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高齢者にとってはLINEよりZoomのほうが簡単!?

スマートシティ化に不可欠な「住民の合意形成」を実現するには?

文●石井英男 編集●ASCII

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高齢者にとってはLINEよりZoomのほうが簡単!?

野崎 そのほか課題として、少子高齢化の日本においては(オンラインでの)高齢者のコミュニティ参加率が低くなる可能性があること、そして20代~30代も政治離れの深刻化による参加率の低迷が挙げられます。改善のきっかけになるようなお考えがあればお聞かせください。

株式会社 電通国際情報サービス(ISID) オープンイノベーションラボ シニアプロデューサー 野崎和久氏

小泉 デジタルデバイドについてですね。

 横浜や埼玉の郊外住宅地に暮らしている高齢者の場合、ある程度のITリテラシーを持っています。なぜかと言えば、まだ社会人だった40代~50代にインターネットが世の中に普及し始めた世代なので、パソコンでどこかにアクセスして書き込むくらいのことはできるのです。実際、大都市の高齢者はかなりの確率で自宅にパソコンとインターネット環境がある印象です。

 たとえばコロナ禍によって、郊外住宅地における様々な会合もZoomに移行しているのです。地域の方々がお互いに教えあうことで、Zoomは案外使えています。むしろLINEを使えるようにするほうが難しいのかもしれない。なぜかというと、大都市の郊外住宅地ではパソコンはほとんどの方が扱えますが、スマホはそもそも持っていない方がいるからです。

 また、中山間地域の再生などを行う場合では、参加してくださる方は75歳以上が当たり前ですから、やはりITリテラシーが問題になることもあるでしょう。しかし、これも地域での相互扶助を手掛かりに、デジタルデバイドの問題を克服できるかもしれません。

 ガラケーではLINEを使えませんし、スマホを使っていてもLINEアプリを入れてイチから覚えてもらうのは意外とハードルが高いです。「URLを送るからアクセスしてみてね」という感じで始められるZoomのほうが高齢者には簡単なのかもしれません。

―― ということは、Web上で動くDecidimは高齢者にとっても扱いやすいプラットフォームなのかもしれませんね。

小泉 元々、社会問題に関心が高い方は高齢層に多いですし。一般には、若い世代を参加させるほうが難しいです。30代に入って家庭をお持ちになったりすると、地域の環境に関心を持ち始めますから、参加してくださる方が増えてくるとは思います。こうした若い、そして多忙である世代にもリモートで参加できるDecidimは有効かもしれません。

野崎 Decidimという聞き慣れないWebツールよりは、LINEで議論するほうが若者も高齢者も入りやすいかなと思っていたのですが、確かにスマートフォンの普及を考えると、高齢者にはまだまだハードルがあるということなのですね。

小泉 はい。スマホの所持率は70歳以上になるとガクンと下がってしまいます。一方、たまプラーザ地区でのまちづくりプロジェクトにおいてLINEを通じたコミュニケーションを進めているのですが、こちらは開始数ヵ月で1000人を超えるユーザーが参加する大きなコミュニティができました。理由の1つは人口構成にあるかもしれません。若い世代の方が相対的に多い地区なのです。

総務省「令和元年通信利用動向調査」より。70歳~79歳のスマホ利用率は27.2%、80歳以上は7.8%にまで下がる

森田 まちづくりの観点では、若い人たちが参画しないことで子育て世代の声が反映されず、シニアの方々――いわゆる、逃げ切り世代――の意見ばかり強くなってしまうことが課題です。確かに高齢者がLINEを使えないなどの問題はあるものの、デジタルを使って若者をまちづくりに呼び込む仕組みは大切ですね。

小泉 仰る通りだと思います。三鷹市の場合でも、オンサイトでは60代以上で地域活動の実績がある方が多くおられましたが、前述したKakiko Mapや討議システムを使うオンラインの場には30代~40代がかなり多く参加されました。

 デジタルを併用することで、「時間がなくてオンサイトの場には行けないけれど、意見自体は持っている」という方々の意見を拾うことができました。たとえばLINEを通じて、Decidimみたいな議論ができる仕組みがもしできれば……地域に長く暮らす意向がある30代~40代の方からも意見をいただける可能性が広がると思います。

まずは意見収集フェーズでの利用から

小泉 「住民の議論と合意形成の場」としてのDecidimのようなプラットフォームを「どこで使うか?」という課題もありますよね。予算化や政策化、そして決定の段階に入ると、各所管課が抱えている既存の事業との調整が入ってきますし、議員さんたちも意思決定権限を持っています。そこに住民の意見をどうやって組み入れるのかについては、議会側にも意義を理解してもらわないと、議員さんがイエスと言わない可能性があります。

 十数年前に三鷹市で上手くいった理由は、市長・副市長はじめ議員さんたちも参加型の政策形成を経験してきた人たちだったので、政策へ直接反映することに関しても敷居が低かったからです。しかし普通の自治体では高い壁になる可能性もあります。まずは自由に意見交換できるフォーラムとして、議論の成果が見えてきたところで意思決定(アリーナ)にも使ったらどうかと促す、というように二段階で進めたほうがよい気がしています。

森田 確かに、最初に住民の意見を収集するフェーズと、最終的に政策に落とし込むフェーズでは進め方がまったく違うはずなので、まずは収集が使いやすいところなのかなと。

野崎 優先度を測ったり、提案に対して住民がどれだけポジティブに見ているかを測る指標にしたりというレベルでの使用がまずは適度ではないかと考えておりましたので、非常に参考になりました。ありがとうございます。

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