■36Vを普及させる難しさ
マキタとそんな風に差がついたのは、まだ工作機械やAC電源の工具が主流だった時代に、充電式工具の将来性を見誤ったことだと言われている。文字通りバッテリーシステムの「マウント」を取られてしまったのだ。
そして現在主流のバッテリーは両社ともリチウムイオンの18V。それを36Vに引き上げようというのがここ数年の業界トレンドだったが、代替は進んでいない。なぜなら大抵のものは18Vで足りてしまうから。36Vを必要としているのは高負荷作業に耐えるプロ用に限られ、そのメリットは一般には分かりにくい。
しかし海外に大きな市場を持つメーカーとしては、脱炭素化の流れからエンジン工具の電動化も課題。プロ向けにはもっとパワーも必要だ。でも唐突にやっても成功はしない。実際、旧・日立工機時代に現在とは違う仕様の36Vバッテリーを発売したが、現在は廃盤だ。
■「マルチボルト」のメリット
それを踏まえて登場したのが2017年、日立工機最後の年に登場した現在のマルチボルトバッテリー。18V、36V、どちらの工具にも使える互換仕様で、充電器も18V用が使える。バッテリーのサイズも18Vとほとんど変わらない。
その仕組みは意外と単純だ。バッテリーパックに18Vのセルブロックを2組入れ、接続する相手によって18Vなら並列、36Vなら直列に接続するだけ。これを思いついた人は偉い。
ハイコーキユーザーがバッテリーを買い足すならマルチボルトにすればいい。一部対応しない工具もあるので要確認だが、18Vの工具や充電器もムダにならないし、使いたい36Vの工具が出たらそのまま工具箱に追加できる。
これからハイコーキを買おうというフレッシュな人には、幅広い選択肢がメリットになる。手軽に使える安価な18Vモデルからプロ仕様の36Vモデルまで、選べるアイテムは2020年10月時点で119モデル。数ではマキタに及ばないが、インパクトドライバーや丸ノコなど、実用工具のバリエーションに不足はない。
この連載の記事
-
第9回
自動車
日本製のトルクレンチはいいぞ -
第8回
自動車
ガレージがないならヘッドホンを買えばいいじゃない クルマいじりにGRADO「GW100」 -
第7回
ホビー
弦を巻け!電ドラボール!ギター用工具最強説 -
第6回
自動車
戦え!電ドラボール! タイヤ交換最速伝説 -
第5回
自動車
電動vs.人力 タイヤ交換の戦い -
第4回
自動車
タイヤ交換はクールでセクシーに -
第3回
家電ASCII
マキタ最強18Vインパクトをビビりながら使っています -
第2回
家電ASCII
マキタvs.ハイコーキ バッテリーで選ぶならどっちだ マキタ編 - この連載の一覧へ