マザーボード用の電源コネクターが10pinに変更
下の画像が新しいマザーボード用の電源コネクターである。
Pinの内容は以下のようになっている。マザーボード側はこれまで+5VSBを利用していたスタンバイ回路を+12VSBに対応させる必要はあるが、差はそこだけである。
ATX12VOに採用される10pinコネクターの役割 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|
番号 | 信号名 | 意味 | ||||
1 | PS_ON# | これをOff(TTL_Low:0~0.8V)に落とすと電源がOn | ||||
2 | COM | GND | ||||
3 | COM | GND | ||||
4 | COM | GND | ||||
5 | Reserved | 未使用(予約) | ||||
6 | PWR_OK | 電源がOnになるとOn(TTL_High:2.4~5V)になる | ||||
7 | +12VSB | 12Vスタンバイ電源。ACがコンセントにつながると供給 | ||||
8 | +12V1 DC | 12V電源その1 | ||||
9 | +12V1 DC | 12V電源その2 | ||||
10 | +12V1 DC(12V Sensing) | 12V電源その3。12V電圧測定にも利用 |
ちなみに+12VSBは最大でも1.5A以下、ALPM(Alternative Low Power Mode)では0.625A以下とされている。そしてこの12V1 DCというのは、マザーボード上でCPU「以外」への電力供給に使われるもので、特に最大供給能力などに関する定義はない。
また、仮に10pinコネクターで供給しきれないほど消費電力が多いマザーボードの場合、追加でPCI Express用と同じ6pinコネクターを最大2つまで追加して、これで対応できるとする。この追加の6pinコネクターで1個あたり216~288Wが供給できるとするので、コネクター1個あたり18~24Aほど流れる計算だ。
これとは別に4pin、または8pinのATX12V用補助電源コネクターが必要になる(こちらは従来のATX12Vと一緒)だが、こちらが+12V2という分類になる。この+12V2はCPUによって仕様が決まっており、以下を供給できるのが必須となる(これはATX12VOの仕様ではなく、別の追補ドキュメントが用意される)。
第6/第7世代Coreプロセッサー | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|
TDP | 連続供給 | ピーク供給 | ||||
35W | 10A | 13.5A | ||||
65W | 14A | 18A | ||||
80W | 14A | 18A | ||||
95W | 16A | 18A | ||||
第8/第9世代Coreプロセッサー | ||||||
TDP | 連続供給 | ピーク供給 | ||||
35W | 13A | 16.5A | ||||
65W | 21A | 28A | ||||
95W | 22A | 29A | ||||
140W | 28A | 39A | ||||
165W | 37.5A | 45A | ||||
第10/第11世代Coreプロセッサー | ||||||
TDP | 連続供給 | ピーク供給 | ||||
35W | 13A | 16.5A | ||||
65W | 23A | 30A | ||||
125W | 26A | 34A | ||||
165W | 37.5A | 40A |
12V3/4はPCI Express向けなので仕様には詳細は含まれていないが、こちらはPCI ExpressのCEM(Card Electromechanical)Specificationに準拠する形だ。
ちなみにCEMでは最大で6.25A(6pin)/12.5A(8pin)を供給できれば良い計算になるのだが、最近は300Wを軽くぶっちぎるビデオカードが出てきており、電源メーカーもこれに対応する必要があるので、20A近く供給できるのが当たり前になってきている。
ところでSATAは? という話だが、新たに4pinと6pinのSATA電源ケーブルが定義された。マザーボード上で5Vが生成され、12Vと併せて供給される格好だ。
さて、このATX12VOという仕様だが、実は公開されたのは2019年6月である。2020年3月にはRevision 002が公開され、これが現時点での最新版となっている。これとは別にプロセッサーごとの+12V2に関する補足は随時アップデートされており、最新版は今年3月にRevsion 002として公開されている。
もう最初の仕様公開から2年近く経過しており、それなりに普及している……わけもないのは皆様もご存じの通り。少なくとも現状、日本では1枚たりとも発売されていない。
筆者が知る限り、このATX12VOに対応しているのはASRockのZ490 Phantom Gaming 4SRのみである。ちなみにこの製品、ASRockの日本向けページには出てこないあたり、お察しである。このZ490 Phantom Gaming 4SR、下の画像のとおり24pinのコネクターが姿を消しているのがわかる。
これに対応する電源だが、台湾High PowerのHP1-J650GD-F12Sが一応ATX12VO対応「ということになっている」。なぜ注釈が付くかというと、この製品カタログには通常のATX12V電源(なので24pinのコネクター実装)として掲載されているからだ。
ただこの製品はOEM/ODM向けという扱いで、それもあってオンラインでは未掲載ながら、ATX12VO対応の派生型が用意されているようで、実際Guru 3Dが昨年10月に試用レポートを掲載している。
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