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嵐や『愛の不時着』だけじゃない!ネットフリックスが日本を席捲する必然

2021年02月17日 06時00分更新

文● ダイヤモンド編集部,宝金奏恵(ダイヤモンド・オンライン

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Netflixオリジナルシリーズ「今際の国のアリス」全世界独占配信中 画像提供:Netflix

コロナ禍の影響で先行きの見えない経営が続いている企業が多い中、逆にユーザー数を伸ばし好調な企業の筆頭ともいえるのが、米動画配信サービスのNetflix(ネットフリックス)だ。日本でも韓流ドラマ『愛の不時着』の大ヒットや、ジャニーズグループ「嵐」のドキュメンタリーなどで話題を集めた。また、Netflixオリジナル作品の勢いが増すことによって、日本のエンタメ業界も少しずつ変化が起きている。(ダイヤモンド編集部 宝金奏恵)

全世界の有料メンバー数は2億人超え

 2020年は、コロナ禍で、多くの人がステイホームをせざるを得ない状況に陥った。退屈な「おうち時間」を救ってくれたのが、Netflixなどの動画配信サービスのコンテンツだったという人も多いだろう。

 現に、20年にNetflixの全世界の有料メンバー数は2億人を突破。通期の売上高は250億ドル(前年比24%増)を達成し、営業利益は76%増の46億ドルを記録するなど、勢いがある。日本でのサービス展開も5年が経過し、有料メンバー数は500万人を超えた(2020年9月時点)。

 また、2020年第4四半期の決算発表によると、アジア太平洋地域(中国と北朝鮮を除く)のメンバー数は930万人増加(前年比65%増)していて、サービス拡大に大きく貢献した地域だったという。

 ただ、コロナ禍という状況でNetflixに追い風が吹いていたとはいえ、他の動画配信サービスも数多くある。Amazonプライム・ビデオやHulu(フールー)、そして昨年から米ウォルト・ディズニーがディズニープラスを開始して参入するなど、サブスクリプション(定期購入)型の動画配信サービスは戦国時代。さらに、日本ではテレビ番組配信サービス・Paravi(パラビ)やABEMA(アベマ)なども選択肢としてあり、ユーザーはどれに課金すべきか悩ましい。

 そんなし烈な競争の中、20年になぜNetflixが認知度とユーザー数を一気に伸ばすことができたのか。Netflix広報の東菜緒さんに話を聞いた。

『愛の不時着』、嵐のドキュメンタリーでユーザー層に厚み

 Netflixといえば、日本では昨年、韓国ドラマ『愛の不時着』が話題を集めた。

 このドラマは、パラグライダー中に思わぬ事故に巻き込まれ、北朝鮮に不時着してしまった韓国の財閥令嬢と北朝鮮の堅物の将校のラブストーリーを主軸とした、サスペンスやコメディー要素のある物語。口コミやSNSで評判となり、テレビ番組やファッション誌などでも扱われるほど注目された。

 東さんは「ここまで社会現象になるっていうのはどのジャンルでもなかなか予想できないですし、弊社としてもすごく驚く結果でした」と語る。

 ちなみに、このドラマは日本では「Netflix オリジナル作品」とされているが、元々は韓国のヒットメーカーであるドラマ制作会社「スタジオドラゴン」が制作し、韓国のテレビ局で19年12月から放送された番組である。「Netflixオリジナル」という定義は、Netflixが独占配信している作品という意味で、既にテレビ等で放送された作品もあるし、Netflixのクリエイティブチームが企画・製作しているものもある。

 また、20年はジャニーズグループの嵐のドキュメンタリー『ARASHI's Diary -Voyage-』も配信した。19年末に大々的にプロモーションをしていて、嵐ファンが多くサービス加入したとみられる。東さんは「威力があった」と振り返る。

「既存の嵐ファンの層が厚いというのを、配信開始直後から感じました。さらにSNSで、Netflixの加入方法を解説してくれる主婦の方なども出てきて、ありがたいなと思っています。これまでデジタルネイティブな若い層がNetflixを楽しんでいた印象でしたが、嵐のドキュメンタリーによって、幅広い年齢層にサービスを知ってもらうことができました」

「若い層が楽しんでいた印象」という、曖昧な答え方には理由がある。Netflixは基本的にはメールアドレスと決済情報のみで利用登録ができるため、年齢などの個人情報は基本的に取得しておらず、どんな人が何を見ているのか分からないのだ。てっきり年齢や職業などの個人情報が、おすすめされるコンテンツに影響があるのだと思っていたが、そうではない。

