このページの本文へ

奥歯喪失で認知症に?予防には音波式電動歯ブラシが効果的

2021年01月20日 06時00分更新

文● 山本龍生(ダイヤモンド・オンライン

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷
奥歯を失うとなぜ認知症になりやすいのか(写真はイメージです) Photo:PIXTA

人生100年時代といわれる現代では、65歳以上の「5人に1人」が認知症になる時代ともいわれています。いまだに特効薬が開発されていない認知症ですが、リスクを下げる方法はあります。それは「奥歯」を抜かないこと。実は、「奥歯を守ること」は、認知症予防に大きく貢献するのです。そこで今回は、神奈川歯科大学大学院歯学研究科教授の山本龍生さんの著書『ボケたくなければ「奥歯」は抜くな』(青春出版社)から、奥歯と認知症の意外な関係を解説します。

奥歯を失うとなぜ認知症になりやすいのか

 そもそも、なぜ奥歯を失うと認知症になりやすいのでしょうか。その主な理由は次の3つです。

(1)奥歯で噛まないと脳への刺激が減る

 奥歯を使ってよく噛んで食べると、歯根のまわりや頬の筋肉が刺激されます。それらの刺激は神経を通じて脳に伝わります。それによって脳の血流も良くなり、脳細胞が活性化するのです。

 逆に、奥歯を失い、奥歯を使って噛まなくなると、脳の細胞が刺激されず、脳が老化して、認知症になりやすくなるわけです。

(2)奥歯が無いと摂取できる食べ物が限られ、脳の健康に必要な栄養素が不足する

 奥歯が無くなると、堅いものが噛めなくなるために食べられないものが増え、そのために食事のバランスが悪くなります。その結果、認知症を防ぐ栄養素であるビタミンなどが不足してしまうのです。

(3)奥歯を失うおもな原因となる歯周病が、脳に悪影響を与える

 歯を失う原因で最も多いのが歯周病です。とくに奥歯は歯周病になりやすく、歯周病になると歯ぐきが慢性的な炎症状態になります。慢性的な炎症によって生み出される物質(炎症性サイトカイン)や、歯周病の原因菌(以下、歯周病菌)が出す毒素、歯周病菌を退治するために出される活性酸素などが、血管に入って脳に運ばれ、さまざまな悪影響を及ぼすことが指摘されています。

 それだけでなく、近年、アルツハイマー型認知症の患者の脳から歯周病菌が見つかっており、歯周病菌自体が認知症を引き起こす原因になっていると考えられています。

 このように、「奥歯を失うことが認知症のリスクを高める」ことがご理解いただけたと思います。

奥歯を失う原因の第1位は「歯周病」

 70歳以上の高齢者の5割は「奥歯が1本以上無い」というデータがあります。そして、奥歯を失う最大の原因は「歯周病」です。

 歯周病の直接の原因は、歯垢(プラーク)。歯垢とは、歯の表面に付着している細菌のかたまりのことです。口の中にいるむし歯菌などの細菌は、砂糖などの糖分を栄養にして増殖する際に、ネバネバした多糖体を放出します。それによってしっかり歯に貼り付いているため、うがいをしたくらいでは除去できません。

 その歯垢の内部でむし歯菌が酸を作り出すことで、歯のエナメル質を溶かしてむし歯を作ります。歯垢にはまた、歯周病を引き起こす歯周病菌も棲みつきます。歯周病菌はむし歯菌と違って空気を嫌う性質があるので、歯と歯ぐきのすき間(歯肉溝)や歯と歯の間(歯間)など、空気が入りにくい場所に歯垢ができることで増えます。

 歯周病菌が増えると、死んでいく菌も増えて、壊れた菌の一部(毒素)が歯ぐきに炎症をもたらし、歯を支えている歯槽骨を溶かします。歯を支える骨が溶け始めてしまうと、ブラッシングをしても元の健康な状態の歯ぐきに戻すのは困難になります。

