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冬の高血圧・脂質異常にどう対応すべきか、専門医に聞く「トリプルリスク対策」 高血圧、高糖質、脂質異常症の「トリプルリスク」対策を専門医に聞く(1)

2021年01月08日 06時00分更新

文● 高橋 誠(ダイヤモンド・オンライン

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効果的なトリプルリスク対策とは?(写真はイメージです) Photo:PIXTA

2021年という新しい年を迎えた。新型コロナウイルスの流行はとどまらず、政府は2度目の緊急事態宣言を発出した。コロナ長期化で運動不足や巣ごもり飲食過多も見られる。高血圧、高糖質、脂質異常症が重なる、いわゆる「トリプルリスク」が高まる。ただでさえ血圧・血糖・血中脂質の数値は悪化しやすい冬。高血圧、高糖質、脂質異常症などの基礎疾患は、コロナに感染した際も重症化が加速するリスクが高い。命に関わる深刻なトリプリリスク回避のための対策を4回のシリーズで、国際医療福祉大学医学部の坂本昌也教授に聞く。(医療・健康コミュニケーター 高橋 誠)

高血圧、高血糖、脂質異常症の相乗リスク
3つともケアしている人は1割

「トリプルリスクを考える会」が2018年に行った調査(回答者1200人)によれば、「血圧・血糖・血中脂質の3つともケアしている人」は1割。「一度の食事で同時に塩分・糖分・脂肪分の取り過ぎをすべてケアできる人」も1割未満。国民の健康意識が向上している中、意外なデータである。国際医療福祉大学医学部 坂本昌也教授(同大大学三田病院内科部長、糖尿病・代謝・内分泌内科学教授)は、この事態に警鐘を鳴らす。

「2020年は血圧・血糖・血中脂質の数値が悪化した患者さんが増えた。高血圧、糖尿病、脂質異常症(高脂血症)はいずれも『動脈硬化』と関係する。適切な治療を受けずにいると、心筋への血液の供給が減少する。血流が途絶え、心臓を取り巻く冠動脈に狭窄や閉塞を生じる。いわゆる狭心症や急性心筋梗塞を引き起こす。高血圧、糖尿病、脂質異常症の3つの病気のうち、どれか1つを発症していると、残り2つも発症しているか予備群であるリスクが相乗的に高まる。血管へのダメージのため、脳梗塞のリスクも同時に高まる」

 坂本医師は、近著『最強の医師団が教える長生きできる方法』(アスコム)で「血糖値ばかりに目を向けるのではなく、血圧や脂質にも同じくらい、いや、血糖値以上に関心を持ってほしい」と促している。

少しだけ数値の悪い「予備軍」は特に注意
ある日突然倒れないために、早めの検査を

 血圧・血糖・血中脂質は相互に密接に関連する。インスリンの働きが悪くなって血糖値が高くなると、「膵臓からインスリンがたくさん分泌」→「塩分排出にかかわる腎臓の機能が低下=血圧上昇」→「肝臓で中性脂肪が盛んに合成、血中脂質増加」、という『負のスパイラル』が働いてしまう。

 特に、ちょっとだけ数値が悪い人は生活習慣の改善がおろそかになりがちだ。医師に食事や運動の指導を受けても、忘れてしまっている人も多い。そのまま何も手を打たないで時が流れると、リスクが高くなる冬の時期に、ある日突然、狭心症や急性心筋梗塞を起こして、救急搬送という事態になってしまう。このときに初めて、血圧・血糖・LDLコレステロール・中性脂肪のいずれか、あるいはすべてが高いことを自覚する。

 こうした生活習慣病は、命取りにならないとも限らない。しかも、冠動脈疾患の場合、一度発症してしまうと再発リスクが高まると同時に、将来的に心不全を発症する可能性も高くなる。

トリプルリスク回避のための
高血圧対策

◎無理なく長く続く減塩食を

 高血圧は、初期であれば減塩が効果的な場合もある。坂本医師は、「60代までは食事のカロリーやバランスを心掛ける。60代以降はカロリーではなく塩分量を心掛ける」と指導している。 血圧はズバリ血管に影響を与える。塩分を控えることが一番だが、減塩効果は1食や2食などの短期間では得られない。無理なく続けることが重要。

◎レモンやスパイス、コショウで塩分量を減らす

 60代を越えると塩分の摂取量が過剰にならないように、特に気を配るべき。筋力維持には、食事面ではタンパク質摂取が重要。ところが腎臓が悪いと、タンパク質の摂取には制限がかかる。腎臓は、高血圧が長く続くと機能が落ちやすい。高齢者には腎機能が落ちている人が少なくない。そして、塩分量の過剰摂取は血圧上昇を招きやすくする。長年の習慣で濃い味に慣れ、加齢で味覚が落ち無意識に濃い味付けを好んでしまう。レモンなど柑橘類やスパイス、コショウの利用、調理方法の工夫で、早い段階で塩分量を減らすように心がける。

◎60代はカロリーが高くてもOK

 肥満の方を除き60代以上は、カロリーが多少高くなっても、タンパク質が豊富に取れる食事を。食べられる量が減って痩せていくような方は、豚肉ならしゃぶしゃぶよりもポークソテーやトンカツなど、むしろカロリーが高いものがいい。カロリーを気にせず食べ、筋肉量、特に下肢筋力を落とさないことのほうが大切。筋肉量の維持は、サルコペニア(加齢に伴い起こる骨格筋量と骨格筋力の低下)や低栄養の予防になり、健康寿命を延ばす。筋肉量が落ちると嚥下障害も起こりやすくなる。運動量が減って骨粗しょう症も起こしやすくなる。

