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小島寛明の「規制とテクノロジー」 第134回

警察庁に「サイバー局」都道府県警察だけでは限界?

2021年07月05日 09時00分更新

文● 小島寛明

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 警察庁に新たに「サイバー局」が設置される。

 2021年6月24日昼ごろから、テレビ、新聞など各社が報じている。

 警察庁には、殺人など事件の捜査を担う刑事局や交通事故などに対応する交通局、初もうでの雑踏の警備や要人の警護などを担う警備局といった局がある。ここに2022年度からサイバー局が加わることになる。

 NHKによれば、警察庁に200人規模のサイバー犯罪専門部隊も設け、独自に捜査もするという。日経新聞は、専門部隊とサイバー局合わせて400人規模だと報じている。

 このニュースの最大のポイントは、国直轄の部隊が設置されることだろう。

 原則として警察は都道府県単位で組織があるが、都道府県境のないサイバー空間では、都道府県ごとの対応では限界が生じているのではないか。

都道府県警察が組織の基本

 今さらとお思いになるかもしれないが、都道府県ごとに警察本部があり、その上位機関として警察庁がある。

 各警察本部のトップにあたる本部長には、警察庁のキャリア官僚が就いている。

 現場の警察官は都道府県単位で採用するため、隣合っていても、警視庁は警視庁、神奈川県警は神奈川県警と、それぞれ独自の文化がある。

 各都道府県の警察本部には、サイバー犯罪捜査課など専門の組織もある。

 都道府県ごとの警察という組織のあり方を前提とすると、「200人規模の国直轄部隊」というニュースはけっこう大きな出来事だと思われる。

コロナ禍でサイバー空間の脅威が増した

 警察組織の大きな再編の背景には、急激な環境の変化がある。

 警察庁が半年ごとに公開している「サイバー空間をめぐる脅威の情勢等について」という報告書がある。

 国内のサイバー犯罪や、日本を標的とするサイバー攻撃の動向が簡潔にまとめられた資料だ。

 3月に公表された「令和2年版」を読むと、コロナ禍をきっかけに社会全体のデジタル化が進んだことで、サイバー空間の脅威も増していることが強調されている。

 個人の生活を考えてみると、ZOOMやTeamsで仕事の打ち合わせをし、スマホで買い物の支払いを済ませ、友人や家族、同僚に連絡している。

 あちこちで混乱が報じられてはいるものの、ワクチンの予約もスマホで済ませた。

 リアル空間の生活とサイバー空間の融合が進めば進むほど、生活者がサイバー犯罪の被害者となる危険性も増す。2020年のサイバー犯罪の検挙件数は9875件と増加傾向が続いている。

 2020年には、防衛に関連する事業を行なっている三菱電機やNECが大規模なサイバー攻撃を受け、会社側は防衛関連の情報が含まれていた可能性があると認めた。こうした事案では、中国系ハッカーの関与が疑われている。

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