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まつもとあつしの「メディア維新を行く」 第70回

アニメの門DUO「グラフィニカ平澤直社長インタビュー」

コロナ禍でアニメの現場はどうなった? 制作スタジオ社長に聞いてみた

2021年05月22日 18時00分更新

文● まつもとあつし 編集●ASCII

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現在の最前線はYouTubeのアニメMV

まつもと 次に取り上げたいのは、ソーシャルメディアとしてのYouTubeです。まず、平澤さんには特徴的な作品をいくつか挙げていただきました。

ずっと真夜中でいいのに。『勘冴えて悔しいわ』MV (ZUTOMAYO - Kansaete Kuyashiiwa)

 

乃木坂46 『僕は僕を好きになる』アニメver.

 

『ホロライブ・オルタナティブ』ティザーPV

 

平澤 乃木坂46さんのアニメMVは、『映像研には手を出すな!』の作家さん(大童澄瞳)による個人制作ですよ! ビックリです。

 そしてホロライブ・オルタナティブは、映像のクオリティーがとんでもないですね。これはA-1 Picturesさん、CloverWorksさんをはじめ各所で活躍されているアニメーター/演出家の榎戸駿さん、そしてここ最近のFate関係の映像に参画されているクリエイターさんが数多く参画されたお仕事に見えています。

まつもと つまり、深夜の30分アニメではないところから、明らかにムーブメントが起こっている。平澤さんが創業した企画会社のARCHでも、こういったネットを中心に話題を広げていく作品を結構手掛けていらっしゃいます。こうしたメディア露出の変化と、コロナ禍がどう関係するのか。やっぱりこの潮流は加速していくのでしょうか?

平澤 はい、仰る通りです。スマートフォンを介した映像視聴の傾向が強くなっていくだろうなと思っています。なぜなら、今はスマホの画面が、あらゆるモニターを見ている時間のなかで一番長いから。

 そこにアニメが入っていくとき、果たして――まさに『モンスト』のときも思いましたけど――“週にいっぺん30分”って今でも最適なのか? 異なるフォーマットを望んでいるユーザーさんもいらっしゃるのでは?」と。

 一方で、先ほど挙げたような「メッセージ性の高いボーカル曲とそれを演出するMVのセット」は、お客さんへ感動を提供するのに適した媒体になってきているのかもしれません。電車の移動中でも見られるし、繰り返し見てもそのたびに気持ちが昂ぶるわけですから。

 30分アニメと比べて、より限られた時間のなかで感動を何回も、効率的に味わえるという側面があるかもしれず。……で、そのムーブメントを先導しているのが「夜系」と呼ばれるアーティストたちと、楽曲に動画を提供している、結構な数の個人アニメーションの制作者さんたちですね。これはすごく新しいムーブメントだと思っています。

オタク文化がヤンキーに広まるまで
多くの年月がかかる

まつもと ついでに聞いてしまいたいのですが、ニコニコ動画ではすでに「歌ってみた」「踊ってみた」そして「初音ミク」の組み合わせで、今回挙げていただいたようなMVがすでに出来上がっていました。でもそれは、現在の夜系ほど大きな潮流にはなっていません。それがYouTubeに舞台を移したことで大きなムーブメントとなっているように見えます。

 コロナ禍がそれを加速させているのかもしれませんが、この流れとか違いって平澤さんはどう見ていらっしゃいますか?

平澤 ニコ動の時代に始まったのは、「根は陰キャだけど、不特定多数に歌や踊りを披露する」というムーブメント。それを一定の同年代まで――オタク、あるいはオタクじゃない人にまで――割と波及させたということは、ニコ動の巨大な功績です。たとえば昔のハチさん(米津玄師)やカゲプロさんはまさにニコ動が生んだ素晴らしいコンテンツたちですよね。

 対して現在のYouTubeは、年代の幅が広いんです。

【オリジナル曲PV】マトリョシカ【初音ミク・GUMI】

 

まつもと YouTubeはより一般化した?

平澤 そうだと思います。若い世代であればオタクじゃない人も見ていたのがニコ動だと思うのですが、それがより上下に広がった。実際、民放の情報番組でAdoさんの「うっせえわ」が特集されて、しかもサラリーマンが「共感できる」とコメントしている。これは、YouTubeという媒体がニコ動よりもさらに外に、より多くの人を巻き込んでいるからだと思います。

まつもと もともとニコ動で活躍していた人がYouTubeに舞台を移して、手法は一緒なんだけど、じつは音楽レーベルが支えている……というのがYouTubeで起こってきていて。でも、私みたいに年齢を重ねた者からすると、ちょっと懐かしいというか、「ニコ動で楽しかったアレだ」という感じで受け入れられやすい。つまり、年齢が上がっている……広がっているということなのかな。

平澤 ある文化がオタクからヤンキーに広まるまで、だいたい10年、長いと20年かかると僕は思っています。たとえば『Fate』シリーズも成人向けゲームから始まり、『Fate/Grand Order』である種のテキスト・エンターテインメントとして世界規模の大ヒットを遂げるまでだいたい10年から15年ぐらい。

「Fate/Grand Order」第2部後期オープニングムービー

 

 長い間続けていくとだんだんファン層が広がって馴染んでいくというか、見慣れることで(一般人の)抵抗感が落ちる現象がたぶん発生している。ニコ動よりも少しバラエティーに富んだ人たちの参入があって、そのなかにアニメMVで展開するIPが生まれている。そしてその支持層はアニメのコアファンに留まらない……というところまで含めて面白い現象だなと思います。

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