このページの本文へ

日本はなぜ「女の子の学歴」への意識が低すぎるのか

2021年01月02日 06時00分更新

文● ボーク重子(ダイヤモンド・オンライン

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷
Photo:PIXTA

子育て後に女性の人生は2つに分かれてしまう――新刊『子育て後に「何もない私」にならない30のルール』の著者・ボーク重子さんはそう言います。女性が輝く時代と言われながらも、未婚・既婚・専業主婦・ワーキングマザー・パート・フルタイムなど、女性たちはそれぞれの立場で生きづらさを抱えています。全米の女子高校生が知性や才能、リーダーシップを競う大学奨学金コンクール「全米最優秀女子高生」で優勝したスカイ・ボークさんの母であるボークさんはその背景には、そもそも日本が先進国のなかで特に「女の子の学歴」への意識がとても低いことがあると語ります。

>>前回の記事はこちら

日本の女性はなぜ
「逆学歴マウント」をするのか

「夫は医学部出身」「元カレは東大卒」「息子は2人とも慶應」。女性同士の世間話やママ友たちのランチでこんな会話が出ることはありませんか?

 その一方で「私は東大卒です」「私は医学部出身です」と率先して言う女性はほとんどいません。

 付き合っている男性や夫の学歴が高い場合は「学歴マウント」で自慢しがちで、女性である自分の学歴が高いと逆に隠そうとする「逆学歴マウント」状態になるようです。男性の学歴が高いことは良くても、どうして女性は自分の学歴を話すのをはばかるのでしょうか?

 その理由は、子どもの頃から女の子への学歴に対する周囲の意識の低さを経験してきたからではないでしょうか。女の子に学歴なんて必要ない――そんな文化で育ってきた女性が高学歴になれば隠そうとするのも、もっともな話です。人によっては親の期待を裏切るようで悪いことをしているかのように感じる人もいるようです。

日本は先進国のなかで最も
「女の子の学歴」への意識が低い

 日本はさまざまな長所を持っている国ですが、「女の子の学歴」への意識については世界と比べると決して高いとは言えません。

 OECDが15歳を対象に3年に一度加盟国で実施しているPISA(学習到達度調査)では、2015年に「大学・大学院まで進学したい」との問いに日本人男子は64.4%が、女子は52.8%が「したい」と答えた、という記事もあります。

(日経DUAL「女子の高等教育を比較 期待の低さ、理由は親にも?」参照https://dual.nikkei.com/atcl/column/17/1111184/110500014/?P=2

 記事によると女子の高等教育進学志望率が男子より低い国は日本とドイツのみで、その差が10ポイント以上も低いのは日本だけでした。日本は「女の子の学歴」についてはダントツの意識の低さなのです。反対にアメリカでは男子の学歴意識の低さが問題になっていて、2017年は全米の大学の学生数での女子が占める割合は56%でした。

 他にも、日本における女子の学歴への意識の低さを証明するかのような数字が出ています。平成29年度の『男女共同参画白書』によると、大学進学率は男子が55.9%に対し女子が49.1%と、男子より6.8ポイント低いのが現状です。

日本で「女の子の学歴」が
重視されない2つの理由

 女性の学歴への意識が低いのは冒頭にも述べたように「女の子に学歴はいらない」という日本の文化、社会的な通念のせいではないでしょうか。

 1973年から5年毎に行われているNHKの「日本人の意識調査」で2018年に「女の子にも大学まで行かせたい」と言った親は61%でした。1973年に調査が開始された当時の22%からすれば大きな飛躍ですが、男子の場合はこれが72%になります。女子に対する期待は今でも11ポイントも低いのです。

 ベネッセが2015年に行った「幼児の生活アンケート」では男子を大学まで行かせたいと願う親は79.7%、女子は66.9%です。ここでも女子に対する期待は12.8ポイント近く下回っています。

 このような親の考え方が影響すると、女の子は自ら「女の子には学歴がなくていい」と思うようになります。そこに拍車をかけるのが社会で共有された「女の子」のイメージです。女の子は良妻賢母であるべき、あるいは男性より劣るという固定観念、また男性より勝る女性は生意気、勉強ができる女性はモテないなどの社会の風潮です。

 このような考え方のもとで育つと学歴は女性の幸せを邪魔するとしか思えませんし、女性自ら学歴を放棄してしまうのです。

学歴が高いと幸せになれない?