◎減塩が難しい場合は、しっかり睡眠

 コンビニ食や外食が多く、コントロールが難しい場合は、しっかり睡眠をとる。血圧の大敵である睡眠不足を解消すれば、おのずと血圧は下がる。寝る前の「スマホ長時間使用」にも注意。

トリプルリスク回避のための
脂質異常症(高脂血症)対策

◎食物繊維が重要、豆腐、ナッツ類、野菜たっぷりの鍋を摂る

 脂質異常症(高脂血症)は、血液中の中性脂肪(トリグリセライド)や、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)が基準より高い、またはHDLコレステロール(善玉コレステロール)が基準より低い状態のこと。コレステロール低下が心筋梗塞の発症リスクを30%減にするという研究結果もある。肥満の人や肥満だった人は多いが、総コレステロールやLDLコレステロール(悪玉コレステロール)が高い脂質異常症の方には痩せている人もいる。まさに生活習慣病たる所以だ。

 インドの研究者が「2型糖尿病患者が食物繊維の摂取量を増やすと、血糖、血圧、脂質を同時に改善できる」と発表した。数値が上がりやすい冬にはより積極的に食物繊維を摂ってほしい。

 食物繊維は、野菜、豆腐、ナッツ類にたくさん含まれている。野菜をたっぷり入れた鍋などは、食物繊維が取れ、カロリーも抑えられるので、今の時期は積極的に選びたいメニュー。ただし、スープの飲み過ぎとシメの雑炊や麺には要注意。糖質の取り過ぎにつながりかねない。また、ナッツ類は脂質も多いので食べ過ぎに気を付けたい。

◎動物性の脂肪に多く含まれる飽和脂肪酸に注意

 体内のLDLコレステロールを増やす作用のあるバターやチーズ、赤身の肉、ベーコン、ハムなど動物性の脂肪に多く含まれるトランス脂肪酸、飽和脂肪酸は、血液をドロドロにし、血管に影響を与える。自宅で食事をするときはあまり取りすぎないようにしたい。LDLコレステロールは、実は体質との関係も大きい。痩せていても、運動していても、食事に気をつけていても、体質でLDLコレステロールが高くなりやすい人がいる。

最強の医師団が教える 長生きできる方法『最強の医師団が教える 長生きできる方法』(アスコム刊)、筆頭著者、国際医療福祉大学坂本昌也教授ほか総勢10人のドクターが、長生きの秘訣を「食事」「運動」「睡眠」「生活習慣」「治療法」に分類し63項目紹介している。216ページ。

「薬は飲まずに生活習慣改善で数値を下げたい」という人がいるが、数値が高すぎる場合、生活習慣改善だけでは難しいかもしれない。薬を取り入れ、もちろん運動や食事療法も加えて、LDLコレステロールをちょうどよい基準に保つ必要がある。

◎卵は1日2〜3個まで

 卵やレバーなどコレステロールの多い食品に関しては、常識の範囲内で摂取を。コレステロールは体内で合成できる脂質で、食事で摂取するコレステロールによる影響は少ないといわれているものの、コレステロールが高い人が1日に卵を4個も5個も取ることはおすすめできない。

◎コレステロールは「下がり過ぎ」の心配無用

 食生活の改善で数値が下がらなければ、薬物治療になる。LDLコレステロールが高い場合、スタチン系製剤が第1選択になる。薬をきちんと服用すると、LDLコレステロールは下がる。血糖値や血圧と比べて、コレステロールは「下がり過ぎ」を心配しなくていい。医師の管理のもとに正しく使えば、副作用も恐れるほどではない。「コレステロールは高いけど、薬は飲みたくない」という人がいるが、メリットがデメリットを大きく上回るのが、スタチン系製剤である。

 高血圧とは異なり、脂質異常症は薬でないと数値を下げられない場合がほとんど。LDLコレステロールは体質との関連が大きく、運動や食生活改善ではなかなか下がらない。数値が高すぎる場合は生活習慣の改善だけでなく、医師の受診による薬物療法も必要だ。

(監修/国際医療福祉大学医学部教授、国際医療福祉大学三田病院内科部長 坂本昌也)

*トリプルリスク対策は4回のシリーズでお届けします。第2回は「高血糖対策」、第3回は「運動法」、第4回は「睡眠法」「認知症対策」の予定です。

◎坂本昌也(さかもと・まさや)
国際医療福祉大学医学部教授。同大三田病院内科部長、連携部長、糖尿病・代謝・内分泌内科学教授。専門は糖尿病治療と心血管内分泌学。1970年、東京都港区生まれ。東京慈恵会医科大学卒。東京大学、千葉大学で心臓の研究を経て、現在では糖尿病患者の予防医学の観点から臨床・基礎研究を続ける。日本糖尿病学会、日本高血圧学会、日本内分泌学会の専門医・指導医・評議員を務める。高血圧、高糖質、脂質異常症のトリプルリスク対策、総合診療能力に長け、高い患者支持率を誇る。2019年2月、米国糖尿病学会機関誌に、「糖尿病は冬に悪化する」という感覚的事実を、世界で初めてエビデンスとして発表した。「高齢者は血管のダメージに注意」「若い人は食事の意識を高めよう」と広く啓蒙している。日刊ゲンダイ人気コラム「進化する糖尿病治療法」を連載中。

※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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