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佐々木喜洋のポータブルオーディオトレンド 第78回

2021年 完全ワイヤレス新機種

ソニー「WF-1000XM4」を聴く、新V1チップの採用・高性能が直接生きた高音質

2021年06月14日 13時00分更新

文● 佐々木喜洋 編集●ASCII

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音傾向はWF-1000XM3とは異なるオーディオ愛好者向けのチューニングへ

 試聴にはまず、自分の「iPhone 12 Pro」を使用した。ソニーの「Headphone Connect」アプリで「Bluetoothは音質優先」を選択しているので、AACコーデックが使用されるはずだ。WF-1000XM3とも比較試聴した。

右が従来機のWF-1000XM3

 試聴機はデモ機で、自分ではエージングをしていない。また、室内のみで試聴したのでノイズキャンセリングの効き具合は試していないが、静かな室内がさらに静かになり、無音室にいるような独特の感覚があったのでノイズ低減効果はかなり高いと感じた。

 DSEE Extremeを切った状態でもかなり音はいい。透明感が高くクリアで細かい音がよく聞こえる。ボーカルの明瞭感が高く、アニソンのボーカルも声がはっきりと聞き取れる。DSEE Extremeをオンにすると、音はより洗練されて甘さが少なくなる。音がより鮮明になり、かなり優秀な音質となる。バッテリー消費は増えるが、DSEEは基本的に常にオンにしていたほうが良いと思う。

 ジャンルを変えてみたが、ギターとボーカルだけのシンプルな構成のアコースティック系楽曲では、深みと奥行き感がある独特の音質の良さを感じる。このあたりは、市販のSoCに統合されたオーディオ回路よりも優れている印象。音の良さを決めているのは、ドライバー以上に、DACやアンプ周りの性能の良さではないだろうか。

 興味深いのは、WF-1000XM3と音傾向がだいぶ異なる点だ。

 WF-1000XM4はWF-1000XM3よりもやや落ち着いていて、いわゆるオーディオマニア向けに近いチューニングのように思う。特に低域の表現が大きく異なり、低域が少し誇張される傾向のあったWF-1000XM3に比べて落ち着いた表現となっている。例えば、ジャズ・トリオを聴くとWF-1000XM3ではダブルベースが重すぎて全体がどろどろとした音になってしまっていたが、WF-1000XM4ではそうしたことはなく、とても軽快に適度なダブルベースの重さで音楽を楽しむことができた。

 Xperia 5IIを使用して、LDAC再生も試してみた。Bluetoothの設定からLDACをオン/オフしてみると、やはりLDAC設定をオンにしたほうがより多彩な響きが再現され、音がより輝きを増して聞こえる。LDACありでしばらく聞いた後にLDACをオフにすると音がやや物足りなく感じる。DSEEもLDACもイコライザーをいじるように大きな差は出ないが、音の細部により磨きがかかり、より豊かで厚みのある音質を達成することができている。

 最近ではイヤーピースを交換して音の変化を楽しむことがポータブルオーディオ界隈では一般的だ。試しにイヤーピースを「AZLA XELASTEC」に変えて装着してみたが、この相性は大変素晴らしかった。音がより広がってよりクリアになり、さらに声が鮮明に聴こえるようになる。また実際に試してみたが、AZLA XELASTECのLサイズを装着していてもWF-1000XM4のケースに問題なく入る。ここは隠れた注目ポイントかもしれない。

 最後にまとめると、WF-1000XM4はWF-1000XM3のユーザーから上がった「さらにコンパクトにしてほしい」「防滴性能やLDACも欲しい」という声に対して、ダイレクトに答えた正統派の後継機だと思う。音質もブラッシュアップされている。WF-1000XM3に比べると低音が足りなく思う人もいるかもしれないが、これは性能的に低音が出てないのではなく、意図的なチューニングの結果だろう。

 電子回路部分は、DACにしろDSPにしろ従来の完全ワイヤレスよりも一歩進んでいる。新採用のV1チップにソニーの強みを感じた。V1の効果は多岐にわたる。統合プロセッサをリブランドしてV1と名付けたのも頷けるところだ。個人的にはこのV1を採用したマルチドライバー機を出して欲しいと思った。ソニーらしいさらなる高みへの挑戦に期待したい。

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