 これが、奥歯を失わせる歯周病菌の怖さです。歯周病の直接の原因は歯垢(プラーク)ですが、間接的にはさまざまな要因があります。

 たとえば喫煙者は、非喫煙者の2~8倍も歯周病になりやすい、というデータがあります。たばこの煙には3000種類もの化学物質が含まれ、有害物質は200~300種類にのぼります。これらの物質が歯ぐきの血流を妨げ、防御機能を弱め、細菌の増殖をうながします。

 また、精神的なストレスなどが要因で起こる歯ぎしりや、歯並びの乱れ、噛み合わせの不良も、歯周病のリスクを高め、進行を加速させます。

 さらに、歯周病の直接の原因ではありませんが、歯石も歯周病になりやすくなるので、つかないに越したことはありません。歯石とは、取り残した歯垢に、唾液の中に含まれるカルシウムやリンが沈着して、石のように硬くなったものです。

 そんな歯石除去におすすめなのが「音波振動」の電動歯ブラシです。特に、できはじめの歯石をある程度取り除くことができます。

歯周病予防に効果的な電動歯ブラシの選び方

 その電動歯ブラシですが、適切な製品を使えば、歯周病の予防効果が期待できます。電動歯ブラシは3つの種類に分かれます。

 ヘッドが機械的に往復運動したり回転したりする「高速運動歯ブラシ」、音波振動をする「音波歯ブラシ」、そして超音波を生じる「超音波歯ブラシ」です。3つの違いは周波数の違い、つまり毛先が振動する速度の違いです。

 私がおすすめする電動式歯ブラシは、「音波歯ブラシ」です。音波歯ブラシは手で磨くときのように、歯ブラシを大きく動かす必要がなく、歯ブラシを止めて、またはゆっくりと動かすだけで、歯をきれいに磨くことができます。

 私たちが調べた結果、手で20秒間ブラッシングした場合と同程度の効果が、音波歯ブラシでは5秒間のブラッシングで得られました。ブラッシングの時間短縮が可能で、手で磨くよりも効率的です。さらに、音波歯ブラシなら、歯垢だけでなく、できはじめの歯石も取り除くことができます。

 音波歯ブラシがいいなら、「超」音波歯ブラシはもっといいのではないか、と思う人もいるかもしれませんが、必ずしもそうとはいえません。というのも、超音波歯ブラシは、整形外科の治療で使われるような大きな装置(超音波治療器)だと骨の細胞を活性化するような効果を得られますが、歯ブラシのような小さな器具だと超音波を発信する装置が小さくならざるをえず、出力が低く、歯ぐきへの刺激効果があまり期待できないからです。

 そのため、電動歯ブラシを使うなら、私は音波式をおすすめします。ちなみに、音波歯ブラシを使う場合、研磨剤の入った歯磨き剤は使用しないでください。電動歯ブラシだと、手で磨くときよりも歯が削れやすくなります。

 歯は表面にあるエナメル質に守られているうちは痛みを感じることはありませんが、エナメル質が削られたり、エナメル質のない歯根が見えてきたりして、象牙質が露出すると、熱いものや冷たいものなどの刺激が歯の内部の神経に伝達されて痛みを感じます。それが象牙質知覚過敏症です。

 また、どんなに高機能の電動歯ブラシを使っても、別途「歯間の清掃」は必要です。歯間の歯垢は電動歯ブラシでは除去しきれないからです。必ず「歯間に入る歯ブラシ」や歯間ブラシを使って、歯間のケアを忘れないようにしましょう。

(監修/神奈川歯科大学大学院歯学研究科教授 山本龍生)

◎山本龍生(やまもと・たつお)
神奈川歯科大学大学院歯学研究科教授・歯学博士。1964年岡山県生まれ。岡山大学歯学部卒業後、同大学歯学部予防歯科学講座助手、米国テキサス大学客員研究員、世界保健機関(WHO)インターン、神奈川歯科大学大学院歯学研究科准教授等を経て、現職。歯・口の健康と認知症やうつなどの全身の健康との関連を研究調査するなど、予防歯科学、口腔衛生学、社会歯科学の第一人者。

※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

カテゴリートップへ

最新記事
最新記事

アスキー・ビジネスセレクション

ASCII.jp ビジネスヘッドライン

ピックアップ