 親がそもそも女の子に学歴を期待していないことに加えて、高い学歴を持つ女性は幸せになりにくいといったイメージも原因だと私は考えています。

 高学歴の女性は生意気で可愛くない、だから結婚できない、女性の幸せは結婚と出産なのだから結婚できない女性は不幸だ――といった風潮を感じることがあります。

 実際、学歴が高い人々の方が幸福度が下がるという日本で行われた研究結果もあります。そこで明らかになったのは、大卒の男子と大卒の女子が結婚する割合は高卒同士が結婚する割合より低いという傾向です。だから女性の高学歴が必ずしも高学歴の夫を射止めることにつながるとは限らないのです。

 女性の場合には高学歴は結婚や就職に不利、ということになれば、女性自ら学歴はいらないと感じるのも無理もない話です。そうしてますます「女の子の学歴」への意識は低くなっていくのです。

それでも女性には学歴が必要だ

 でも私は女性にこそ学歴が必要だと考えています。娘にも高等教育の大切さを小さい頃から話していました。

 それはなぜか。女性には男性にはない「ガラスの天井」があるからです。

 ガラスの天井とは女性の生き方をことごとく制限する、社会における暗黙の了解です。「女性だと出世は難しい」「政治家は男の仕事」などのような、言葉やルールにはならないものの誰もが暗黙のうちに思っている常識です。

 そして「女性はここまで」というガラスの天井を打ち破り、やりたいことをやるために1つの手段となるのが学歴ではないでしょうか。家柄やお金など手段は他にもありますが、それらは出自など自分で選択することは難しい事情に左右されてしまいます。

 奨学金などの制度を活用すれば、学歴は誰にでも可能性のある選択肢と言えます。私の娘は「全米最優秀女子高生コンクール」という大学奨学金を獲得できるコンテストで優勝して学費を確保しました。

 もちろん、学歴そのものが幸せを運んでくるのではありません。ただ学歴によって確実にもたらされる恩恵が1つあります。それは女性が自分らしく人生を生きる可能性が広がる、ということです。

 実際、高等教育はいろんな扉を開けてくれます。

・男性と同じスタート地点に立てる
・合否は別として「大卒以上」という求人に応募することができる
・4年間という時間にやった全てが経験・人脈となる
・大学で学ぶ専門的なことを通じて自分の視野が広がる
・同じ目線で話せる友人を通して自分を高めることができる
・次のステップを可能にしてくれる

 必要なのは扉を開けること。後は自分の精一杯を尽くすだけです。

 確かに、結婚も幸せの形です。でもこれは相手があることで、必ずしも幸せを約束してくれるものではありません。一生続くとも限りません。

 誰かに頼らずとも、誰かの威を借りて自分を評価せずとも、自分らしく生きていく人生があります。そんな人生を女性が歩くために、高い学歴は得をすることはあっても損になることはないのです。

娘を不幸にしないために
家庭でできる2つのこと

(1)「女の子」を押し付けない
家のなかで「女の子」のイメージを押し付けないことが、子どもの可能性を最大に引き出します。「女の子なんだから」と言われた瞬間に、その子は「女の子らしい自分」というイメージを否応なく思い描きます。家庭の外でもメディアなどを通して、子どもには容赦無く「女の子らしく」という圧力がかかってきます。

『子育て後に「何もない私」にならない30のルール 』 著者:ボーク重子 2020年12月11日発売 定価(本体1400 円+税)

 家庭で「女の子なんだからこうしなさい」は禁句にしましょう。そうしないと子どもから高い学歴への興味や意欲も失われてしまいます。それは不幸になるチケットを娘に手渡しているようなものではないでしょうか。

(2)「学歴=安定、職業、収入」と説明するのをやめる
学歴が安定や高い収入を約束するといった考えは、もはや現実的ではありません。学歴が約束するのは機会です。ですからこれからは「学歴=機会」として子どもと話をしてみましょう。「機会」は夢や希望を連想させますし、それを感じるからこそ意欲が出るのです。

「夫は医学部」「彼は東大」と誰かを通して自己実現するのではなく、「私は医学部」「私は東大」という道もあります。これからの「女の子」に待っているのは、人生100年時代とも呼ばれる長い人生です。可能性と選択肢を広げる高等教育に時間とお金を使うからこそ、より有意義で自分らしい人生を生きることができると思うのですが、いかがでしょうか?

 激変の時代を生きる女性だからこそ、開けることのできる扉があればあるほど可能性が広がります。自分らしい人生を構築していくことができます。女性活躍の時代では、学歴はもう女性の味方にはなっても、敵にはなりません。

(ICF会員ライフコーチ ボーク重子)

※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

カテゴリートップへ

最新記事
最新記事

アスキー・ビジネスセレクション

ASCII.jp ビジネスヘッドライン

ピックアップ