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約1100台のサーバーを1年間利用できるのと同じ規模が一般課題で利用できる

類を見ない計算資源を持つ「富岳」、産業用途での活用が加速

2021年03月16日 12時00分更新

文● 大河原克行 編集●大谷イビサ

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定期募集と随時募集の2つを用意

 RISTでは、こうした資源を活用するための制度として、定期募集と随時募集の2つの方法を用意している。

 定期募集は、富岳では年2回行われており、その他のHPCIでは、年1回の募集となっている。定期募集の特徴は比較的多くの計算資源を利用できるのが特徴で、ピアレビュー方式によりプロジェクトを選定しているという。

 富岳の定期募集では、「一般課題」、「産業課題」、「若手課題」が用意され、1課題あたりの最大利用可能資源量は、一般課題が1時間1000万ノード、産業課題が800万ノード、若手課題が500万ノードとなっている。なお、富岳以外にHPCI共用ストレージの利用も可能となっている。

「一般課題では、国が重点的に推進すべき課題を優先的に採択する制度がある。2021年度は、感染症対策に資する研究開発と、次世代コンピューティングに資する基盤研究開発がそれに該当し、A期では9件が選定されている。一般課題で利用できる1時間あたり1000万ノードの規模は、約1100台のサーバーを1年間利用できるのと同じ規模になる」(奥田氏)。

 随時募集は、少量の計算資源を利用可能で、比較的短期間の審査で利用が可能になるという。機動的課題、試行課題、有償課題を募集しており、応募はいつでも行えるのが特徴だ。

富岳の募集制度

 一般課題、産業課題、若手課題のすべてを対象にした機動的課題は四半期ごとに選定を行い、1時間あたり100万ノードの利用が可能となっている。試行課題は、一般課題および産業課題の利用を対象にしており、応募ごとに短期間で資格審査を行い、1時間あたり10万ノードの利用が可能だ。付加価値サービスなども提供する有償課題も、応募ごとに短期間の審査を実施。利用可能な資源量は現在検討中だという。有償課題においては、優先実行や定額制、占有利用、成果公開免除などのメニューも用意するという。

「富岳では、タイムリーに利用できる資源量を増やすことにしており、京の2.5倍にあたる、全資源量の5%を割り当てている。試行課題の1時間あたり10万ノードの資源量は、約140台のサーバーを1カ月間利用するのに匹敵する」(奥田氏)。

京では見られなかった新しい分野や利用が広がる

 奥田副センター長は、富岳のおけるA期の応募状況についても説明した。

 RISTでは、2020年10月から、富岳上で、ソフトウェアの動作確認や移植、性能確認などを行う目的で「利用準備課題」を募集していた。2021年2月末の募集終了までに、100件近い応募があり、91件を採択したという。

「当初は50件程度の応募を予想していたが、それを大幅に上回る応募数であり、京の利用がない人やリーダー(代表)としての経験がない人の応募が中心となっている点も特徴だった」(奥田氏)。

 利用準備課題に採択された課題の49.5%が新規の応募であり、代表実績なしは27.5%を占めた。また、海外からの利用が19%を占め、シンガポールや米国での利用が目立った。「海外からも富岳が注目されていることがわかる」とした。また、産業利用は25%を占めたという。

 一方で、A期の募集では、富岳の利用について74件の採択が行われたが、その内訳をみると、代表者のHPCI利用実績は77.0%に達しており、新規の利用者は4分の1に留まったという。また、海外利用は1%に留まっている。74件のうち、AIおよびデータサイエンスに関する課題については、全体の20%を占めているほか、半分程度が、AIやデータサイエンスになにかしら関係しているという。

「利用準備課題においても、14%をAIおよびデータサイエンスに関する課題が占めており、富岳からロボットを制御したり、工作機械のデジタルツイン、エージェントベースの経済モデルの構築、マクロ経済モデルのパラメータ推定など、これまでの京ではほとんど見られなかった新たな利用に挑戦する課題も出ていた。Society5.0に関する課題も増えている」(奥田氏)。

AIとデータサイエンスに関する課題とテーマ

 74件をテーマ別にみると、数理科学が1件、物理・素粒子・宇宙が11件、物質・材料・化学が17件、工学・ものづくりが19件、バイオ・ライフが12件、環境・防災・減災が8件、情報・計算機科学が4件、エネルギーが2件となっている。

 現在、富岳を活用して行っている防災に関する課題は、A期の採択課題と、成果創出プログラムをあわせて7件となっている。

 HPCIコンソーシアムの朴泰祐理事長は、「分野の広がりや利用者の広がりがみられている。富岳の使いやすさやarmプロセッサであるということが影響している」とした。

 なお、富岳を除くHPCIの利用に関する募集については、年1回の定期募集が行われており、ここでは、一般課題、産業課題、一般若手課題を対象に実施している。また、随時募集は産業利用だけとしており、産業試行課題、産業有償課題、臨時募集課題を用意。応募ごとに短期間の審査を行う。臨時募集課題については、社会的に重要かつ緊急に推進すべき課題を公募。2021年度は、新型コロナウイルスを含む感染症対策に対応する課題募集を予定しているという。

 利用できる資源量は、各システムによって異なるため、詳細は、HPCIポータルサイト(https://www.hpci-office.jp/)を参照してほしいとしている。

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