 各ユーザーが見たコンテンツのデータと視聴傾向が分析されておすすめに反映されており、もはや「個人情報の取得はあまり効率的ではない」(東さん)という。ユーザーの固定観念やイメージにとらわれず、生のデータを利用するからこそNetflix内の多様性が広がるのかもしれない。

 このようにコンテンツの話題性もあり、Netflixは会員数を着実に積み上げたわけだが、今、一層注目されているのがアニメだ。

全世界1億世帯以上がアニメを見る!日本拠点にアニメ拡充

 Netflixでのアニメ人気は加速していて、この1年間に全世界でユーザーの半数を占める1億世帯以上がNetflixでアニメを視聴するなど、アニメ視聴世帯は19年に比べて50%も伸びたという。また、世界100カ国以上の国と地域で、人気作品トップ10にアニメ作品がランクイン。日本でも会員のおよそ半数が、1カ月でアニメを約5時間視聴しているという。Netflixで配信されているアニメは、既にテレビなどで放映されたものも多いが、オリジナル作品にも力を入れている。

 そのNetflixオリジナルのアニメを制作するクリエイティブチームの拠点は日本にある。世界各国に拠点がある中で、アニメの存在が日本オフィスのユニークさを際立たせている。日本の制作会社であるProduction I.Gなどと包括的業務提携を結んでいて(現在は全9社と契約中)、日本語で作業を進めていくことができるのが大きなメリットだという。

 20年10月には新作5作品を含む全16作品の配信を発表。21年2月は『岸辺露伴は動かない』『天空侵犯』が全世界に向けて独占配信される予定で、期待値はますます高まっている。

 どうしても日本発のコンテンツといえば、アニメが目立つが、これからは実写作品が世界でどう評価されるかが、試されている。

 2020年12月から配信スタートした、Netflixオリジナルシリーズ『今際の国のアリス』(山崎賢人・土屋太鳳のダブル主演/佐藤信介監督)は配信から28日間で世界1800万世帯超が視聴。日本だけでなく、マレーシアや香港、ドイツ、フランスなど40近い国と地域でトップ10入りしていて、シーズン2の製作も決まるなど好調だ。

 また、22年には満島ひかりと佐藤健のダブル主演ドラマ『First Love 初恋』の配信も決まるなど、これまでテレビドラマや映画を活動の主軸にしていた人気俳優たちが、こぞってNetflixオリジナルシリーズに出演する状況が続いている。世界に一気に知名度を広げることができるという意味でも、俳優たちにとってNetflixオリジナルシリーズに出演することは大きなメリットだ。ただ、Netflixにとっては、実写作品の最重要ターゲットは日本のユーザーであり、バラエティー豊かな作品を調達することが当面の目標だという。

日本のユーザーは、サービス加入の審議が厳しい

 エンターテインメント業界に向けたマーケティングデータ分析などを行うGEM Partnersによると、日本のNetflixユーザーの83%が加入を「継続する」と答えている。(新型コロナウイルス流行下でのエンタテイメント消費行動に関する調査、20年6月13~15日、回答者数3872人)。その理由として「オリジナル作品が好き」という声が目立ったようだ。

 この調査によると、継続意向が最も高いのはAmazon プライム・ビデオだが、これはショッピングや音楽の定額課金サービスなども含めた評価なので、同列の意味合いで評価することが難しい。

 また、日本のユーザーの獲得に向けてNetflixが独自に調査したところ、日本は他国に比べて離脱率が低い一方で、加入の際には内容を厳しく精査するという特徴が分かったという。そこで、Netflixは未加入者への案内ページを1年ほど前にリニューアルした。

「リニューアル前は1カ月無料などと書いてあるだけで、特に詳細の情報がなかったんです。ただ、日本の消費者は『1カ月間無料』とは月末まで無料なのか、それともスタートから1カ月間無料なのか、検討の時点で分からなければ加入したくないというお客さんが多いことが分かりました。

 そこで、リニューアル後は、『今日加入したら最初のお支払日はこの日です』というように表示するようにしました。厳しい目で審議する日本のユーザーの標準に合わせれば、世界のお客さんにも納得していただけると思います」(東さん)

 今Netflixは、日本と韓国、インドにおけるユーザー数の拡大を重要視している。日本のコンテンツを充実させることによって、日本のユーザー数を増やしていきたいというもくろみはもちろんある。しかしそれだけでなく、漫画・小説・アニメなどの原作が多い“作品の源泉”として、日本は世界規模の発展のために押さえておきたいエリアなのだという。

 今年からは、コンテンツの製作と調達をより一層ローカル化させていきながら、クリエイターの育成にも注力していくという。Netflixの市場規模拡大によって、日本のエンタメ業界も少しずつ意識が変わっていきそうだ。

※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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