサーバーが遮断されても、残りのサーバーで同一データを取得できる冗長性も確保できる。さらにハッシュ値を元にしたデータ改ざん防止の仕組みを持っており、コンテンツの正当性を検証することが可能。こうしたさまざまなメリットから、IPFSはGAFAM含めて、世界の多くの企業が採用している。

分散型ファイルシステムのIPFS

 そして、このIPFSを開発したProtocol Labsが、IPFSを普及させるために作った報酬レイヤーが「Filecoin」になる。2020年に始まったFilecoinではICOが実施され、シリコンバレーを代表する投資家たちによって280億円という巨額のICOが実現されているという。「Web 3.0を見据えて、シリコンバレーが仕掛けているのがこのFilecoin」と西村氏は語る。

 Filecoinはユーザー同士がストレージを貸し借りできるシェアリングエコノミー&マーケットプレイスとして機能しており、ユーザーは巨大なIPFSネットワークの一部として自身のストレージを提供することで、既存の暗号資産と兌換性のあるFilecoinを報酬として得ることができる。Filecoinの報酬は、データを預かった際のストレージマイニング、分断したデータを集約して提供する際のリトリーブマイニングでも発生。さらに、現在は専門の公証人に認められた有益なデータにより高い報酬機会を得られる「Filecoin Plus」というプロジェクトも動いているという。

Filecoinの概要

 現状、試運転中のFilecoinネットワークに参加しているのは約2500ノード。Wikipediaや地図データ、ゲノムデータ、大気情報など、公共性の高いデータが総量7EiBが保存されているという。

IPFS・Filecoinを一気通貫で提供 将来的にはNFTにも適用

 NonEntropy Japanは、こうしたIPFS・Filecoinの技術を一気通貫で提供する。IPFSの基盤となるマシンの開発やデータセンター設計を行なうほか、Filecoinマイニングのためのストレージである「NonEntropy Pool」を提供する。すでに中国と日本国内で55.31PiBのFilecoinストレージを運営しており、国内ではNo.1、海外でも14位となっている。

 また、IPFSやFilecoinを活用するための開発者向けのAPIセット「IPFS gateway」や分散データストレージの「IPFS SOUKO」を提供する。NonEntoropy Japanとしては、ストレージ基盤の運営でFilecoinのマイニング収益を得るとともに、データ保存のためアーカイブ利用、API利用やコンサルティングフィーを得ていくという。

NonEntropy Japan

 最新動向としては、4月には大阪大学と基盤技術の共同研究を発表。前述したFilecoin Plusのプログラムにおいて、公証人から有益だと認められたデータセットも3件あるという。また、本格的なデータ預かりのため、都内のデータセンターのラックを確保しており、9月から稼働を開始する予定となっている。そして、同日発表されたのは寺田倉庫との実証実験になる。Filecoin Plusにおいて高い報酬が設定されている公共・芸術データのアーカイブを実証実験していく予定で、報酬は寺田倉庫とシェアしていく予定だという。

寺田倉庫との実証実験

 将来的にはNFT(Non Fungible Token)化された芸術作品のIPFS利用も視野に入れている。実際、約75億円で落札されたビープルのデジタル作品もIPFS上に保存されており、世界最大のNFTマーケットプレイスOpenSeaにおいてもIPFSの採用が発表されているという。「現状のNFTで証明できる唯一性に加え、IPFSでは仕組みとして非改ざん性と保存の恒久性、さらにはデータの中立・公正性も確保できるため、相性がよい」と西村氏はアピールする。

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